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米、中国の膨張を抑える決意

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古森義久氏 ©Japan In-depth編集部

Japan In-depth 編集部(小俣帆南、石田桃子、高橋十詠)

【まとめ】

・米国が仕掛ける高関税は、中国に特定の行動を止めさせる為の手段。

・中国の膨張は、米国が本来掲げてきた価値観に真正面から反する。

・米中貿易戦争は長引き、日本の対中取引や投資は減っていくだろう。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46298でお読みください。】

2019年6月5日、ジャーナリストで麗澤大学特別教授の古森義久氏を講師に招きJapan In-depthセミナーが開かれた。テーマは『激突米中、その行き着く先は?』。

激化の一途をたどる米中貿易戦争の背景は如何なるものなのか?経済上の摩擦のみならず、覇権をかけた米中国家間の取引の現状は?『新冷戦』とも呼ばれる米中関係は今、どういう状況にあるのか?ワシントン・北京など海外特派員として30数年のキャリアを持つ古森氏が今後の米中関係について分析した。

■ 米中貿易戦争の本質

はじめに古森氏は「米中関係とは貿易戦争だけを指すのではない」と述べ、貿易戦争の激化だけに目が向けられていることに違和感を示した。「世界は今、目に見え、肌で感じられる経済の指針だけで米中の対立を見ている」と指摘し、「これは違う」と改めて主張。「米中関係は関税だけではない」「経済の対立は原因ではなく結果」であると述べた。

さらに「米中の争いだけではなく、全世界の中での中国問題。中国という国がこの10年20年の間に色々な形で世界を変え始めた」とし、実際、1989年の中国のGDPは今のGDPの35分の1程だったと指摘。日本のGDPは同じ30年の間に1.5倍程にしかなっていないことと比較すると、35倍にまで膨れ上がった中国の経済成長は著しい。

■ トランプ政権の対中姿勢

古森氏は「2016年の大統領選挙中、トランプ氏が外国に関連する問題の中で最初に提起したのが中国についてだった。アメリカの膨大な対中貿易赤字は、中国側の不公正な経済のやり方によるものであり、これを正す、と公約で謳った」と述べた。さらに、「アメリカの国政レベルでは、対中政策というのは、超党派とのコンセンサスが出来ている唯一の事例」だと指摘。トランプ政権だけでなくアメリカ全体で、対中政策が最重要課題の一つと認識されていることを示した。

アメリカが中国からの輸入製品に高関税を課している背景について古森氏は、「アメリカの目的はただ関税を上げることではない」と述べ、「アメリカが仕掛けてきた高関税は、中国に特定の行動を止めさせるための手段。だから、中国がアメリカからの要求に納得すれば、理論的には関税の引き上げは無くなる」との見方を示した。前述したように、経済の対立は原因ではなく結果なのだ。

では、アメリカが中国に求めることとは何か。

■ 経済活動に関する問題

第一に、「中国政府の外国企業に対する中国国内での扱い方」がある。古森氏は、中国国内で活動する外国企業の現状について、「例えば日本企業が中国国内で生産活動をする際は、中国企業との合併、合弁企業にしなくてはならない。これが義務付けられている」と指摘。また、「中国企業の中には共産党の委員会があって、『書記』が会社の会長や社長よりも実権を持つ。これは他の市場経済の国では考えられない特殊なこと」だと述べた。

古森氏は続けて『乱収金』の存在にも言及。「その土地の共産党委員会、場合によっては幹部個人にお金を払わせられる。貧困格差をなくすなど色々名目はつけているが、これは正規の金ではない」と述べ、「外国企業が市場に参入する際、中国の国内企業に対しては課せられない制限やハンデを課せられる」と現状を分析。その制限を取り払うなど、外国企業に対する扱い方を見直すことが求められているとの考えを示した。

第二には「知的所有権違反」を挙げた。古森氏は「アメリカ企業の映画や音楽などの海賊版が売られている。この状況を打破することが、アメリカ企業の最も顕著な要求だった」と分析。中国国内の現状については、「中国の独特の文化として『模造品は悪いものではない』という認識がある」とも述べた。

