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好調巨人を支える炭谷銀仁朗が〝FA逆風〟を跳ね返せた理由 - 新田日明 (スポーツライター)

巨人が好調だ。16日の日本ハム戦(札幌ドーム)は7―3で逆転勝ちし、連勝をもぎ取った。これで5カード連続勝ち越しを決め、交流戦でもたつくセ・リーグ首位の広島東洋カープに0・5ゲーム差にまで肉薄。ここまで4カードを終えた交流戦でも負け越しはなく、交流戦優勝も十分に狙える星勘定だ。

(MagentaToolbox/gettyimages)

好調の要因はさまざまあるが、その1つに挙げられるのは昨オフ、埼玉西武ライオンズから国内FA権を行使して新加入した炭谷銀仁朗捕手の存在であろう。交流戦で炭谷は12試合中5試合でスタメンマスクを被り、ベテランらしい好リードで全てチームを勝利に導いている。この日の試合でも立ち上がりから不安定だった先発のエース・菅野智之投手にフォークが効果的と見るや、要所で巧みに配球に取り入れ、日本ハム打線を2回以降から翻弄。これには、いつも強気な相手の主砲・中田翔内野手も試合後に「さすが」と思わず舌を巻いていたほどだった。

この試合で菅野が炭谷とバッテリーを結成したのは公式戦2度目。これまでは同年代の小林誠司捕手と組む「スガコバ」が主軸だったものの、結果が伴わなくなったこともあってチーム方針で一時的に解体させられる形になった。この交流戦から「スガスミ」の新バッテリーになったのは、そういう経緯があるからだ。結果として、このコンビ結成はうまくハマった。腰の違和感から復帰したばかりでまだまだ万全とは言い難いエースを2試合連続で粘り強くリードし、勝ち星を与えたのは炭谷ならではの〝百戦錬磨の妙〟が冴え渡った証とも言える。

そして特筆すべきは打撃だ。ここまでの交流戦において炭谷は17日現在で17打数5安打、打率2割9分4厘、6打点をマーク。特に古巣の西武戦(メットライフドーム)では12日に逆転適時打、13日にも点差を広げる3号3ランを放って連夜の大暴れをやってのけた。さらに、この16日の日本ハム戦でも2回の同点打で打線を勢い付かせ、見事に逆転へと導いた。全試合でスタメンマスクを被ってはいないものの、おそらく炭谷の働きぶりは今のところ〝交流戦裏MVP〟に値するだろう。

ただ思い起こせば、炭谷の巨人入りは逆風の中でのスタートだった。FA宣言し、オレンジ色のYGユニホームに袖を通してからも世間の反応は芳しくなかった。取材していても熱心なG党ですら「獲る必要があったのか」と快く思っていない人が少なくなかったように思えた。

昨季までチームの正捕手を務めていた小林に〝刺激〟を与える存在として白羽の矢が立てられたのが、西武で控えに甘んじていたベテランの炭谷だった。その断を下したのは言うまでもなく今季から4年ぶりに復帰し、編成面も含めた全権を担う原辰徳監督である。とはいえ、その炭谷については打撃に難ありとされる小林と成績もさほど変わらないこともあって、周辺からは「大枚をはたいてFA移籍させる意味はあるのか」「チームの正捕手育成を混乱させるだけではないのか」などと獲得に多くの異論も飛び出していた。

しかも2017年の第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では炭谷、小林ともに侍ジャパン入りしているが、2歳若い小林のほうが正捕手の座をつかんでいる。「粗が残っていても生え抜きの小林を我慢して育成し続けるべきである」との声は根強く、炭谷を獲得すればその流れに逆行するとの指摘も方々からかなり多く耳にした。

巨人入りした炭谷の年俸は推定1億5000万円で3年契約。実に小林の2倍以上の年俸で超破格の待遇で迎え入れられたことで、ネット上では「高過ぎる」との批判的な書き込みも数多く散見された。しかも炭谷のFA移籍によって前所属の西武から巨人は人的補償を要求され、功労者でチームの精神的支柱だった内海哲也投手を失うハメにもなった。チーム内には「正直、銀仁朗さんが来て内海さんがうなくなるのは心中複雑です」と困惑する選手がいたのも紛れもない事実だ。炭谷に「厄介者」というイメージがどんどん膨らむ流れになってしまい、当初は不幸にも〝招かれざる新戦力〟となりつつあったのだ。

ベテランの奥底にある「犠牲的精神」

ところが、いざフタを開けてみれば、今の炭谷は見事に逆境を跳ねのけている。その炭谷、小林、そして2年目の大城卓三もスタメンマスクを日替わりで変わる捕手3人制はそれなりにうまく機能し、チームも明らかに上昇ムードだ。この流れを作り出す特長こそが、プロ14年目のベテランの奥底にある「犠牲的精神」という。批判的な意見が飛び交っていた中、そんな炭谷の獲得にあえて踏み切った原監督の狙いについても交えながら球団関係者は次のように打ち明けた。

「まず一番のストロングポイントとして銀仁朗を獲りに行ったのは、パ・リーグを知り尽くしている捕手という点だ。交流戦を優位に戦えばペナントもVに近づけるというのは各球団のセオリー。そのキーパーソンになるとニラんだから原監督も獲得に動いた。ここまでは、まさに『ズバリ』と言い切れるだろう。

それに加えて小林の能力が高いことは誰もが認めるところだが、正直に言って彼には『慢心癖』がある。その火付け役としても銀仁朗は大きく期待できるというのが、原監督の見立てだろう。実際に小林も出番が昨季より激減しているとはいえ、危機感を覚えながら銀仁朗のベテランの妙技も得ようと必死になっている。

それに当の銀仁朗も自分が原監督から求められている立場をしっかりとわきまえていることも大きい。小林や大城を蹴落としてまで自分1人が正捕手に居座るという姿勢は見せず、後輩たちから聞かれれば何でも答えていくという兄貴分的な考えを貫いている。これは実を言えばかつて西武時代、銀仁朗が若手時代の森友哉(現在の西武正捕手)に捕手のイロハを教えたやり方とまったく一緒。

彼がチームの裏側で、いわば捕手陣のまとめ役に徹しているから今の捕手3人制もうまく機能しているのだろう。これが銀仁朗に以前から『チームスポーツに必要な犠牲的精神がある』と言われる理由だ。そういう意味でも原監督の銀仁朗獲得はかなり狙い通りで、今のところ功を奏していると言えるのではないか」

昨オフに強行されたGの大型補強では、広島東洋カープから移籍して来た丸佳浩外野手が「大成功」と評されて脚光を浴びている。しかし、ここに来て炭谷が「交流戦のキーパーソン」として当初の悪評を払拭しながら暴れまくっていることも見逃してはいけない。 

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