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なぜ皇室の方々は英語をマスターできるのか、その英語学習法

留学中に学友と談笑する天皇陛下(時事通信フォト)

天皇陛下も雅子さまもハイレベルな英語力で対応された(時事通信フォト)

 諸外国の王族や要人と通訳を介さず談笑する皇族方は、いつも自信に満ちあふれている。“皇室外交”の担い手たちは高い語学力をどう身につけたのか。

 立場上、自由に海外留学をしたり、英会話スクールに通い詰めることができるわけではない。それでも流暢に英語を操る理由は──。

◆天皇陛下は“通訳要らず”

 新天皇即位に関連する儀式は、今秋に山場を迎える。10月22日に「即位礼正殿の儀」があり、それに続く祝賀パーティ「饗宴の儀」には各国から賓客が招かれる。

 御代がわりで日本の皇室に世界の注目が集まるなか気付かされるのは、皇族方が驚くほど流暢に英語を操り、外国の人々と積極的に交流していることだ。

 まず、最も注目を集めたのは雅子皇后だ。即位後初の国賓であるアメリカのトランプ大統領夫妻を迎えた際は、その語学力が遺憾なく発揮された。皇室記者がいう。

「宮中晩餐会ではトランプ大統領夫妻と通訳を介さず親しげに語り合っていた。ネイティブ顔負けの英語に、気難しいトランプ大統領の表情もいつしか柔和なものに変わり、メラニア夫人とは10代の子供を持つ母親同士の話題で盛り上がっていました。アメリカ側の関係者も“大変美しい英語だ”と感嘆していたようです」

 雅子皇后は幼少から海外生活が長く、米ハーバード大学を卒業。東大を経て外務省に勤務した。英語のみならず、フランス語やドイツ語、ロシア語も堪能だ。

 元外交官というキャリアを考えれば語学に長けているのは当然とはいえ、実はこのとき天皇もトランプ大統領とのやりとりで流暢な英語を披露した。会見ではこんな“ハプニング”があったという。皇室ジャーナリストの神田秀一氏がいう。

「公式な会見では、会話の内容を記録する意味もあり、通訳を介すのが一般的です。しかし、この日の陛下はトランプ大統領と直接英語で話し込んでしまった。そのため、職員が途中で“通訳を通してくださいませんか”と願い出たのです。

 陛下は通訳を通すよりも自ら直接語りかけたほうが、言葉に込めた真意や人柄が伝わりやすいとお考えになったのではないか。このハプニングは“もてなしの心”が現われたシーンでした」

 通訳を介すことが“コミュニケーションの障壁”になると感じる──それほどの英語力は、一朝一夕に身につくものではないだろう。

 中学、高校、大学、さらに英会話学校に通っても結局英語をモノにできない日本人が多いなか、天皇を始め皇族方は「1人残らず」流暢に英語を話す。なぜ皇室の方々は英語をマスターできるのか。そこには皇室ならではの「英語学習法」があった。

◆辞書は使用禁止

 皇室という“菊のカーテン”の向こうで、皇族方は幼い頃から良質な英会話レッスンを受けている。

 その源流は、1946年から4年間、幼少期の上皇(明仁親王)の家庭教師を務めたアメリカ人作家、エリザベス・ヴァイニング夫人の指導方針だ。

「彼女は日本語を話さなかったため、授業は“英語のみ”で行なわれました。英和・和英辞典すら使用禁止で、時にジェスチュアを交えながら“伝わる英語”を学ばせることを徹底した。

 スパルタのように聞こえますが、一方でその指導法は、英語への興味がかき立てられるような様々な工夫が凝らされていた。たとえば魚が好きな明仁親王のために魚類図鑑を英訳して説明したり、同年代の米国人の少年とモノポリーをすることもあったそうです」(別の皇室ジャーナリスト)

 ヴァイニング流の英会話レッスンは、現天皇への教育にも受け継がれ、表面に英単語、裏面に日本語が書かれたカードを使ったカルタ遊びが取り入れられた。

◆「要人の出迎え」に同行

「英語への関心を高める教育」は、愛子内親王にも幼少期から行なわれている。

 天皇が御所で外国からの要人を出迎える際、非公式の引見の場では愛子内親王も同行し、片言の英語で挨拶していたという。

「海外への訪問があるたび、陛下は愛子さまに『おはよう』『こんにちは』といった簡単な挨拶に加え、その国の歴史や文化を教えていました。『海外への興味』が語学習得の大きなカギになると知っていたからです。その教育が実を結んだのか、愛子さまは幼い頃から国旗の並んだ図鑑を好んで眺め、今では海外の要人とも英語でやりとりされています」(宮内庁関係者)

 わざわざ英会話スクールなどに出向かなくても、御所では「英語での話し相手」が大勢いるという。

「『女官』や『出仕』といったお世話係のほとんどは、英語を自在に操ります。語学ができることが必須条件ではありませんが、縁故での採用でいわゆる“良家のお嬢様”や帰国子女が就くことが多いため語学力が高い。そういった身の回りの女性を相手に英語のやりとりをすることが、愛子さまの日々のトレーニングになっている」(同前)

◆「雅子皇后は「最高の家庭教師」

 愛子内親王にとって女官や出仕以上の「最高の家庭教師」──それは母である雅子皇后だ。「何時間も付きっきりで指導されることもある」(同前)という。

 天皇にとっても雅子皇后は“先生”だ。それが現われたのが、皇太子時代の2015年11月、米ニューヨークの国連本部で行なわれた『水と災害に関する国際会議』での基調講演だった。

「35分にわたるスピーチは非常に格調高く、かつ説得力に溢れたものでした。陛下はその原稿の添削を雅子さまに依頼し、自ら何度も練り直したそうです。イントネーションや間の置き方などについても積極的にアドバイスを求めていたようです。一番近くにいる“先生”の助けを借り、皇族としての品格や教養を感じさせる英語を使いこなそうとしている」(前出・皇室記者)

◆「目標」ではなく「手段」

 皇族方はほとんどが英語圏への海外留学を経験している。中学、高校時代に数週間~1か月のホームステイをし、その後、大学卒業までに長期留学を経験するというパターンが多い。皇族が選ぶホームステイ先には、ある共通の傾向がある。

「1974年に当時中学3年だった天皇陛下がオーストラリアで11日間のホームステイをした際、上皇ご夫妻が出した受け入れ先の条件は『同じ年頃の子供がいる家庭』でした。同年代との交流が、国際的な視野を持つことに繋がるという考えです。2013年にアメリカで1か月ホームステイした佳子さまも、ステイ先には同世代の子女がいた」(同前)

 天皇はある講演会での質疑応答でこのように語ったことがある。

「各国の方とお友達になったとき、日本の文化、風習、伝統、“日本はこういう国なんだ”と海外の方に直接お伝えできます。自分の知識を深めるのと同時に、日本のいいところをどんどん世界に広めるためにも留学はいい機会だと思います」(2015年に学習院大学で行なわれた、三笠宮彬子女王の『オックスフォードに学んで』講演)

 皇族方にとって、英語習得自体は「最終目標」ではない。日本の代表として世界と向き合うための「手段」なのだ。当然、英語への理解やモチベーションも高くなる。その自覚の強さこそが、高い語学力の礎なのかもしれない。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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