第三に、「中国の国家が民間企業に補助金を与えている」ことを指摘。この現状について「補助金はWTOの規則に違反する」と述べ、その理由として「市場経済を大前提として、世界の貿易が組み立てられている」と、中国国家の行動は市場経済の仕組みに反するとの見方を示した。更に「2001年からアメリカはこの状況を変えろと要求し続けている。トランプ政権は法律で国から企業への補助金を制限するとの合意を取り付けた上で、中国側から法律の草案も送られてきていた。それを取りやめた中国側に抗議する形で、トランプ大統領は関税の引き上げを決定した」と一連の流れを説明した。

▲画像 古森義久氏 ©Japan In-depth編集部

■ 中国膨張への懸念

2018年10月4日はペンス副大統領が、トランプ大統領と最も近い機関とされているハドソン研究所で演説。演説の内容について古森氏は以下のように要約。「中国の膨張の仕方は、アメリカの国益を害するだけではなく、民主主義や法の統治などアメリカが本来掲げてきた価値観に正面から反する。アメリカが中心となって築いてきた、国際連合を始めとした戦後の国際秩序を根底から崩そうとしているのが中国。戦後の国際秩序を現状維持しようとしているのがアメリカで、その国際秩序を打破しようとしているのが中国。今の米中激突は、世界全体の在り方を左右することになる」。続けて、「中国共産党政権が、国内の独裁を強めながら、外に対しても国家の全機能を上げてアメリカに挑戦。そしてアメリカの国内政治にまで干渉してきた。また中国の膨張は、アジア太平洋地域の他の主権国家の主権を脅かす。そういうゼロサムゲームの膨張を中国は繰り返している」とも述べた。

さらにペンス副大統領の演説内では、中国のマスコミについても言及したと言う。古森氏によればペンス副大統領は、「中国中央テレビと新華社通信は、マスコミではない。政府のプロパガンダ機関であって、政治工作をしている組織。マスコミとして扱わない。外国の代理工作人であるので、その活動をアメリカの司法省に届け出なければならない」とまで言い始めた。これを踏まえて古森氏は「これだけ険悪な状況になっている」と分析したうえで、その背景には関与政策の存在を挙げた。

■ 対中政策の変遷

1979年にアメリカと中国は国交を正常化した。「国交正常化以降のアメリカの対中政策を一言で表すと『関与政策』。1979年当時、アメリカに比べて中国は弱かった。基本的な価値観も違う。でもその価値観の違いを飲み込んだ上で、アメリカは中国を強く豊かにしていこうと決めた」と、国交正常化時の米中関係を分析。このアメリカの姿勢を支えた最大の柱にソ連を挙げ、「1979年はソ連がアフガニスタンに攻め込んだ年。中国とソ連は同じ共産主義でありながら対立していた。アメリカにとって、敵の敵は友つまりアメリカには、中国を強くして、ソ連を抑えたい思惑があった」と述べた。

蜜月だった米中関係が崩れたのは、1989年の天安門事件。今月4日は天安門事件からちょうど30年だった。アメリカ国内では、中国政府を非難し情報開示を求めるセミナーなども開かれたと言う。古森氏は「天安門事件をきっかけに、関与政策は間違っていた、とアメリカ側は考えるようになった。中国を豊かにすれば国際秩序の中に中国が進出するようになり、中国国内でも民主化が進むと考えていた。しかしそれは誤りだったということをアメリカに印象付けた事例」と、天安門事件事件が与えたアメリカへの衝撃を分析。

また古森氏は、近年の中国では、共産党政権に批判的な勢力への弾圧が強化され、習近平国家主席の任期が無期限になったことも指摘。これらの経緯を踏まえて、トランプ政権は関与政権から舵を切っているのだとの見解を示した。

▲画像 古森義久氏 ©Japan In-depth編集部

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