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日産・ケリー前代表取締役が明かした「西川廣人社長の正体」 - 郷原 信郎

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 私が「西川廣人」という人物を初めて目にしたのは、カルロス・ゴーン日産自動車前会長が東京地検特捜部に逮捕された「衝撃のニュース」の直後、日産本社で行われた記者会見の際だった。

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 西川氏は会見の冒頭、ゴーン氏について「社内調査の結果、本人の主導による重大な不正行為が大きく3点あった」と述べ、逮捕容疑となった「実際の報酬よりも減額した金額の有価証券報告書への記載」のほかに、「私的な目的での投資資金の支出」と「私的な目的での経費の支出」を挙げた。

 そして、検察当局に社内調査の結果を報告した経緯を明かし、自らの心情についてこう言い切った。

「『残念』という言葉ではなく、(それを)はるかに越えて強い、『憤り』ということ、そしてやはり私としては、『落胆』ということを強く覚えております」


日産・西川社長 ©文藝春秋

 私を含め、西川氏の記者会見を見たほとんどの人が、日産を経営危機からV字回復させた「国際的経営者カルロス・ゴーン」の下で社長に上り詰めた西川氏が、社内調査で明らかになったゴーン氏の「不正」の内容に驚愕し、検察当局に不正を報告して、会社として捜査に協力する「苦渋の決断」を下したものと受け止めたはずだ。

 ところが、6月10日発売の「文藝春秋」7月号に掲載されたグレッグ・ケリー前代表取締役のインタビュー記事「西川廣人さんに日産社長の資格はない」の内容は、記者会見とは真逆の「西川廣人の正体」を示すものであった。

 ケリー氏の証言によって、それまで徐々に高まっていた西川氏に対する「疑念」の多くが裏付けられることになったのだ。


「文藝春秋」のインタビューに応えたグレッグ・ケリー前代表 ©文藝春秋

西川氏の高額報酬をめぐる「疑念」

 そもそも、私が最初に抱いた疑念は、西川氏の「役員報酬」に関するものだった。

 ゴーン氏が逮捕された2日後の11月21日、日経新聞の一面トップで、虚偽記載された50億円のうち「40億円分は株価連動報酬」と報じられた。

 日産は役員報酬としてストック・アプリシエーション権(SAR)と呼ばれる、株価に連動した報酬制度を導入している。これは、株価があらかじめ決めた価格を上回った場合に、その差額分の報酬を会社から現金で受け取れる権利である。

 日経新聞の記事では、ゴーン氏にSARで支払われた報酬40億円が有価証券報告書に記載されておらず、東京地検特捜部は、その40億円を有価証券報告書に記載すべきだったとしているというのだ。

 私が日産の有価証券報告書でSARについて確認したところ、日経新聞の記事では触れていない「もう一つの疑惑」に気づいた。

 2017年度の「役員報酬」の欄には、ゴーン氏とともに西川社長の報酬が個別開示され、「金銭報酬」が約5億円と記載されている。ところが、SARを示す「株価連動型インセンティブ受領権」という欄は、西川氏もゴーン氏と同じく、「-」。つまり非開示になっているのだ。


筆者・郷原信郎氏 ©文藝春秋

 日経新聞が、ゴーン氏について「SARの金額を記載すべきなのにしていなかった」と指摘したのはこのことだろう。しかし、そうであれば、社長の西川氏も「-」と記載され、金額が開示されていないのはどういうことなのか。

 日経新聞が報じたとおり、ゴーン氏の逮捕容疑である有価証券報告書の役員報酬の虚偽記載がSARに関するものであれば、私は、西川氏のSARの非開示について指摘しようと考えていた。

 ところが、その後、虚偽記載とされたのはSARではなく、「退任後に支払うことが約束された報酬」についてだったという“衝撃の事実”が明らかになった(【ゴーン氏事件についての“衝撃の事実”~“隠蔽役員報酬”は支払われていなかった】)。これによってSARのことは話題から遠ざかることになった。

 しかし、今回の「文藝春秋」の記事によってSARが再び俎上にのることになった。ケリー氏は、西川氏が「SARの行使を一週間ずらすことで大きな額の現金を手にした」という“さらに衝撃の事実”を明かしたのだ。


「文藝春秋」2019年7月号

 ケリー氏の証言によれば、西川氏はSARの金額を決める「行使日」が、2013年5月14日とあらかじめ決まっていたのに、それを約1週間ずらして22日にすることで、4700万円を上積みして、合計1億5000万円もの報酬を受け取ったという。

 ところが、2013年度の有価証券報告書を確認してみると、西川氏のSARによる収入は1500万円と記されている。この食い違いはどういうことだろうか。

 それにしても、西川氏の「金銭報酬」の約5億円だけでも、とてつもなく高額だ。逮捕以降、ゴーン氏の報酬が「年間約20億円」だったことが、「高額報酬」として問題にされたが、「プロの経営者」の国際的な市場水準と比較すると一般的なものに過ぎない。しかし、西川氏の場合、14万人の日産社員の中から社長となった「内部昇格者」だ。その報酬が5億円というのは、他の日本企業の内部昇格の社長と比較して破格に高額だ。

 SARの行使日をずらした2013年度でも、西川氏の「金銭報酬」は1億2,000万円にのぼる。西川氏はそれに飽き足らず、SARの行使日をずらすことでさらに報酬を上積みしたというのだ。

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