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なぜ学校現場と教育委員会はいじめを放置する?元教員と”いじめ探偵”が指摘する隠蔽のメカニズム

「けられた。なぐられた。おされた」。大阪府吹田市の小学校で1年半にわたっていじめを受け続けた児童のSOSは担任の教師に放置され、教育委員会にも届かなかった。

市教委によると、現在小学校5年生の女子児童は1年生から3年生の間、5人の同級生から蹴られる、傘で叩かれる、トイレに閉じ込められるなどのいじめを受けた。女子児童は左足を骨折、さらにストレスによる視力障害を負ったという。

きのう会見を開いた原田勝教育長は「被害に遭われましたお子様、ご家族に多大なご負担をおかけしたことを、教育委員会を代表して、心よりお詫び申し上げる」と謝罪。中井建志参事は「(担任教師に)いじめに対する認識が甘かったというふうに認識している」「本来であれば学校として保管しなければならないところではあったが、学校の体制としていじめのアンケートに関して保管するという規定がなかったために破棄していた」と説明した。

報告によれば、当時の担任は女子児童の訴えを聞かず、他の教員などへの報告もしなかったといい、保護者に対しても「いじめのようなことがあったのは知らなかった」と話したという。さらに学校側はアンケートを一部破棄、保護者が訴え続けた結果ようやく設置された第三者委員会でいじめが認められた。

学校でいじめが発生した場合、一般的なフローとして、まず被害者、加害者へのヒアリングを行い学年主任や生徒指導主任へ報告、緊急学年会議で対応の検討をする。その後、被害者・加害者の保護者と面会する。さらに同学年の担任教師と生徒指導教師全員による会議を開き、学級会や緊急学年集会でも問題を取り上げる。そして被害者生徒と加害者生徒を同席させて話し合いを行うという。

中学・高校教員の経験を持つライターの末次鴻子氏は「実は現場の担任には権限がなく、学年主任、中高であれば生徒指導に相談し、レジュメを作る。学年主任、教務主任、校長の判断や動きが早ければスムーズにいくが、必ずしもそうではない。それから加害者・被害者双方の生徒や親御さんとお話しをする」と話す。

「自分が担任をしているクラスでいじめが発生した場合、すぐ対応するのが当たり前だ。しかしクラスでいじめが起きたということ自体、言い方は悪いが担任の評価のマイナスになるということが現実的にはある。また、対応の過程で"こうした方がいい"ということもあまり言えなかったし、"転校したほうが良いよ"と言って怒られたこともあった。この学校はダメだと言っているのと一緒になるので、言ってはいけないことだからだ。

また、同じ学年であっても他のクラスの担任に口出しはできなかった。"あの子、いじめられているよ"と言ったことがあったが、"放っておいて。私の仕事に落ち度があると言いたいのか"と返ってきた。そもそも教員は日々の業務が多く、自慢するわけではないが、私は生徒の声を逐一拾って対応しようと頑張っていたが、逆にそのことによって病気を発症してしまい、退職した」。

その上で末次氏は「今回のケースでは、途中で担任が何度か変わっているが、引き継ぎが上手くいっていないと、クラス作りを一から始めなければいけない。その仲でいじめへの対応も一度ゼロになり、それからもう再び書類を作ったりしているうちに、すぐ2、3か月が経ってしまう」と明かした。

こうした現状について慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「僕は両親も妹も学校の先生だが、システム上は学年主任がいても、結局20人、30人もの児童の面倒を一人で見なければならないというのは本当に辛い労働だと思う。とくにいじめ問題では人間力も必要になってくる。難しく責任が大きい業務の割に先生の質がバラバラだという問題もある」と指摘する。

末次氏も「教員のフォローになってしまうが、新任の時点ではリーダーシップがある方ばかりではないし、いじめられた経験のない優等生のような人がほとんど。だからベテランの先生がもう少し指導をしてあげる機会が必要だと思う。海外では小学校のレベルから担任制を止めて、授業の度にクラスを移動するという仕組みを取っている国もある。思い切って今の担任制をやめたり、学校カウンセラーのようにいじめ対策担当の先生を置いたりすることも必要だと思う」と話した。

"いじめ探偵"としてもしられるT.I.U総合探偵社代表の阿部泰尚氏は、ICレコーダーや超小型カメラなどを用いて実態把握や加害者の身元調査、証人探しを通じて、事態の改善に協力してきた。

阿部氏は「私はいじめ相談を受け付けるNPO法人ユースガーディアンの代表も務めているが、学校側が"子どものけんか"のように言うケースは多く、証拠を出しても認めないケースもある。また、アンケートで証言が集まっていたとしても、教育委員会や第三者委員会のレベルでそれを無視したというケースもある。どちらかというと現状では隠蔽を暴くのがメインの活動になってしまっている」と話す。

「証言集めの聞き込みの仲で保護者や児童・生徒の中に"いじめはよくないな"という雰囲気ができあがってくると、自然と解消の方に向かうこともある。しかし今回のケースはどこかで"これはいじめだよ"とストップする存在がなく、そういう教育も学校が放棄してきたということ。脅迫をして教員に訴えさせないようにするという、深すぎるいじめを解消するのは難しいと思う」。

ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「閉鎖された狭い空間では必ずいじめは起きる。そこに風穴を開け、外の世界とつながることがすごく大事だと思う。親や先生、同級生、知人ではなく、全く知らない人の方が相談しやすいだろうし、LINEのような閉じられた場所ではなく、いっそTwitterなどで有名人に"いじめられている"と匿名で訴えた方がまだ突破口があるのではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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