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「事故が起こっても手立てがないような状態のものを動かしてまで電気がほしい、なんてちょっとガクブルですだよ」もんじゅ君×津田大介対談

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左巻健男教授
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左巻:存在としてですね、1995年かな、ナトリウム漏れ事故を起こしたのはご存知ですよね? それ以来、ほとんど働いていないんですよね。莫大な税金はかけられていて、もんじゅ君は登場した頃の1970年代には、実用的になるんじゃないかと考えられてはいたんです。

津田:設計の段階ではどんどん科学も進歩しているし技術も進歩しているから、それこそ97年くらいには実用化されるだろうと。

左巻:そうですね。アメリカやフランスやいろんな国が、高速増殖炉を考えたんですね。でも、実際に動かしてみたらすごい大変で、どの国もほとんど撤退しちゃった。

津田:今コメントで、「見切り発車だったのか」とあります。

左巻:原子力発電そのものが見切り発車だよね。非常に高いレベルの放射性廃棄物の処理もはっきりしないまま、「今にどうにかなるんじゃないか」って作っちゃった。

津田:原子炉そのものが動かして発電しているけれど、廃棄物の問題って先の対応がわからない。

左巻:「将来なんとかなるんじゃないか」って、見切り発車して今まで来ている面はありますよね。

津田:なるほど。夢の炉と言われながらも、95年以降ちゃんと働けてもいない。去年の秋には民主党が政策仕分け型の提案で、もんじゅを抜本的に見なおすとなりました。そういった話し合いがされています。もんじゅの今後は、もっと開発するべきか、もしくはそろそろ引き返すことも考えるべきか、どちらですか?

左巻:僕は止めた方がいいと思います。コストパフォーマンスの問題もありますが、1990年ちょっと、もんじゅが出来た頃からある科学の本で、東大に大橋教授(大橋弘忠)という人が書いた本があります。有名な原子力推進の学者さんです。

そこには高速増殖炉のナトリウム技術、普通の原子炉が水で冷やしているのに対して、液体ナトリウムという、金属を溶かした液体で冷やすことが書かれています。

その管理技術、コントロールする技術というのが確立したから絶対大丈夫とその本には書いてあるんです。それを見ながら、僕はナトリウムが大好きなものですから、水に投げ込んで遊んだりしていました。

水に入れるとナトリウムはものすごい爆発するんです。そんな簡単にナトリウム技術が確立するわけがないんです。と、思っていたらナトリウム漏れ事故ですね。それがフランスなどでも起こって、同じようなことがあって撤退していく。頭の中では夢の原子炉なんだけれど、実際にはまだまだ先の先の話なんだなと見えてきました。

津田:いろんな国で開発しては途中で止めていった。その中で日本だけ留まっている。そういう意味ではもんじゅ君はニートになった方がいいかもしれないんですが、もうひとつ、もんじゅと並ぶ日本の原発のエネルギー政策を考える上で避けて通れないのが、核燃料サイクルですよね。

使ったものを埋めちゃおうではなくて、再利用していこうという核燃料サイクル自体、六ケ所村の施設がずっと失敗して動いていません。この国の核燃料サイクル自体について左巻先生はどうお考えですか? 

左巻:核燃料サイクルの中心にもんじゅ君というのが位置づけられています。天然のウラン核燃料の中に、原子炉で使える核燃料は一部しかないんだよね。

ウラン235かな。それが全体の0.7%しかなくて、残りは核燃料に使えないウランです。それを普通の原子炉では濃縮してウラン235を核燃料として発電しています。高速増殖炉というのは、残った99.3%の使えないウランをプルトニウムに変えちゃうんです。

プルトニウム239に変えて、高速増殖炉の中でプルトニウムのまわりにそういうのを置くんです。普通の原子炉で使えないウランを。それが発電しているうちに、いっぱいあるウランがどんどんプルトニウムに変わっていく。

そうするとプルトニウムが発電しているうちに、数十倍に膨れ上がってきて、核燃料が節約出来てどんどん増やすことが出来る。それが夢の原子炉だと。普通の原子炉の使用済み核燃料の中にプルトニウムがいっぱいある。それを取り出すという作業をするわけです。

津田:錬金術というコメントがあります。

左巻:そうですね。再処理ということで、そのために、使用済み核燃料を液体にしたりいろんなことをしていく。そうするとその過程でいろんな放射能が、廃棄物が周りにも撒き散らされる。六ケ所村が機能するともっと放射能が出るという話です。

津田:そうなると、核燃料サイクルとは錬金術であるけれども、うまくいかないというのは難しい技術であると。

左巻:再処理にも、ものすごいコストがかかるわけです。その代わりに、ものすごく燃料が増えるという想像はしていたんですが、実際は1割、2割ちょっとプラスになるかなという感じなので、その他の再処理の過程での強い放射能汚染とかそういう諸々の事を考えると、割に合わないサイクルになっている。

津田:なるほど。そうなるともんじゅそのものの存続というのもそうだろうし、日本の核燃料サイクルというのも曲がり角に来ているということですね。それでもまだお金をかければ解決出来るのでしょうか?

