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「安倍政権の倒し方を少し大人になって考えよう」政治学者が自戒を込めて語る、リベラルが敗け続ける理由

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BLOGOS編集部

2012年に第2次安倍政権が誕生してから行われた、四度の国政選挙ではいずれも自民党・公明党が圧勝した。この間には反対の声も大きかった「特定秘密保護法」や「共謀罪法」などの法律も成立しているが、それに国会で対抗するには野党の数が全く足りなかった。

「正しい意見」を主張し、賛同する人が一定数存在するのにもかかわらず、なぜ“リベラル”勢力は選挙に勝つことができないのか。5月に上梓した『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)が反響を呼んでいる、専修大学法学部教授の岡田憲治氏は「リベラルは『政治』をしていないから」だと話す。

これまでリベラルが繰り返してきた失敗とは何か、そして次の参議院選挙に向けて今リベラルがすべきことは何か、岡田氏に聞いた。【取材:島村優】

なぜ「正しい」リベラルはひたすら負けるのか

—『なぜリベラルは敗け続けるのか』は政治学者である岡田さんが、自身の経験を踏まえ、リベラルが自民党に連敗し続けるのはなぜかを論じ、どのようにすれば「ちゃんと政治をすることになるか」を綴っています。

岡田さんの言う「リベラル」とは、どのような人たちを指しているのでしょうか?

簡単に言えば、国家や共同体よりも「個人」に重きを置き、それゆえ人間の「多様性」を大切にして、そうなると新しい価値観に寛容となるけれど、その一方で原則的には脆弱な個の人生をギリギリ守るためには国家は、とりわけ経済的に適切な介入をして「ルールなき横暴な資本主義を修正する」ことを良しとする。こういう考え方にシンパサイズされる人ですね。ウヨウヨなさっている方々は、リベラルのことを「非寛容」と言うけれど、それはものを言うときの態度の話であって、主張の内容は全くもってそうじゃないんですね。

弱い立場の個人が「もう何をやってもムダなんだ!」という諦めに陥らずに生きていける社会を維持していこう、つまり「セカンド・チャンスを準備しておこう」という考え方がリベラルです。こういう考え方を持っている人たちには、いわゆる「反安倍」的な人が多いけど、僕の考えるリベラルには自民党の中で安倍さんと距離を取っている人も当然含まれます。田舎で金に困っている人たちが「生活のレベルは自己責任で」なんて言われて自民党に投票しますか?リベラルな政策が必要な人がたくさん自民党や公明党の支持者にはいます。

リベラルを一応そのように定義しておいて、なぜ「個を重んじる」とか「平和を希求する」とか、最近だったら同性婚でもいいけど、そういう価値観を持っている人たちの陣営が、場面が選挙となった時に、下手なやり方でひたすら負け続けるのはなぜなのか?そういう、多くの人たちがモヤモヤしてきたことに言葉を提供したのがこの本なんです。正しいことを言っているはずなのに、なぜ毎回負けるのか?それは「俺たちのサッカー」を続けているのに、試合で負け続けている状態にも似ていると。南米相手でも、中東相手でも、みんな同じ戦い方して、サッカーはしているけど「試合」をちゃんとしていないのです。

—この本の中で岡田さんは、リベラルを指す時に「私たち」「我々」と書いています。

僕自身は、今説明したような立場を標榜する人を応援していて、実際に区議会議員選ではドブ板的な選挙で応援をしています。この本では「なんでリベラルはこんなことができない?」「選挙に勝ちたくないのか?勝ちたいならやれよ」って色々なことを言っているけど、スタートにあるのは、これまでの来し方を振り返って、「ああ、俺ダメだったなぁ」って、自分で失敗を繰り返してきたっていう話をしているんです。それを深く掘り下げれば、色々な風景が見えてくるから。

本の中でも「政治とは友だちを増やす」ことだと書いたけど、自分の経験としても、あることに関して間違ったことを言ってないつもりでも、「そうだよな」って賛同してくれる仲間が増えないことがある。でも、それにはちゃんと理由があるんですよ。実はけっこう簡単なことで。問題の一つは、正しいことを正しいまま言えば、それが相手に伝わるわけじゃない、ということ。「正しいことは必ず伝わる!」って、それでは政治をしていることにならない。でも、そういう政治家がいっぱいいる。特に野党系に。

自分の思いや正しいという確信を純化させて、その確信を強めていくことが政治だと思っている。正しいことをやり続ければ、雨の水が必ず岩に穴を開ける、と信じているんだな。それは思想ならいいんだよ。ビリーフ、つまり信念ね。大事なのはそれをポリティクス(政治)という「行動」にコンバートすることでしょ?それが政治なわけですよ。でも多くのリベラル系の人がその考えを共有していない。真面目だし、考えていることは正しいのに。

