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「マザコン殺人」を機に考える、親が“子に対する責任”を手放す適切なタイミングとは? 


「悪魔にでもなる」

 “マザコン殺人”として世間を驚かせた事件で、母親が息子に送ったこのメッセージ。そこには現代社会の親子関係が抱える問題点が隠れているかもしれない。

 去年3月、千葉県柏市に住む女性が殺害された事件。その女性の遺体発見現場は夫の実家の裏庭だった。妻の麻衣子さん(当時30)を殺害して遺体を埋めたとして殺人と死体遺棄の罪に問われたのは元銀行員の夫・弥谷鷹仁被告(37)。殺人ほう助の罪に問われたのは、弥谷被告の母親である恵美被告(64)だ。

 千葉地裁は12日、鷹仁被告に対して「妻が行方不明となる計画を綿密に練り上げた」として懲役15年を言い渡した。母親の恵美被告に対しては「殺害を積極的に手助けしていて酌量の余地はない。最大限の非難に値する」と指摘。求刑6年を上回る、異例の懲役7年を言い渡した。


 今回、求刑を上回る懲役7年が言い渡されたことについて、きらり法律事務所の中川みち子弁護士は「無い事ではない。ただ少ないと思う」とレアケースであることを強調すると「通常、親というのは子どもが人の道を外れたこと、やってはいけないことをやるときに止める立場にある。今回は母親が埋める穴を殺人の前に手伝うなどの協力があったことでハードルが下がり、結果(殺人)が起こってしまったことを重く見たのでは」と求刑を上回る判決が下された経緯を推察した。

 2012年2月に結婚した弥谷被告は、結婚6年後の3月4日に凶行に及んだ。その当時、母・恵美被告との間には次のようなやり取りがあった。

「娘と自分を救うには殺すしかない」(鷹仁被告)
「鷹ちゃんのためなら悪魔にでもなる」(恵美被告)

 そうして、殺害の2日前から二人は殺害行動を開始する。母・恵美被告が運転する車に乗り込んだ鷹仁被告は茨城県取手市内にある店で長靴を買って同市内にある実家へ向かったとされる。殺害後の遺体を埋める段取りで実家の裏庭に穴を掘り始めた鷹仁被告は、さらに恵美被告に対して、埋葬の際、遺体を殺菌するために使う石灰の購入を依頼。頼まれた恵美被告は法廷で「まず10キロ、次に20キロ買い足した」と詳細な証言をしている。さらに「なぜ穴を掘るのをやめさせなかったのか?」と問われると「そんな雰囲気ではなかった。息子に調子を合わせなければ、自身に対しても危険が及ぶと感じていた」と話す一方、「息子が人を殺すはずがないと思っていた」とも当時の心境を明かしている。


 しかし、その2日後に殺害は実行に移された。鷹仁被告は千葉県柏市内にあるマンションの一室で妻・麻衣子さんに睡眠導入剤入りのカレーを食べさせると、麻衣子さんを車に乗せ、自宅から3キロ離れた人気のない路地の車内で麻衣子さんの首を絞めて殺害した。直後に恵美被告に電話をした鷹仁被告は「妻を殺してしまった」と話すと、「嘘でしょ? 何があったの」などと応じた恵美被告は、頭が真っ白になり、それ以上のやり取りは記憶に無いというが、妻の麻衣子さんの遺体は、あらかじめ掘っておいた実家の裏庭の穴に埋められた。

 その後、鷹仁被告は警察に捜索願を提出。警察には「妻と車で出かけた際、我孫子市内で口論となり妻が降車。どこかにいってしまい、帰って来ない」と話していたという。行方不明のビラまで制作した鷹仁被告だったが、麻衣子さんが車を降りたという付近の防犯カメラには、麻衣子さんの姿は確認されなかった。

 そして殺害から4カ月後、ついに親子が逮捕された。法廷において、終始自身の正当化に努める恵美被告は、鷹仁被告に対して「悪魔にでもなる」というメッセージを送ったことについては「インパクトのある言葉を選んだ。私が悪魔になることで何でもできるよと言うことを伝えたかった。何に悩んでいるとかを打ち明けて欲しかったのです」とその意図を説明している。

 実家近くで取材を行ったテレビ朝日の三谷紬アナウンサーが近所の人に聞いた話によると、今回の件に一切の関与をしていない恵美被告の夫は自営業を営んでおり、今回の事件によって自宅など関連する物がすべて差し押さえられており、仕事もままならず、転々としながら生活を送っている状態だという。さらにこの事件は「マザコン事件」として報道されたが、近所住民の話ではそのような様子は無かったという。


■親が子どもに対する責任を手放す適切なタイミングとは?

 一連の裁判を傍聴し、恵美被告の法廷での様子に注目してきたと話すテレビ朝日社会部の尾崎圭朗記者は「恵美被告は終始淡々と。一方の鷹仁被告は顔を赤らめたり、涙ぐんだり感情的な場面も見られた」と話すと、判決が言い渡された瞬間の恵美被告の様子については「一瞬、怪訝そうな表情を浮かべたが、やはり淡々と聞き入っていた」と説明した。

 また尾崎記者は、鷹仁被告が穴を掘っているときの様子を聞かれた恵美被告が、一瞬笑みを浮かべると「スポーツをしているような感じで、スッキリしているような感じでした」と答えたシーンが印象に残っていると明かすと、「一貫して『息子が人を殺すとは思わなかった』と主張している恵美被告だが、二人で穴に遺体を埋めたという事実がありながら、一瞬とはいえ吹き出すとは考えられない」などと語った。


 今回の件について「夫婦間の話というのは、基本的に家族の中で話をすべき」と話したのは、元衆議院議員の金子恵美氏(41)。金子氏は「親はいつになっても親」と親への相談に対しては理解を示しつつも、「娘と自分を救うには殺すしかない」という鷹仁被告の言葉に対してたしなめるわけでもなく「悪魔にでもなる」と言ってしまうのは、親子の関係がなっていない証だと指摘。今回「マザコン」がクローズアップされたことについては「程度の差はあっても、母に対する思いがあるのは当然のこと。子どもが大人になる過程で、親がどこかで一線を置く必要がある」と一児の母として自戒の念を込めつつ意見を述べた。

 金子氏に続き、昨今の親子関係に持論を展開したのは東京大学大学院卒で元日経新聞記者の作家である鈴木涼美氏(35)。鈴木氏は「最近は一人っ子が増えている。住宅価格の高騰などで成人後も親と一緒の住まいだったり、住宅購入を親が援助したりしていると、親の意思がそこにある。また、一人だと物理的にいつまでも(親が子どもを)かまえてしまう。どのタイミングで親が子どもに対する責任を負わずに手を放すかという問題は、この間の次官の息子殺しの件でも同じく測りかねている感はある」と話した。

 一連の議論を受け、日本におけるセイバーメトリクスの第一人者でユニークな統計学全般の研究を行っている江戸川大学客員教授の鳥越規央氏(49)が「マザコン男の特徴」について言及した。鳥越氏は「自分の意見を持っていない」「衣服や髪型に無頓着」「反抗期が無い」の3つに当てはまるとマザコンと言われており、自分自身考えてみると「全て当てはまる」と苦笑いを浮かべていた。(AbemaTV『Abema的ニュースショー』より)

(C)AbemaTV

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