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退院した患者に冷たい日本のリハビリ環境

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脳卒中で倒れた人は、仕事には戻れるのだろうか。ライターの三澤慶子さんの夫は50歳で脳卒中になり、仕事に復帰するまで9カ月かかったという。三澤さんは「いまの仕組みでは脳卒中で倒れた人の『仕事復帰』の支援が手薄です。これではたとえ退院できても行き詰まってしまいます」と振り返る――。

ライターの三澤慶子さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

麻痺は残ったが「全部ひとりでできる」

2014年2月、ライターの三澤慶子さんの夫(当時50歳)が脳梗塞を発病した。後遺症によって夫の右半身には麻痺が残ったが、リハビリを続けながら仕事復帰。生業である映画評論家(※)として執筆活動を続けている。

※映画評論家の轟夕起夫さん

突然の病と闘病の記録を、三澤さんは『夫が脳で倒れたら』(太田出版)につづった。三澤さんは今、自身の経験から脳卒中患者が早期に仕事復帰する重要性を感じ、その道を模索しているという。

――脳梗塞を発病したことで旦那さんの体の右側に麻痺が残ったということですが、生活する上でサポートは必要ですか。

夫の場合は片方の筋力があって麻痺側を支えることができたので、早い時期から身の回りのことはだいたいひとりでできたんです。リハビリで服も着られるようになったし、頭も背中もなんとか洗えるようになりました。なので退院後に私がなにか介助する必要もなく、介護サービスに頼ったこともなくて。

感情の起伏は本人ではなく「脳卒中」のせい

でも脳の病気の後遺症は人によって症状がバラバラで、「高次機能障害」といって、記憶障害や判断力が低下したりするような、内面的な障害だけが出る人もいます。この場合、見た目ではほとんどわかりませんが、その分、ケアの必要性を周囲にわかってもらうことも困難になります。

夫も発病後は感情の起伏が激しくなりました。本人も「なんで俺、こんなことで泣いてるんだろ?」と思うほど涙腺がゆるくなったり、急に笑いだしてしまったりすることもあります。

人によっては暴力的になることもあり、そうなると家で見る家族はとてもつらいものがあると思います。それもこれも本人のせいではなく、あくまで「脳卒中」(※)に原因があるわけですが、私自身、そうして切り分けて考えられるようになるまで時間がかかりました。

※脳卒中:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作の総称

「仕事復帰」を支援するサービスが足りない

――そばで支える家族が追い詰められないためにも、患者の“早期仕事復帰”が重要だというお話がありました。そのための支援制度などはあるのでしょうか。

病院や介護サービスと患者をつないでくれるのがソーシャルワーカーなんですが、それは“家庭復帰支援”であって、“仕事復帰支援”ではないんですよね。

働き盛りの50歳で発症した夫の例をはじめ、本に書いてあるとおり、病院には30~40代の患者さんもいました。現役世代向けの支援の必要性も高まっているのではないでしょうか。たとえば脳卒中で後遺症を抱えたサラリーマンが会社に復帰したいとなった場合、その人の上司は、部下の後遺症がどのようなものかわからないと思うんです。

さっきの話のように見た目にまったくわからない後遺症を持つ人もいるわけで、そういった患者の状況や、仕事として今できること、どのような配慮が必要かを客観的に説明してくれるような、職場と患者をスムーズにつないでくれるサービスがあったら……と思いました。

患者を受け入れる「社会」の恐怖心を減らしたい

「がん」だと社会復帰のことなどを相談できる専門家が各地にいるそうですね。脳卒中の場合、現状ではそれに一番近い存在が理学療法士さんとかになってしまうのかなと。

リハビリを組み立ててもらっているのでどんな作業がどれだけできるかを把握しているし、仕事に含まれていないとは思いますが、心のケア的なことも会話のなかでしてもらうこともあるので、患者の状態を誰よりわかってくれている存在なんです。

そう考えると理学療法士や作業療法士と会社、患者の間をつないでくれる存在が今、求められているのかもしれません。脳梗塞、くも膜下出血、脳出血……どれも「得体の知れないヤバい病気」という感じもあり、周りの人は腫れ物に触るような対応になりがちです。また「聞いちゃいけない」と遠慮する人もいるでしょう。

これは本を書いた動機のひとつでもあるんですが、「脳梗塞をやった夫の場合、右半身麻痺の後遺症があってもこれくらいのことができました」と提示することで、受け入れ側にある恐怖心を少しでも緩和できたら、という気持ちがあったんです。

周囲から病気や後遺症の理解が得られれば、発症前ほどガンガンはできなくても、その人がいなくなった分をバイトで補うよりかはよっぽど仕事はできるはずですから。

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