- 2019年06月20日 09:15
インスタに"マツコ絶賛"の広告が出るワケ
2/2■「誰がどんな広告を書いているか、追いきれない」
芸能人やテレビ番組の画像を無断で加工・使用し、体験談をでっち上げ、あたかもその商品を紹介・推薦しているかのように見せかける「フェイク広告」。
なぜこのような広告が、私たちに届くのか。
茜さんが購入したサプリを製造・販売する会社は都内にあった。事情を聞こうと取材班が登記上の住所を訪ねると、そこは住宅街にある一軒家だった。郵便受けには会社名が確かに書かれていたが、インターホンはなく、ノックをしても誰も出てこない。外から見る限り、人気はなかった。
近所の人に話を聞くと、「元は人が住んでいて、1年ほど前に引っ越したと思う。その後、改築したみたい。たまに若い人が来たり、朝、郵便物を回収しに自転車に乗った人が来たりするのを見るけど、普段は誰もいないよ。何をやっているのか、全然わからないね」と言う。
それではと、今度は登記簿にあった代表取締役の自宅の住所を訪ね、出てきた若い男性に話を聞いた。関東地方の大学に籍を置いているが、休学してネットでサプリを販売するベンチャー企業を20代で立ち上げ、社長を務めているという。住宅街にあった一軒家は登記上の便宜的な建物で、実際の業務は別の場所で行っていると説明した。私たちが、フェイク広告の実物を見せると「出ていることは知っている」とあっさり認めた。
「弊社のような通信販売事業は、広告制作者に、仲介業者を介してネット広告を出してもらっており、広告をクリックした人に商品が1件売れたごとに成果報酬をお支払いする形になっています。僕らとしては、誰がどんな広告を書いているか、追いきれない」
■成果報酬型のネット広告「アフィリエイト」の仕組み
この大学生社長の説明によれば、サプリのフェイク広告は「アフィリエイト」と呼ばれる、成果報酬型のネット広告の仕組みを使って出稿されていた。簡単にアフィリエイト広告の仕組みについて説明しておこう。
(1)広告主(今回の事例で言えば、サプリ販売会社)が、「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)」と呼ばれる広告仲介業者に、商品を宣伝する広告の作成を依頼する。
(2)ASPは自社の契約する何人もの「アフィリエイター」と呼ばれる広告制作者に、商品を宣伝する広告サイトの作成を呼びかける。アフィリエイターは個人の場合も法人の場合もあるが、ASPの呼びかけに応じて、商品の特徴やお薦めポイントなどを自分の運営するブログに書いたり、新たに広告サイトを作成したりする。このブログや広告サイトには、広告主のサイトに飛ぶようリンクされたバナーや「購入する」と書かれたボタンも設置しておく。
(3)このブログや広告サイトにアクセスした人が、そこで書かれている内容を見て、サイトの中にあるバナーや「購入する」ボタンを押して実際に商品を買うと、どの広告を通じて商品が買われたのかわかる。
(4)購入契約の成果に応じた報酬がASPからアフィリエイターに支払われる。仲介したASPにも、成果に応じて広告主から報酬が支払われる(報酬額はまちまちだが、今回取材した中では、購入1件当たり、数千円から、中には1万円を超えるものもあった)。
■フェイク広告を作ったアフィリエイターがわからない
私たちの質問に、サプリ販売会社の大学生社長は、自社が契約していたASPは約30社あり、今回、見つかったフェイク広告は、この中のいくつかのASPが仲介したアフィリエイターが作ったものだと答えた。

規模にもよるが、ASPの中には何百、何千のアフィリエイターと契約しているケースもある。大学生社長によれば、広告主がフェイク広告を作ったアフィリエイターをたどろうとしても、ASPを挟んでいるので、どのアフィリエイターが作ったのかはわからないという。では、どのASPが仲介したのか、社名を尋ねたが、「それは……ちょっと怒られそうなので」と言葉を濁した。
このサプリの販売会社では、アフィリエイターに対し、芸能人を無断で使った広告を作らないようにと、ウェブサイト上に注意書きを載せているという。そして、広告をチェックする担当者も増やして、目視でのチェックも行っていると説明した。大学生社長は「広告の責任はすべて弊社にあります。僕らの管理、手が行き届いていないことがいちばんの問題です」と話した。
電話がなかなかつながらないことを伝えると、「予想以上に売れて、対応が追いついていない。電話がつながりにくい状況は認識しているので、早速、外注しているコールセンターの人員を増やすようにする」と答えた。
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NHK取材班ネット広告市場の急成長の陰で行われる、広告不正の実態を取材するため、プロジェクトチームを結成。クローズアップ現代+「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」「追跡! ネット広告の“闇”」「追跡! “フェイク”ネット広告の闇」を放送し、大きな反響を集めた。
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(NHK取材班)
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