左巻:高速増殖炉は先の先の先で、もんじゅというのは原型炉といって、まだ最初は試験的にやってみるという話でした。ちょっと発電してみようと。そこでずっと停滞していますから。その先の先までいかないと実用化されないんです。これはね、10年、20年ですむ話ではない。

津田:それで一日5500万円掛かる。

左巻:その間にプルトニウムがどんどん出来るんです。外国に再処理を頼んでどんどん戻ってくるので。そうすると今何が問題になっているかというと、再処理サイクルの中でMOX(燃料)というのがあります。普通の核燃料の中にプルトニウムをちょっと入れて、一緒に燃やしちゃおうと。そうするとプルトニウムをちょっと減らせるんじゃないかって。

津田:MOXの燃料はより危険度が高いんですよね? 

左巻:元々そういうものを燃やすために設計されていませんから。それで一応試験はするわけです。これだけ増やしたから大丈夫だろうって。だけれども、原子炉がさらに不安定になって、きっと暴走しやすくなる可能性が高まる。それを使ってプルトニウムをちょっと消費することは出来るけれども、危険性はより高まっているという状況だと思います。

津田:ほとんどの原子炉を止めずに動かしていく。使用済み核燃料のプールが無いのでそれをどうするのかという話があるがゆえに、それをどうにかしたいという核燃料サイクルの話でした。それ自身が止まっているからデッドロックになっちゃう。

もう一つ、この原発事故以降の問題。福島や線量が高い地域に暮らす方々で心配になっているのは、低線量被曝の問題ですね。郡山市や福島だと通常の空間線量でも1マイクロを超えたり、3マイクロくらい行く中で日常的に引っ越さないで暮らすと、どれだけ低線量被曝は健康に影響があるのか。いろんな学者によって意見が分かれているんですが、左巻先生はどうお考えですか? 

左巻:どのくらい下が低線量かというと、はっきりしていないのですが、一般には100ミリシーベルト。100ミリシーベルト以下を低線量といいます。

津田:年間ですよね? 

左巻:年間というか累積ですね。ある短期間の間も含めてですが、普通は年間ですね。100ミリシーベルト以下というのは広島長崎で被曝された方を、被曝5年後からずっと追跡して出た数値です。

それから、核兵器を作る工場がありますよね。その工場で働いている人たちを追跡したりして、低線量被曝についても少しずつわかってきている面もあります。だけどはっきりしたことがわからない。

なんでわからないかというと、普通の癌になるのが、その被曝の影響かどうか。それがいろんな要因の中の一つになっちゃうんですね。放射線でこの癌になったと簡単に特定出来ないんですね。

そういういろんな癌になる原因に紛れてしまうので、はっきりしたことが言えない。だけれども、放射線について、健康について学者たちの中でもニュアンスがいろいろあります。100ミリシーベルト以下だったらわからないということを元にして、安全だと言う人もいます。

わからないということをして、ものすごく恐怖感を持っている人もいます。わからないということが人々の不安を非常に増幅させていることがあります。

津田:山下(山下俊一氏)派か、菅谷(菅谷昭氏)派かという話もありましたけどね。

左巻:ただし、はっきりしていないという統計を取ると有意差が表れる。それが影響していないというはっきりした証拠がない。だから影響していると考えた方がいいわけです。国際放射線防護委員会がいうのは、低線量被曝でも「しきい値」が無い。

しきい値があるというのは、100ミリシーベルト以下なら安全だよという考えですね。それに対しては、しきい値が無くて、被曝に応じて何らかの障害が出ると考えた方がよいということですね。そうやって放射線から守る対策を考えた方がよい。今の世界的に標準な考え方ですね。

津田:僕も東大の児玉龍彦先生に話を伺った時に印象に残ったのが、1%の人にしか影響がなかったとしても、その人たちの癌の発生率が上がってしまうとその人にとっては100%の大問題であるので、その1%をなくすための方策を取った方がいいじゃないかという話になりました。そこは難しいところですかね? 

左巻:僕も昨年の今頃ですかね、放射線計を持って精密に測れるものからいろんな小型のものを持って福島を回ってみました。そしたらテレビでやっていたダッシュ村の入り口なんかはすごい高い。

津田:浪江町ですね。

左巻:ええ。普通の放射線計だと振りきれる場所がいっぱいありました。そういうところでずっと暮らしている人たちというのは、そこが一番の悩みだと思います。

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