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吉本芸人の「闇営業」を許す芸能界の甘さ

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フライデーは「誕生日会に100人以上が出席」と続報

吉本興業の入江切りは早かった。島田紳助騒動の時のように、詐欺集団の背後にいる暴力団との“関係”を探られるのを恐れたのだろう。

だが、翌週のフライデーは追及記事の第2弾を出し、芸人たちと詐欺集団はそれ以前からも知り合いで、彼らの素性を知っていたことを暴露している。記事のタイトルは、「吉本興業の「闇営業」芸人 今度は振り込め詐欺首謀者の誕生会パーティー写真入手」(『フライデー』6/28号)。

今回は、忘年会の約半年前、同じ詐欺グループの首謀者の誕生会に出て、芸を披露していたムーディ勝山、「天津」木村卓寛、くまだまさし、「ザ・パンチ」、「ザ ツネハッチャン」らの写真を掲載している。

都内のレストランを借り切り、メンバー100人以上が出席したそうだ。司会は入江で、首謀者や幹部たちを「若手実業家」と持ち上げていたという。

元メンバーの一人は、入江には仲介料として100万円以上を払い、当然、他の芸人たちにもギャラを払ったと断言している。まとめて入江の銀行口座に入れて、入江が芸人たちに振り分けたそうだ。

幹部たちは「詐欺で稼いでいる」とはっきりいった

入江だけではなく、「ロンブー」の田村亮も、詐欺集団だと知っていたと証言している。

誕生会の直前、入江が主催するイベントがあり、詐欺グループも参加していた。田村が挨拶に来た時、幹部たちは「詐欺で稼いでいる」とはっきりいい、田村も頷いていたそうだ。

『週刊文春』(6/20号)によれば、入江は角界にも人脈が太いという。一番親密なのが横綱白鵬で、白鵬のブレーンといわれる鈴木おさむが、「(白鵬との関係は)入江がつないでくれたのは事実です」と認めている。

直接電話できる社長は数千人超と豪語していて、居酒屋チェーンのワタミ創業者の渡辺美樹との仲は有名だという。

入江という芸人の人脈を探っていくと、まだまだ闇の部分が出てきそうである。

「アメトーーク」の観覧に、詐欺グループ主犯格を招待と発言

多くの人気芸人を抱える吉本興業の“威光”におそれをなし、テレビ局は沈黙したままかと思っていたら、テレビ朝日が吉本に対して、所属タレントのコンプライアンス遵守の徹底を求めていたことがわかった。

それは、宮迫がMCを務めるバラエティー「アメトーーク」の観覧に、詐欺グループ主犯格夫婦を招待する発言をしていたと報じられたため、テレビ朝日はそうした事実の有無を調査したそうだ。

デイリースポーツonlineによると、テレ朝は「社内で調べたところ事実は確認できませんでした」として、以下のように説明しているという。

「調査を踏まえて、『現時点では放送予定には変更はありません』と説明。『しかしながら、事務所を通さずに接触したことによって、逮捕される前だったとはいえ、振り込め詐欺や反社会的勢力の人物がいたとの指摘がある事業集団との関係を疑われる報道があったことは、誠に遺憾に思います』と一連の騒動に対して言及。続けて、『当社といたしましては所属事務所に対し、改めて所属タレントのコンプライアンス遵守の徹底を求めています』と透明性を求めていることを明かした」(デイリースポーツonline6月14日付)

横山やすし、中田カウス、島田紳助……

これまでも吉本所属の芸人が暴力団と関わった数々の不祥事を起こしている。主だったものを挙げてみよう。

天才漫才師・横山やすしは何度も暴力事件を起こし、ヤクザとのつながりも噂された。

2009年には、山口組・渡辺芳則五代目組長と親しいといわれていた、ベテラン漫才師の中田カウスが、吉本興業の劇場「なんばグランド花月」から、キタのなじみの店に向かう途中、男に殴りつけられる事件が起きた。

この事件についてはノンフィクション・ライターの西岡研介の『襲撃 中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版)が詳しいが、いち漫才師が反社の力をバックに、吉本を乗っ取ろうとしているという批判が、吉本内部から上がった。

そして2011年8月、売れっ子タレントの島田紳助が暴力団と親密交際していることが明らかになって、紳助は芸能界を引退した。

今回の「闇営業問題」がどういう決着を見るのかわからないが、吉本に限らず、芸人や役者とヤクザとのつながりは、美空ひばりと田岡組長の関係を持ち出すまでもなく、古くて深い。鶴田浩二、高倉健、勝新太郎や歌手の北島三郎、細川たかしなど、ヤクザと関わりがあった俳優や歌手は枚挙にいとまがない。

アイドルのようにもてはやされ、法外なギャラを稼ぐ芸人

だが、私は、それだけを取り上げて、けしからんと拳を振り上げ、彼らに石を投げるつもりはない。先の増田もこう書いている。

「吉本だけが云々ということでなく、芸能界とその筋は緊密度の差こそあれ、何らかの形で関係を持っていると認識している。(中略)むしろ私は芸人こそが“ヤクザ”であり“玄人”であってほしい。ここに挙げたヤクザの意味合いの対極にあるのが“カタギ”と“素人”だ。すべからく芸人は異能者でなければならぬ。異能を抱えて生きるということは、世の尺度から逸脱せざるを得なくなる。世間のはみ出し者という自覚と認識があるからこそ、芸人は笑いに包んだ毒を放つことができる」

増田は、カタギや素人が芸界なんぞに足を踏み入れるべきではないという。私もこの意見に首肯する。

だが、現在、テレビで薄っぺらな笑いを振りまいている吉本を含めたお笑い芸人たちは、この定義には当てはまらない。

彼らは素人のような芸を切り売りし、カタギを自称する。そしてアイドルのようにもてはやされ、法外なギャラを稼いでいる。この連中が反社とつながっているとすれば、お茶の間から即刻、たたき出すべきだ。

アウトローであることより、権力迎合を選ぶ芸人たち

ヤクザとの付き合いがあっても、自らが準構成員でもいい。それでも芸を見せたいのなら、マスメディアではなく、都会の片隅や地方にある小屋で、思う存分芸を披露するがいい。

立川談志師匠は一人会で、たびたび放送禁止用語を連呼していた。さらに金正日マンセー(バンザイ)と叫ぶこともあったし、殺人の容疑をかけられた悪相の人間を「何とかあいつを犯人に仕立てあげようじゃないか」と、毒をまき散らしていた。

談志いわく、寄席というのは本来こういう空間だったという。客は、寄席という非日常的な空間で、普段口にするのがはばかられる黒い笑いや、空威張りしている役人や政治家をこき下ろす噺家の舌鋒に、日頃の憂さを一時忘れ、また日常へと戻って行ったのだ。

芸人は本来アウトローであるべきだ。だが、このところ権力に迎合する芸人や役者たちの何と多いことか。

今春、安倍晋三首相が吉本新喜劇の「なんばグランド花月」に登場した。6月には、新喜劇の連中が首相官邸を訪問して、昼食を共にしたそうだ。

吉本興業所属の芸人たちが権力にすり寄るのは、反社の人間と付き合うより避けなければならないことだと、私は考えるが、一度、吉本の考え方を聞いてみたいものである。

(文中敬称略)

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト)

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