記事

「まるで動物のように扱われた」英BBCが養護施設での虐待を暴露

1/2

約3年前、相模原市の障がい者施設で入所者19人が刺殺された事件は、未だに大きな衝撃ととして私たちの記憶に残っているが、近年、児童や高齢者に対する虐待を報じるニュースが頻繁に目に付く。

例えば、特別養護老人ホームを含む介護施設で、職員による高齢者への虐待件数は平成29年度で510件を数え、11年連続で過去最高になったという。今年1月には千葉県野田市で10歳の少女が親からの虐待を受けて死亡。これを受けて、親による体罰禁止規定が入った児童虐待防止法と児童福祉案の改正案が今国会で成立する見込みだ。

一連の虐待は外部者には隠された形で進行することが多い。

そこで、筆者が住むイギリスでは、ある養護施設に英BBCのジャーナリストが潜伏取材し、その実態を調査報道番組「パノラマ」で暴露した(5月22日放送)。

BBCのジャーナリスト、オリビア・デイビス氏による番組「パノラマ」は養護施設での虐待を明るみに出した(番組のウェブサイトより)

娘をこの施設に預けていた母親は、施設の職員に娘がいかに扱われたかを番組の試写を通して知り、「誰にも預けるべきではなかった」と涙を流した。

ケント大学の医療心理・障害を専門とするグリニス・ス・マーフィー教授は「まるで拷問だ」、「動物のように扱われている」と驚きを隠せない。

入所者は、一体どのような体験をしたのか。

女性の金切り声が響く

ジャーナリスト、オリビア・デイビス氏は昨年12月から今年2月まで、イングランド地方北東部ダラムの養護施設「ホールトン・ホール病院」で職員の一人として働いた。ここは、精神保健法の下、学習障害者と自閉症の人をケアするために設置された施設の一つだ。短期のケアの後、家族あるいは地域社会に戻すのが目的となる。イングランド地方にはこうしたケアの対象となる人が約2300人いるという。

デイビス氏は取材目的で働き始め、日々の勤務を隠しカメラで撮影した。同氏によると、こうした施設への入所はあくまでも短期が原則だが、数か月あるいは「何年も」滞在する例もあるという。

番組がまず映し出したのは、職員らによる侮辱的な言葉遣いだ。早朝、仕事開始の前に外でタバコを吸っていた職員の一人が施設を指して、「馬鹿な奴らが住む家だ」と発言。別の場面では女性職員が入所者の女性に対し、「あんたの家族は害悪だ」と叫ぶように言う。

筆者が見ていて最もつらかったのが、女性入所者アレックスさんの例だ。

アレックスさんは部屋の外に出ること、男性がそばにいることを極度に嫌う。男性職員がアレックスさんが太っていることを嘲笑し、アレックスさんの体の動かし方をまねる。

ある時には、アレックスさんの男性恐怖症を承知で、男性職員3人が部屋に入ってきた。「キャー!キャー!キャー!」と金切り声を上げるアレックスさん。ぬいぐるみで顔を隠し、ベッドの端に逃げこんだ。

「ちょっと外に出ていてくれ」。男性職員の一人がジャーナリストのデイビス氏に言う。デイビス氏は部屋の出口付近で隠しカメラで撮影を続ける。部屋の中から「バチン!」という音が聞こえた。「バチン!バチン!」。

この様子を番組放送前にアイパッドの画面で見ていたのが、アレックスさんの両親だ。ひどく衝撃を受けた様子だ。もしかして、ひっぱたかれたのだろうか?

後で、部屋の中にいた男性が風船を破裂させたことがわかる。「風船を割るなんて。あの子がすごく嫌うことなのに」と母親。男性職員がアレックスさんを怖がらせるためにほかの男性職員を部屋に入れたり、風船を破裂させたりしたことは、明らかだった。

別の場面では、今度は女性職員がアレックスさんを挑発し、数人の男たちがアレックスさんの部屋に入ってくる。金切り声を上げるアレックスさんの体を、数人が押さえつける。男性職員の一人が「風船」と一言いうと、アレックスさんは「ごめんなさい」と答えた。風船の破裂音を聞くことがよっぽど怖いのだろう。

また別の場面では、部屋の外の椅子に座った男性職員が「あと4人も、5人も男が部屋にはいてくるぞ」とアレックスさんに向かって声を上げた。アレックスさんを怯えさせ、行動をけん制するために「男性」というキーワードを使っているのだった。マーフィー教授は、一連の職員の行動を「心理的拷問」と評した。

チューインガムを配りながら、押さえ続けて10分間

入所者の中に、自閉症の男性がいた。入所から数か月経ち、男性は職員の嘲笑の対象となっていた。特に目立った活動をするわけでもなく、施設内をゆっくりと歩く男性に「ちょっと体をどけろよ」と声をかけるのがジョークになった。

ここでも、職員らが入所者を挑発し、男性が職員を殴る格好を見せると、数人の職員が集まり、男性を床に押し倒した。この拘束は約10分間続いた。抵抗する男性を押さえつけた職員らは終始余裕がある、リラックスした様子を見せ、一人はチューインガムをほかの職員に配った。

女性職員の一人がこの男性の部屋に行き、CDを含む私物を持ってくる。「悪いことをしたから、私物を取り上げる」というわけである。

この様子を試写で見ていた、バーミンガム大学のアンドリュー・マクドネル教授(専門は自閉症)は、まるで「残酷な処罰だ」と表現した。入所者の拘束は入所者自身にあるいは他人に危害を加える恐れがある場合にのみ行われ、しかも「一瞬であるべき」という。「可能な限り、少数の職員が行い、かつ見物する人が周囲にいるべきではない」。

番組では、職員らが入所者を「殺してやりたい」とジャーナリストに語ったり、入所者に「床に押し倒すぞ」と脅したりする様子が映し出された。ジャーナリストを自分たちの仲間であると信じ、将来的に監視カメラが施設内に設置されても「カメラに映らないようにどうやって入所者を痛めつけるか」を話す職員もいた。

あわせて読みたい

「BBC」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    田中康夫氏 脱ダム批判受け反論

    田中康夫

  2. 2

    アマゾン火災 責任の一端は日本

    ビデオニュース・ドットコム

  3. 3

    文政権 総選挙で「死に体化」か

    文春オンライン

  4. 4

    ラグビーW杯「日本不利」予想か

    BLOGOS しらべる部

  5. 5

    ZOZO売却でライザップ再建を想起

    大関暁夫

  6. 6

    ユニクロ会長の日本人批判に反論

    自由人

  7. 7

    若者に広がる自己中心主義の復活

    ヒロ

  8. 8

    質問通告遅らす森議員は官僚の敵

    天木直人

  9. 9

    橋下氏 徴用工の個人請求権残る

    文春オンライン

  10. 10

    よしのり氏 安倍首相に期待残す

    小林よしのり

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。