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「100万円貸してくれと言われたら、10万円あげなさい」 西原理恵子の“泥名言”がすごい - 西原 理恵子

 名言の主は、無頼の編集者や勝負師、高知のヤンキーやおばちゃん、実母にわが子。サイバラが出会った(いろんな意味で)どうかしている人たちが放った名言を集めた『洗えば使える泥名言』から「お金の名言」の3本を全文公開!


 私のところにも結構「お金貸して」って人が来るんですよ。それも、断れない人が来ちゃう。幼なじみで一緒にさえないヤンキーやってきた子が、ダンナに殴られて鼻血まみれで裸足で逃げてきて、後ろで子供が2人泣いててとか、そんな電話かかってきたら、ガチャンって切れないじゃん。それで「じゃあ100万」って貸しても、二度と返ってこないですから。点滴1本余分にあげただけで、根本的な解決にもならない。それでもやっぱり貸しちゃいますよね。

 向こうも最初からだます気はないんだろうけど、「いつでも余裕あるときに返してね」って言ってもそれっきり。返したとしてもだいたい半分返すといなくなるね。「半分も返したんだから」っていう小島理論。こっちも請求する気がなくなってきちゃうし。そういう貸し倒れが2000万円ぐらいある。

 お金が返ってこないのもアレだけど、お金を貸したことでその人との縁が切れちゃうのが残念で。100万円で縁切るような友情だったんだとは思わないけど、向こうにしてみたらもう連絡取りづらいしね。

 ……というような話を高須先生にしてて「先生のところは、もっと来るでしょう」と言ったら、「100万円貸してくれと言われたら、10万円あげなさい」と。貸すんじゃなくて、貸してくれという額の10分の1をあげる。で、「その代わり同じように10万円くれる人をあと9人探しなさい。お金をただで受け取るんだから、それぐらいの労働はしましょうよ」というのが高須先生の「10分の1理論」です。

 これだったら友達の縁も切れないし、貸したんじゃなくあげたんだから惜しくない。こりゃいい考えだなと思ったんですけど、そしたら10万円を10回もらいに来る奴がいそうな気がする。それか、「1000万円貸してくれ」って言ってくるか。まあ、そこまでやるなら逆にすごいと思いますけど。

「夢がないから夢を聞かれてもわからない。」

 よく街頭インタビューとかで「宝くじ当たったらどうしますか?」とか「100万円あったら何に使いますか?」とか聞くじゃないですか。そういう感じで、私がまだインタビューに慣れてない頃に途上国に取材に行ったとき、現地の人に「100万円あったら何に使いますか?」みたいなことを聞いたんです。そしたら、「そんなものは持ってないし持つこともないから答えられない」って言われて。子供たちに「将来の夢は?」って聞いても「ない」「わからない」って言うんです。

 それって非常に現実的というか、「将来は宇宙飛行士になりたい」とか夢を持つのは、ものすごく整った環境で愛されていないと無理なんですね。今日の米と味噌に必死なときに、ケーキの上にのったフルーツのことなんか考えられない。貧困のなかでは、希望を持つより諦めることが唯一の希望になる。考えても腹はふくれないから考えない。家族がその日一日食べられるかどうかが最優先で、ほかのことはどうでもよくなっちゃう。

 今は日本でも子供の貧困が問題になってますけど、一日も早く教育と医療は無償になってほしい。少子化とか虐待とか待機児童とか、もう子供に関しては絶望ワードばっかり。

 結局、ジジイが政治やってるから、女子供には冷たい。介護バスは走ってるのにスクールバスはゼロっていうところが多いでしょう。本当は政治家の半分は女性にすべきだと思うんですけどね。今のジジイたちが全員死ぬまでは難しいでしょうけれど。

 もし国会議員の半分が土井たか子だったら、日本の福祉と教育は素晴らしいことになってんじゃないかって思います。歌舞伎町のホストは強制兵役とか。

 近い将来、子供が熱出したら必ずお父さんが会社を休める世の中になってほしいです。

「コンビニってお正月みたいだねえ。」

 これはギャンブルライターの銀玉親方こと山崎一夫さんの言葉です。あの人は高知でもトップクラスに貧しい地区の出身なんですよ。お父さんが本当の山師という、山を買って木を伐採して売ったりする人で、景気がよくなると奥さんを新しいのに取り替えるもんで、きょうだいが何十人もいたらしい。そんなんだから名前のつけ方も雑で、最初の男の子だから一夫で、お姉さんは道で生まれたから道子っていう。今どきのキラキラネームの親に見習わせたいくらいシンプルないい名前だと思いますけどね。

 子供の頃の最高のおやつは焼き芋で、今でも焼き芋見るとつい食べちゃう。そんな山崎さんがコンビニでふと「コンビニってお正月みたいだねぇ」って言ったのが、すごく印象に残ってます。「お米も飲み物もお菓子もこんなにいっぱいあって、お正月みたい」って言われて「ホントだねぇ」って。そこにはかつて一夫くんが欲しかったものが全部あるんですよ。そりゃ盆と正月が一緒に来たようなもんでしょう。

 その言葉を聞いたのはコンビ組んで何年も経ったときで、もう結構いい年の大人になってる。それでもたまに貧しかった子供の頃を思い出すんですね。私もそうですけど、貧乏の記憶ってなかなか消えないんですよ。

 その山師のお父さんが亡くなってお葬式に行ったら、自分とそっくりなエラの張った大きい顔のきょうだいがいっぱい並んでたって。さぞかし壮観だったろうなぁ(笑)。

(西原 理恵子)

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