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紛争地の人々へ、生きる選択肢を 瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)

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瀬谷ルミ子氏

現在、世界の約20の地域で武力紛争が起こっているといわれている。その中で最も被害を受けているのは、女性や子どもを含む一般の人々だ。幼くして戦争にかり出される少年兵、難民となる人たち……。日本紛争予防センター(JCCP)事務局長の瀬谷ルミ子さん(35)は、紛争が終わったあと、兵士たちから武器を回収し、一般市民として生きていけるように職業訓練や心のケアなどをほどこす「武装解除」の専門家として、被害者を含めた紛争地の人々を支援する活動を続けている。国際社会で日本が求められている役割とは何なのか。現地での取り組みについて話を伺った。(聞き手/シノドス編集部・宮崎直子)

■自らの手で生き方を選べるように

――世界の紛争の現状についてお聞かせください。

瀬谷 「紛争」の定義がここ10年くらいで大きく変わっています。以前は、単に国同士の争いや内戦を指すだけでしたが、最近はテロのように、拠点をもたないネットワーク型の紛争が増えてきています。今までのような「危険な地域に行くと危ない」ものから、「脅威が国境を超えて向こうからやってくる」形に変わっています。アジアの観光地で、日本人が自爆テロの被害にあうといったようなニュースもよく聞かれるようになりました。テロは私たちにとって身近なものとなり、日本も一瞬にして紛争地に変化する脅威のある世界になりつつあります。

同時に、紛争解決の方法も変わってきています。今までは内戦が起こっている地域に行って、政治調停をしたり、被害者を支援したり、元兵士に武装解除や社会復帰のケアをしたりと、ある程度包括的に解決策が考えられていました。しかし、テロの場合は、誰が加害者であり、被害者となりうるかが曖昧です。よって、それに対処する方法も、たとえば若者が不満をもってテロに向かわないような環境をつくるなど、日常の生活レベルでの対策を考えないといけません。

JCCPも元々は、アフガニスタンやカンボジアで地雷除去や武装解除を主にやっていましたが、5年前に私が事務局長になった頃から、現地の住民たちが、自ら紛争の問題解決を進める担い手になるように、「人材育成」と「能力強化」に焦点を当てて活動を行うようになってきています。

戦闘状態が続いている地域は、中東とアフリカに集中しています。シリアでは政権による市民の弾圧が続き、多くの被害者が出ています。また、1年前には、内戦か独立運動か解釈の仕方は曖昧ですが、北アフリアで「アラブの春」が起きました。そんな中、現在、私たちは主にソマリア、ケニア、南スーダン、バルカン地域で、「治安の回復と改善」「経済的・社会的自立の支援」「和解と共存の促進」の3点に重点をおいて活動しています。これらは、現地にニーズがあるにも関わらず、解決するノウハウをもつ専門家が世界的にも不足している分野です。

■紛争で壊れた社会を立て直す

――JCCPの活動についてお聞きしたいと思います。まずは「治安の改善に向けた取り組み」からご説明ください。

瀬谷
 たとえばソマリアでは、国連への治安情勢の分析手法の開発、民兵や武装勢力の登録プロセス開発、現地の住民たち自らが、地域の治安を守るための案件立案ができるような研修立案を行っています。今後、地域によっては、警察も軍もいない環境で自分たちを守れるように自警団を組織したり、伝統的な長老による問題解決をベースにしたコミュニティ裁判制度の創設などが実施されたりという展開が想定されます。

ソマリア中南部は、首都モガディシオを中心に、暫定政府(TFG)を支えるPKOであるアフリカ連合ソマリアミッション(AMISOM)と、イスラム系反政府勢力であるアル・シャバーブとの間で戦闘状態が続いています。

今までこうした地域で治安を回復しようというときは、国家によって武装解除や警察訓練、裁判所の建設などが行われていました。しかし、トップダウンの、国レベルでしか行えない方法では、外国人や政府さえ立ち入れない地域は完全に置き去りにされてしまいます。ソマリアでは住民たちが安全に生きられる地域は極めて限られているため、その現状を変えるための方法を国連とともに考えた結果、この方法にたどりつきました。

