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香港「雨傘運動の女神」が語る「200万人デモ、そして未来」





 6月12日、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」に反対する市民が、立法会(議会)を取り囲んで幹線道路を占拠した。警察当局は市民に対し、催涙弾や鎮圧用の「ビーンバック弾」を使用し、香港政府によると72人の負傷者が出た。5年前の「雨傘運動」の際に「民主の女神」として有名になった香港バプテスト大学4年生の周庭(アグネス・チョウ)さん(22)に、大規模デモについて聞いた。

【写真】日本のアニメやアイドル好きの顔を持つ周さん

「故郷のことを思うと、私も早く香港に戻って運動に加わりたい」──香港の市街地が再び“雨傘”で埋め尽くされた日、本誌・週刊ポストの取材に、周さんはそう口にした。

 周さんは、2014年の「雨傘運動」を主導した1人。マイクを握って演説する愛らしいルックスの17歳は、「雨傘運動のアイドル」、「民主の女神」として一躍世界的に有名になった。今回、広報活動のために緊急来日した彼女が率直な思いを語った。

──今日(取材当日の12日)も、香港では立法会(議会)を取り囲む大規模なデモが行われています。

「普段は土日にデモを開催します。今日は平日なのに、日中から人が集まり続けているというのは驚くべきことです。

 実は、今日は1000以上のお店が反対運動を応援するために休業しています。企業のストライキもありました。香港の人は日本人と似ていて仕事が大好きな人が多いので、ストライキはめったにないんです。しかも、労働者の権利を求めるためのストライキではなく、政治的なストライキというのは珍しい。

 だから、今日の香港を自分の目で見たいんです。“香港にとって歴史的な日なのに、私は日本にいる”ということが、本当にもどかしいです」

──今回の改正案の危険性は、どんな点にあるのでしょうか?

「可決されたら、中国共産党に批判的な香港人が中国に引き渡されるかもしれません。中国は公平透明なシステムもないし人権も命の保証もないので、みんなはそれを心配しています。中国では民主化を求める弁護士や運動家が、ある日突然、重い身体障害が一生残る状態になったり、亡くなってしまうことが少なからずありますから。

 香港に来た外国人の安全にも大きく影響します。もともと香港は多くの海外企業が拠点を置く国際金融都市ということもあり、自由も人権の保障も公平な法律制度もありました。だけど、今後はそれが脅かされることになります。

 日本人が当たり前に持っている権利を、私たちはどんどん失っていくことが悲しいですし、可決されたら香港はもう香港じゃなくなってしまう……」

◆残るのは「絶望感」だけ

──5年前、あなたは「雨傘運動」のシンボル的な存在になった。

「雨傘運動は、香港に今までなかった『普通選挙』という“新しいもの”を求める運動でした。デモ参加者の間でも“普通選挙って一体どういうものなのかわからない”という状態だったので、考え方には、それぞれ少しずつ違いがあったようにも思います」

──79日間に及ぶデモは、具体的な成果を残せなかった。

「でも今回は、何か新しいものを求めるわけではなく、“すでに存在している自由”が奪われようとしていることに対して立ち上がった。逃亡犯条例案を撤回させ、反対するという目標がはっきりしている。みんなが同じ目標を見ている分、熱気も団結力も違います」

──もし改正案が可決されたら、その後には何が残りますか。

「……絶望感です。もう誰もデモに参加しないという空気になるかもしれません。参加するだけで、中国に引き渡されるかもしれないわけですから」

──周さんは2014年の雨傘運動の際に逮捕された経験がありますが、改正後に再び逮捕されるようなことがあったら?

「収監されるだけならまだしも、中国に引き渡されたら……想像できないです。生きて出られるかすらも、わかりません。怖いですね」

 香港政府は15日、逃亡犯条例の改正審議の「延期」を発表した。しかし、条例の「完全撤回」を求めて、16日には香港返還以来最大となる200万人近い市民が集まった。周さんは、激化する運動の先の未来を案じていた。

撮影■中村康伸

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