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相手国への印象、日本は「最低」韓国は「最高」、なぜ? - 澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長)

Oleksii Liskonih / iStock / Getty Images Plus

言論NPOが韓国のシンクタンク・東アジア研究院と共同で5月に行った世論調査の結果が発表された。「相手国に対する印象」を聞く質問で、日本では「韓国に良い印象を持っている」という回答が過去最低の20%となったのに、韓国では「日本に良い印象を持っている」という回答が過去最高の31.7%だった。ニュースというのは特徴のあるポイントを切り取って提示するものなので、ここに着目した記事が多かったように思う。発表翌日(6月13日)の朝日新聞の見出しは「相手国への印象 日韓温度差」だった。

この調査は、2013年から毎年この時期に行われている。今年で7回目だから「過去最低」や「最高」にどれくらい意味があるかは迷うところではある。特に日本側の場合、朴槿恵政権が慰安婦問題で激しい日本批判をしていた2014年が20.5%だったので誤差の範囲内での「最低」だ。それでも定期的に行われている日韓共同世論調査はこれしかないので、その意味でとても貴重な資料となる。今回は、この結果を読み解いてみたい。

政治問題に連動する日本、連動しない韓国

相手国に対する印象の推移を見ると、日本での「韓国に良い印象」という回答は政治・外交的な動きに連動しているようだ。初回の13年が31.1%で、朴槿恵政権初期の日韓関係が悪化していた14、15両年はそれぞれ20.5%、23.8%と落ち込んだ。15年末の慰安婦合意を受けて関係改善への期待が出た16年は29.1%に上昇したものの、合意に懐疑的な文在寅政権の発足直後の調査となった17年は26.9%に低下。その後は低落傾向を続け、18年22.9%、今年が20%となった。

一方の韓国での「日本に良い印象」は、政治とは無関係に見える。13年以降の推移は12.2%→17.5%→15.7%→21.3%→26.8%→28.3%→31.7%。多少の上下はあるものの、一貫して上昇してきたといえる。言論NPOの工藤泰志代表は「日本への渡航経験」を理由の一つに挙げる。「訪日経験のある韓国人は、経験のない韓国人に比べて30ポイント近く日本への印象が良い」からだ。訪日韓国人数は、ちょうど13年ごろから急増している。12年には204万人だったのが、昨年は753万人。韓国の人口は5000万人なので、昨年の訪日人数は人口の7分の1に相当する。工藤氏の分析は妥当なものだろう。

この調査では理由も聞いている。途中で項目数を増やすことがあるので経年変化を見るには注意が必要だが、それでも貴重な資料となる。「良い印象を持っている理由」(2つ回答)は、日本側で「韓国の食文化や買い物が魅力的」と「韓国のドラマや音楽など文化に関心がある」がそれぞれ52.5%、49.5%と突出。韓国側では「日本人は親切で誠実」69.7%、「生活レベルの高い先進国」60.3%に集中した。一方で「良くない印象の理由」(2つ回答)は、日本側で「歴史問題などで日本を批判し続ける」が52.1%、韓国側では「歴史を正しく反省していない」76.1%、「独島(竹島の韓国名)をめぐる領土対立」57.5%だった。文化面では相手を評価するが、歴史や領土といった問題になると批判的になるということだ。

日本で拡散する先行きへの悲観論

日韓関係が悪いという認識は両国とも昨年より増え、ほぼ同水準にある(日本40.6%→63.5%、韓国54.8%→66.1%)。一方で日韓関係が「重要だ」という回答は、日本50.9%、韓国84.4%で、どちらでも多数派だった。日本の方が少ないのは、「どちらともいえない/わからない」が27.1%にのぼり、韓国の6%より20ポイントも多いことが影響していそうだ。この項目に限らず、日本人より韓国人の方がはっきりと選択する傾向が強い。

ただ、将来展望などでは日韓両国に温度差が見られた。「良くなっていく」という回答を前年と比較すると、日本が18.3%から12.1%に落ち込んだ一方、韓国では25.1%→23.4%と横ばい。「悪くなっていく」という悲観論は、日本で13.5%→33.8%と大幅に上昇したものの、韓国では13.5%→18.7%と小幅上昇にとどまった。

韓国人に危機感が薄いのは、日韓関係の悪化が韓国にとって切実な問題だという認識が薄れてきているためだと思われる。この連載で繰り返し指摘してきたように、韓国にとって対日関係が重要だという意識はこの30年間で薄れている。だからこそ文在寅政権は、対日関係の悪化に有効な手を打てなくても平気な顔をしていられるのである。そして、これもまた連載で指摘してきたところだが、日韓関係の悪化は構造的変化に伴うものなので両国で政権交代があっても簡単には流れを変えられない。日本の専門家の間で多く語られているこうした認識が、日本の世論に一定の影響を与えた可能性もありそうだ。

日本の「日韓関係が重要」は情緒的

日本の世論が大きく動きやすい背景には、「なぜ日韓関係は重要なのか」という理由の認識も影響しているかもしれない。

この調査には、「日韓関係は重要だ」と答えた人に理由を2つ挙げてもらう項目がある。日本は「隣国だから」(61.5%)と「同じアジアの国として歴史的にも文化的にも深い関係を持つから」(50.3%)が群を抜いて高い。その次にくる「米国の同盟国同士として安全保障上の利益を共有しているから」は22.4%だ。まずは「隣人なんだから」という情緒先行だ。実利が伴っているわけではないから、悪いニュースを見ると「もう嫌だ」となりがちだと考えられる。

これに対して韓国側は「経済面での相互依存関係を強めており共通の利益が多いから」(45.8%)が最多で、「重要な貿易相手だから」(43.7%)、「隣国だから」(40.1%)、「同じアジアの国として歴史的にも文化的にも深い関係を持つから」(39.5%)と続く。日本の重要度が低下しているといっても相対的なものなので、改めて聞かれれば経済面での実利に思いが至るということだろう。

現実には、日韓の経済的な相互依存は深まっているので、実利の面で両国にとって日韓関係は重要だ。日本にとってはさらに、安保面での理由が大きい。こうした点については、「日韓関係の構造的変化を考える」と題して4回の連載に書いたので参照していただきたい。

 この世論調査は、日韓両国の政治家や研究者、ジャーナリストが討議する「日韓未来対話」の材料として実施されている。こうした対話は近年、日本側のフラストレーションを韓国側にぶつける場になっているのだが、多少なりとも韓国側に考えてもらう契機になるので大切だ。今年は6月22日に東京で開かれるので、そこでの討論の内容も何らかの形で報告したい。

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