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“移民のせいで失業”を心配するより、いま検討すべきはロボティクス・オートメーション化による単純労働者の失業インパクト

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ユニバーサル・ベーシック・インカム(最低所得保障)を主張する
米大統領選候補者アンドリュー・ヤン

「ユニバーサル・ベーシック・インカム」については、長年、多くの経済学者や著名人が意見を述べてきた。すべての国民が然るべき生活を送れるよう、一定の収入を保証し、社会の緊張や不安、失業を緩和する必要があると。国民がベーシック・インカムを使うことで、新たな富が生まれ、需要が増大し、ひいては経済成長が促され、公正で安定した社会をつくりだせると。

初期の提唱者にマーティン・ルーサー・キングや新自由主義の経済学者ミルトン・フリードマンがいる。今日では、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグなどシリコンバレーの億万長者、ベンチャー・キャピタリストのマーク・アンドリーセン、民主党(現在は無所属)の上院議員バーニー・サンダースなどが、「ユニバーサル・ベーシック・インカム」への支持を表明している。

「ベンチャー・フォー・アメリカ」の創始者である起業家のアンドリュー・ヤンは、2020年の米大統領選の民主党候補者として、「ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入」を公約に掲げている。 ヤンが指摘するに、2016年の大統領選でトランプが勝利した州はミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン。オートメーションによって400万人分の仕事が失われた地域だ。「ロボットの導入事例が増えるほどに、不満を抱える人たちが増え、彼らがトランプに票を投じるのです」

ヤンの構想では、ユニバーサル・ベーシック・インカムに必要な2兆ドル(米国家予算の約半分)は、新しい付加価値税と、オートメーションで利益を得ている企業への課税でまかなうとしている。だがアメリカでは、労働をしない人が公的資金を受け取るという考えは”社会主義的”とされる。導入までには分厚い文化的な壁が立ちはだかるだろう。

しかしヤンは言う。ベーシック・インカムを導入しなければ、数年もすれば「路上で暴動が起きるでしょう。例えば約100万人いるトラック運転手の94%は高卒の男性、その全員が突然無職になるのですから」

政治的議論の欠如、雇用を脅かすのは「移民」ではなく「ロボット化」

このような状況を踏まえ、いくつかの政治的考察と具体的な提案をしたい。

一点目は、トランプ大統領や過去の栄光にしがみつく政治家たちは皆、この問題について知らんぷりを決め込んでいることだ(実際、この問題が政治的に議論されたことはない)。鉱山や油田の雇用を取り戻そうと叫ぶのは、技術的進歩が多くの仕事を奪っていること、これからもその流れが続くことを認識できていない証拠だ。英国のEU離脱(Brexit)も同じで、現状に不満を持つ人々が結集するのは、政治的議論がなされていないからである。

さらに伝統的な政党(特に左派政党)は、いま我々のいる世界がどうなっているのか、これからどうなっていくのかを明確に説明することもなく、新自由主義的グローバリゼーションの被害者たちの感情に便乗し、しばしば国粋主義的な主張まで掲げてしまっている。

二点目は、「移民問題」が選挙の争点になっているということだ。トランプ大統領は「反移民政策」を掲げて選挙に勝利し、現在もその姿勢は変わらない。ハンガリー、オーストリア、ポーランド、チェコ、スロバキアの政府も、基本的に移民受け入れを拒否している。北欧諸国からフランス、オランダ、ドイツに至るまで、ヨーロッパ全体で「反移民感情」が政府のあり方を特徴づけている。

イタリア総選挙(2018年3月)では、反移民を掲げるマッテオ・サルヴィーニ(右派政党「北部同盟(現在は「同盟」に名称変更)」の党首)から主導権を奪いたい老獪なシルヴィオ・ベルルスコーニ前首相は、自分が勝利した暁には60万人の移民を追放すると公言した。

移民が増えると自国民の仕事や人的資源が奪われると恐れられているが、EUの統計からは異なる事実が示されている。現在ヨーロッパで生活している人口は約7.4億人。そのうち「非ヨーロッパ系住民」の数は5%未満で、不法移民も入れて約3500万人。うち約800万人がアフリカ系、約700万人がアラブ系だ。

どの統計からも、移民の97%以上が完全に社会に溶け込んでおり、往々にして地元住民の仕事を奪うことなどなく、税金も地元住民よりきちんと納めている(もちろん、彼らは自分たちの将来に不安を抱いている)。また、現時点で職に就いていない約230万人の移民は、自らの法的身分の決定を待っている人たちだ。

移民がヨーロッパの人々の仕事をごっそり奪ったとする研究は一つもない。現在の状況は、かつて女性が労働市場に進出したときとよく似ている。この30年で働く女性の数は増え続けているが、だからといって男性の雇用が低下しているわけではない。

「英国のEU離脱(Brexit)」に関する研究からも、移民の受け入れはGDP増につながること、生産性が向上することで世界的な雇用増につながると示されている。だが、私たちはもはや事実に耳を貸さないところまで来てしまっている。その事実が都合のいいものでない限りは…。

では、具体的な提案をしたい。国民の大多数にとって、雇用を脅かすものは「移民」ではなく「ロボット化」であることは明らか。移民のせいで仕事を失った人はいないのだ。そもそもヨーロッパ人がやりたがらない「条件の悪い仕事」だったら話は別かもしれないが。さまざまな運転手業も、心配はいらない。この種の仕事は、数年もすれば時代遅れになるだろうから。しかし、そのための対策や計画は何もなされないだろう。政治は、問題が勃発してからようやく動き始めるのだから。

反移民や大衆政治で不安を煽るのではなく、私たちの社会が直面している真の問題「オートメーション」に目を向けることこそ、より責任ある行動となるのではないだろうか。

最後に付け加えておきたい。
ロボットを導入する人は、そのずば抜けた生産性で利益を得る。そして労働者をある程度リストラしてしまうだろう。彼らはロボットが減価償却されると、人件費が浮いてくる分、利益の100%近くが自分の手元に残ると考えるかもしれない。だが実際は100%とはいかない。なぜなら辞めさせた労働者の年金、税金、健康保険分のコストが浮いたとて、結局彼らを救済するための社会的費用は徴収されるであろうから。利益はせいぜい60%ぐらいであろう。しかし「ユニバーサル・ベーシック・インカム案」ほど費用がかからず、仕組みとしても管理する上でも簡単ではある。それに、機械が人間のために仕事をするという昔ながらの理想郷を一部実現することにもなる。
そろそろ政治的議論を始めようではないか。

By Roberto Savio
Courtesy of Inter Press Service / INSP.ngo

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