- 2019年06月18日 09:17
情報をクローズにする経営者は、凡人以上に天才を殺している──『天才を殺す凡人』北野唯我×サイボウズ副社長 山田理
1/2かつて離職率28%のブラック企業だったサイボウズ。しかし現在は「働き方改革」を推し進める企業へと生まれ変わりました。そのけん引役を担ったのが、副社長の山田理です。
山田はこれまでのマネジメントや組織づくりの経験をまとめた書籍を、秋ごろに上梓する予定です。
その出版前イベントとして、2019年1月に新著『天才を殺す凡人』を上梓した、株式会社ワンキャリア最高戦略責任者の北野唯我さんをお招きして対談を行いました。テーマは、「才能を殺さないために、マネジャーができること」。
個性を生かす時代、これからのマネジメントはどうあるべきか。理想的なチームをつくり上げていくために、マネジャーはどうすればよいのでしょうか。
僕の仕事は、社員のみんなを早く辞められるようにすること
北野さんの『天才を殺す凡人』、めっちゃおもしろいですよね。
ありがとうございます。『天才を殺す凡人』では、人の才能は3つあると定義しています。それは、創造性、再現性、共感性です。
それらの才能のうち、どの割合が強いのかによって、天才タイプ、秀才タイプ、凡人タイプに分かれます。
うんうん。
クリエイティブで新しいものをつくる「創造性」が強い人は、天才タイプ。
ロジックを持っていて、もう1回同じようなプロセスで繰り返し行動できる「再現性」が強い人は、秀才タイプが当てはまりますね。
そして、共感できるかどうかといった、感情的なものを大切にする「共感性」が強い人は、凡人タイプです。
北野唯我(きたの・ゆいが)。兵庫県出身。新卒で博報堂。その後、ボストンコンサルティンググループに転職し、2016年ワンキャリアに参画、執行役員。2019年1月から子会社の代表取締役、ヴォーカーズの戦略顧問も兼務。30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が12万部。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)が発売3ヶ月で9万部。編著に『トップ企業の人材育成力』。1987年生。
外から見ていると、サイボウズの社員さんは、それぞれが自立して才能を発揮し、いきいきと働いているように見えます。
そのポイントってなんだと思いますか?
うーん。みんなが「自分で選んでいるから」かもしれません。僕は入社式のときに言うんです。
「サイボウズに入ってくれてありがとう。僕が最初にやらなきゃいけないことは、君たちが早く会社を辞められるようにすることです」と。
辞められるくらいのスキルをつけたみんなが、「それでもサイボウズで働きたい」と言ってくれる会社にするのが経営の役割だと思っています。
山田理(やまだ・おさむ)。サイボウズ株式会社取締役副社長 兼サイボウズUSA社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、取締役として財務、人事および法務部門を担当。初期から同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年グローバルへの事業拡大を企図しUS事業本部を新設、本部長に就任。同時にシリコンバレーに赴任し、現在に至る。
ああ、僕も、まさに同じような考えです。
働き方も、仕事重視でもいいしプライベート重視でもいい。複業してもいい。
「自分で選んでいる」状態が主体性を生み出す。それがいきいきとかワクワクにつながっているんだと思います。
情報を開示しない経営者は、凡人以上に天才を殺している
サイボウズさんみたいに、社員それぞれが自立心を持って働く会社って、どうやったら増えるんでしょう?
一番大事なのは「情報の公開」だと思います。権限を持っている人が情報を渡すのって、勇気がいるんですよね。なぜなら、財務状況とか事業戦略は、出してしまった瞬間にウソをつけなくなるから。
でも、開示してみんなが知ることで、一人ひとりが主体的になれる。みんなに「自分の会社だ」と思わせるためには、情報の公開が必須だと思うんです。
それに、情報の公開に必要なのはスキルじゃなくて覚悟だけで、経営者やマネジメント層が失うものは何もないですしね。
おもしろいですね!
情報を公開した瞬間に、頭がいい人はたくさん会社の中にいるので、アイデアがブワーっと出てきます。
情報を公開しないから、その人たちのアイデアや能力を殺してしまっている。情報をクローズにしている経営者は、凡人以上に天才を殺していますよ。