また、昨年から東アフリカ全体がここ数十年で最悪の干ばつに見舞われています。この状況は内戦も深く関係していて、無政府状態のソマリアでは、本来政府が行うべき干ばつ対策が一切とられていないため、雨が降ると洪水が起こりやすくなっています。アル・シャバーブによって国際援助機関の干ばつ被害者への活動が妨げられていることもあり、被害の拡大に拍車をかけています。

この干ばつでは、難民となった女性や子どもの中に、逃げる途中や避難先キャンプで性的被害にあう人たちが後を絶たないことも問題の一つとなっています。JCCPはそうした人々への物資配布と心のケアを、今年からはじめています。

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現地NGOへの研修の様子

——「和解をすすめる」ための活動とは。

瀬谷 民族間の紛争が集結して10年が経つマケドニアは、表面的には安定していますが、過去の内戦への否定的な印象が強く残り、互いの民族交流は非常に限られています。最後まで残るのは、心の問題や他の民族への憎しみや心のわだかまりです。そこで、JCCPは、異なる民族の子どもたちが共同で街の清掃や植林活動を行い、民族間の和解を促進する事業を実施してきました。

ケニアもマケドニアと同じ問題を抱えています。4年前に、大統領選挙の後に起きた暴動で、国内避難民となった人たちと、避難先の土地に元から住んでいた人たちとの間で、差別や偏見などの大きな壁がいまだに残されています。そこで、私たちは、彼らが共同でヤギ・羊・鶏などの家畜の飼育を行うことで、経済的に自立しながら相互理解を深められる機会を提供しています。現地で事業を実施するときには、基本的に和解のためとはいいません。和解という言葉すら耳にしたくない人たちが共通の利害や利益を見出し、自然と交流する機会を社会につくることが必要だからです。

——若者への啓発・職業訓練にも力を入れていますね。

瀬谷 ケニアの暴動で、最も被害を受けた地域はスラム街でした。貧困層が住んでいるので、それだけ社会的不満は大きくなります。教育を受けてない人が多く、新聞などから複数の情報を精査できないので、政治家や権力者がきて「君たちが貧しいのはあの民族のせいだ、彼らを倒せば君たちは幸せになれる」といわれると、その情報源のみを信じてしまうんですね。結果、民族は違えど友達同士だった人たちも争いあい、約一ヶ月の間に1000人が亡くなり、30万人以上が避難民となる事態になりました。今年ケニアで選挙が行われますが、また同じような暴動が起きるのではないかと危惧しています。

私たちは、ケニアのスラム街に住む若者のグループを、この3年間訓練してきました。彼らは元々、ボランティアでスラム街のごみ拾いをやっていました。コミュニティのために何かをやろうとしても、学校に行けるわけでもなく、スキルをもっていない彼らができることは、唯一ゴミ拾いだけでした。私たちは、彼らに住民たちに対して心のケアができるようになるための研修を行いました。専門的スキルを提供し、ボランティアで住民からの相談を受けてもらうようにしました。

最初は給料がほしいといわれましたが、「あくまでこれはあなたたちのコミュニティの問題であって、最終的にはあなたたちが自分でどうにかしなければならない問題。だから、私たちは必要なスキルを提供するだけです」ということを根気強く説得しました。「コミュニティのために」という気持ちがないところに、外部の人が給与まで与えてしまったら、私たちがいなくなれば活動は終わってしまいます。

最終的に彼らは、この3年間で、基本的な心のケアから薬物中毒のカウンセリングまでできるようになりました。住民から頼られる存在になったこと誇りに思うようになってきています。彼ら自身も自尊心が回復され、NGOを立ち上げたり、専門家として他の団体で活躍したりしています。

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スーダンの現地警察と

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