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男の性癖のため肉体を改造する売春婦の姿

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■バングラデシュで好まれる「豊満な女性」

後味の悪い話だったが、もう少しこのトーンにお付き合いいただきたい。世界中を旅して取材していると売春にまつわる悲惨な話を耳にすることは多い。以前、世界一危険な仕事といわれる、バングラデシュにある「船の墓場」と呼ばれる船の解体所を訪れた。その際に訪問することがかなわなかった場所がある。それが売春宿だった。

バングラデシュの男が一般的に好むとされる性癖がある。それは豊満な女性である。

だが、売春宿で働いている女たちは、病気や貧しさなど様々な事情から痩せていることも珍しくない。そんな非人道的な状況が許されるはずがないと思うのだが、現実はもっとむごたらしい。

バングラデシュでは、売春そのものを政府が公認しているために、全体的に取り締まりがゆるいとされているのだ。なかには、児童買春を生業とするために、人身売買に手を出す業者もいるほどだ。

リクルートスタイルが非人道的だとしても、働くことになった以上は逃れられないため、女性たちは客をとるしかない。それも男たちの気を惹くために驚くべき手段をとるのだ。

■牛用ステロイド剤を摂取して太る女性たち

オラデクソンという薬品を知っているだろうか? ほとんどの方は聞いたこともないだろう。それもそのはずで、ステロイドなのである。それも牛用のものなので、獣医か酪農家でないと耳にすることもないだろう。

彼女たちは、そんな牛用ステロイド剤を摂取し、太って豊満な体にするのだ。この話を聞いたときに、この世の地獄のひとつかもしれないと思った。

男の性癖のために肉体を改造して、薬の副作用や性病によって人生を奪われていく。それも若いというか、ほとんど子どものような女の子たちがである。

彼女たちは、様々な理由があって売春宿で働いている。貧困、離婚、人身売買……。どんな理由であれ、そこにしか居場所がない人たちがいるという現実を知ったのは、20歳のときだった。

■「女に興味はないか?」について行った

バングラデシュの隣国、インドを旅しているときだった。仲良くなった地元の若者たちと昼間から酒を飲んでいたら、「女に興味はないか?」と問われたのだ。

インドの売春街といえば、コルカタのソナガチなど、いくつか有名なところもあるが、当時滞在していたのは田舎で大して大きな街でもなかった。世界遺産でもある性をモチーフにした雄大なレリーフで有名なカジュラホに近いだけの街だった。大都市に風俗街があるのは年若い自分でも予想ができたが、こんな辺鄙な場所にもあるのかと驚いた。

飲酒運転という概念すらないであろう若者の運転するバイクに乗って、村からかなり離れた場所まで連れてこられた。そこには土壁の家と呼べないようなボロ屋があった。

「ここだ」と言われて近寄ると、玄関っぽい場所の横にあるかまどにうずくまるようにして火を起こしている人がいた。年齢はわからない。性別はサリーっぽい衣装から女だとわかる。真っ黒に日焼けしていて、生活の苦労が顔のシワに刻まれている。

もしかしたら若いのかもしれないが、やっぱり老婆なのかもしれない。でもたしかめる勇気はない。

■抱かれることが「存在意義」になっている


丸山ゴンザレス『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社)

「女ってどこ?」v

この建物の中に若い子でもいたらいいなと期待して聞いた。

「そこにいるだろ」

無慈悲な返事に心が折れた。ここに来たのは性欲じゃなくて好奇心からだった。その欲求はすでに満たされていた。彼女は売春を生業とするカーストに所属していると説明された。

つまり、抱かれることが彼女のこの村での存在意義、生きる理由となっている。この場所で訪れる男たちの性を受け続ける生活がどれほど辛いのか。そのことを考えてみたが、想像が追いつくものではなかった。

このときには、ただ後味の悪さだけを噛み締めて立ち去ることしかできなかった。そして、何もする必要がなかった。それでも忘れられない記憶として私の心に刻まれていたのだ。

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丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす)

ジャーナリスト・編集者

1977年、宮城県生まれ。考古学者崩れのジャーナリスト・編集者。無職、日雇労働、出版社勤務を経て、独立。著書に『アジア「罰当たり」旅行』(彩図社)、『世界の混沌を歩くダークツーリスト』(講談社)などがある。人気番組『クレイジージャーニー』(TBS系)に「危険地帯ジャーナリスト」として出演中。

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(ジャーナリスト・編集者 丸山 ゴンザレス 写真=iStock.com)

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