参院選の争点は「ゼニカネ」以外ない

—正しいことだけをやっているだけでは選挙には勝てない、と。

枝野さんは今度の参議院選の争点は、パリテ(※)だとか脱原発だと言ってる。パリテも脱原発も正しいよ。僕も区議会選挙の時にパリテを念頭に女性候補を応援したし、子どもの学校でPTA会長をやっているから、どれだけ女性の能力が高くて、それが社会の中にもったいなくも眠っているのかは知っている。女性の有能さに関しては確信のレベルでそう思っていますって。だけど、今度の参議院選で「それを言って勝てるかどうか」という問題は全く別だって、あっちこっちで言いまくってる(笑)。「パリテじゃまた負けるぞ!」って。

※選挙の候補者を男女同数にすると定めたフランスの法律の通称

次の選挙は衆参W選になるにしても参議院選挙だけでも、定数6の東京のような選挙区では、多くの人は有名候補が落選するかどうか、くらいしか興味を持たれていない。それよりも問題は32ある地方の1人区です。25勝7敗くらいで野党が勝たないと、安倍政権のやりたい放題を止めることができずに日本の民主主義は終わりに近づくでしょう。自分たちで金融庁に要求した「老後の生活に2000万円足りない」っていう答申が気に入らないからって、「そんなものはもうない。だから予算委員会で議論する根拠もない」と、完全にジョージ・オーウェル『1984年』の世界ですよ。あるものも「ないとする(いずれ閣議決定するかもしれない)」なんて、ソ連時代の全体主義のようです。SFの世界に突入ですよ。

共同通信社

—こうした事態を前に、本当の勝負の焦点となるところは、どんなところなんですか?

最初にリベラルとは、という話をしたけれど、安倍さんのやっていることは全部その逆でしょう。心の中では「それはいかがなものか」と思っている人は、自民党の中にもいっぱいいるわけですよ。だけど、そこで安倍さんを引きずり下ろすとまた野党になるという恐怖があるから、みんな忖度して黙っている。ゼニも公認も全部官邸に握られているから、社畜ならぬ「党畜」状態です。

「そのうち辞めるんだから、辞めた後で立て直せばいいじゃん」と多くの自民議員は思っているのかもしれない。でも永久総裁の道が着々と開かれんとしているわけ。それに力を与えるのは選挙でしょう。このまま野党がまた下手な喧嘩して、「負けて上等」みたいな馬鹿をやっていると、そのうち選挙自体がなくなるかもしれないですよ。そんなことあるわけない、って思うかもしれないけど、そんなことあるわけないみたいなことが安倍政権の間に連続して起こっているでしょ?こう言う状況を前にして、いつまでも「俺たちのサッカーを貫くって言うかぁ」なんて純粋無垢でいいのか、と。自公に投票している人より野党にした人の方が多いのに(2017年10月の衆院選)!

話を戻すけど、1人区の選挙区では支持政党がない人たちのうち7〜8%が投票行動を変えるだけで、状況は一変するんです。“Winner takes all”、つまり「勝者独占システム」である定数1の選挙区で、1票でも多く獲ればそこを取ることができるわけだから。民主党政権ができた時も、そうやって山崩れが生じたんですよ。

—この重要な1人区で25勝7敗ぐらいになる戦略で選挙戦を戦う必要があると。

そうですよ。ところがその時に「パリテ」って言って、誰に届くの?パリテを支持する人は初めから立憲民主党を応援しているから、そんなことは言わなくていいんだよ。そうではなく、やることは「選挙のことはよくわからない」「ほとんど選挙って行かないし」っていう、「浮遊しつつも潜在的に支持者にさせる可能性のある有権者」、推定1000万人くらいが「野党頑張ってるから、1票入れよう」となるような運動をしなければいけないんだよ。残りの1か月は、それだけをやらないと。オーバー・オールな(総対的な)支持を構築するんじゃないの。移動するだけで選挙結果をひっくり返しちゃう人たちのハートに届く、「あ、これは俺の話をしてんだな」って思える、彼らの不安に寄り添う言葉を使わなきゃダメなんですよ。

そのために、彼らのハートを一番掴むものは何かと言ったら、パリテでも憲法改正でも原発でもないんだよ。それは何だか、もうわかるでしょ?

共同通信社

—『リベ敗け』でも何度も出てきますが、お金ですね。

そう、ゼニカネなんだよ。なんでそんなことが分からないのか。憲法も大事、原発も大事、民主主義も大事、間違ってないよ。でも、それはお腹がいっぱいになってから考えることなの。とりあえず、今回は「安倍さんダメっしょ?でも立憲もねぇ…。どうしようかな、棄権じゃね?」って迷っている人を10%友達にする選挙なの。正しいメッセージではなく、迷ってる10%に届く言葉を考えないとダメなんだよ。それが大人の喧嘩をするってことでしょ?

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