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「正論オジサン」とゴミ屋敷住人の酷似点

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三重県松阪市の「正論オジサン」が話題だ。自称「89歳の法務省OB」。駅前商店街で歩道にはみ出した看板や自転車などを無断で撤去し、店に猛烈なクレームを入れる。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「『正論オジサン』が“私刑”を実行する心理の裏には、ゴミ屋敷の住人と似た“欲求“があるのかもしれない。現代人は『正論オジサン』のような人物と向き合うコミュ力武装が必要だ」という――。

JR松阪駅(三重県松阪市)。正論オジサンはこの近くの商店街で自主的にパトロールしている=2013年2月14日(写真=時事通信フォト)

■自称89歳の法務省OB「正論オジサン」は是か非か

世の中には「不機嫌」があふれかえっている。

とりわけその不機嫌ぶりが取りざたされるのが、街中の高齢男性だ。「暴走老人」といった言葉も登場し、その言動をめぐって、「炎上騒ぎ」が起きることもある。

最近、各局の情報番組がこぞって取り上げているのが、三重県松阪市の「正論オジサン」だ。男性は自称89歳。松阪市の駅前商店街に毎日現れ、歩道に1センチでもはみ出した看板やのぼりの土台、自転車などを無断で店の中に押し込め、お店の人間に猛烈なクレームを入れる。時には看板やのぼりを倒したり、壊したり、切ったりすることもあるという。

この「正論オジサン」の熱心な活動により、地元の観光協会が作った松阪牛の看板も、歩行者の邪魔にならない場所に置かれていたのぼりやプランター、ベンチなども1ミリの狂いもなく、「敷地内に」取り込まざるを得なくなった。遠目からは、店が開いているようには見えず、一帯はシャッター商店街化し、売り上げは激減、休業に追い込まれた店もあるそうだ。

法務省に勤めていたと名乗るこの男性は、テレビ番組の取材に対して「法律に基づいてやっている」「年寄りがけがをしたら危ない」と話していた。どうやら自分自身を「法の執行人」であると信じて、こうした行為に及んでいるようだ。

■増えるモラルポリス、マナーポリスの嫌な感じ

「正論オジサン」の主張そのものは間違っているわけではない。

しかし、一分の隙も余白も許さず、鉄壁の「モラル」を振りかざし、威嚇や破壊行為にまでエスカレートするやり方は明らかに度を越している。「女のくせに」などと言葉荒く、執拗に文句をつけ、詰め寄り、モノまで壊すその態度に、商店街の人もほとほと嫌気を起こしているようで、やり取りの映像を見ると、売り言葉に買い言葉の「対立」が見て取れる。

こうした「モラルポリス」は、ちょっとしたマナーの乱れも許さない「マナーポリス」と同様に増えているようだ。正義感をもつことは大事だが、「暴走した正義感」は社会の「余白」や「あそび」を奪い、ますます世間を息苦しいものにしていく。

■正論・異論・暴論オジサンは「俺の話を聞けー!」と心で叫ぶ

不機嫌なオジサンの類型としては、他にも事例がある。

たとえば、人が何か言うと必ず文句をつける「異論オジサン」だ。代案は特にないのに、とにかく何かにつけてダメ出しをする。このタイプは読者の皆さんの周りにもいるのではないか。

もうひとつが、「暴論オジサン」だ。6月10日、自宅の近くで送迎バスを待つ幼稚園児の声がうるさいと、腹を立て、園児の自宅の郵便受けに、「子どもたちを静かにさせろ。出来なければ何があっても文句は言うな」などと書いた脅迫文を入れたという容疑で東京・足立の71歳の男性が逮捕された。

正論、異論、暴論……。こうしたオジサンたちの共通点は何か。

それは「俺の話を聞けー!」と言う魂の叫びではないだろうか。拙著『世界一孤独な日本のオジサン』で触れたように、退職後の高齢男性の多くは、「自己承認欲求」というモンスターと格闘している。

日本の組織は極端なタテ社会であり、年を重ねれば重ねるほど、表向きは敬意を払われるようになる。その中で、彼ら問題オジサンたちのデフォルトとなっているのが、上下関係に基づく「マウンティング」のコミュニケーションである。

仕事をしているうちは、その存在も功績も認められる。だが退職すれば、自分の話に耳を傾けてくれる部下も後輩もいなくなり、絶望的な寂寥感にとらわれる。「肩書」に基づくタテのコミュニケーションしかしてこなかったために、友人や仲間を作るヨコのコミュニケーションのやり方がわからない。

「誰からも相手にされない」「認められない」「達成感がない」「まるで透明人間になったようなむなしさを覚える」……。行き場のない「自己承認欲求」を持て余し、苦しむ男性は少なくない。

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