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政権に不都合な"年金報告書"が出てきた訳

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A4で51ページ。麻生財務相は「読んでない」

院選を前にして、安倍政権が1本の報告書に慌てふためいている。「年金だけでは老後に2000万円不足する」と書かれた金融庁審議会の報告書のことだ。「消えた年金」問題で2007年の参院選で惨敗した安倍晋三首相にとって、「年金」は鬼門。それだけに逆風の初期消火に必死になっている。

記者会見に臨む菅義偉官房長官=6月13日、首相官邸(写真=時事通信フォト)

問題の報告書を簡単に紹介しておこう。金融庁の金融審議会・市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」というもの。ことし6月3日に公表されており、6月14日現在、金融庁のウェブサイトからダウンロードできる。

A4で51ページあるが、分かりやすい文章で書いてあるので、だれでも20~30分あれば読むことができるはずだ。麻生太郎副総理兼財務相は10日の参院決算委員会で立憲民主党の蓮舫氏から「報告書を読んでいますか」と尋ねられ「全体を読んでいるわけではありません」と答えているが、それほど難しい内容ではない。

「現状整理」「基本的な視点及び考え方」「考えられる対応」の3編に分かれており、問題の記述は主に最初の「現状整理」のところに出てくる。高齢夫妻の実収入は実支出と比べて月平均で約5万円少ないことを指摘した上で「20年で1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要になる」などと表記されている。

「100年安心」の誤解を放置してきたツケ

政府は日本の年金制度を「100年安心」と説明してきた。人生100年時代が現実味を帯びてきた今、年金で安定的な老後を期待していた人たちにとっては、まさに「年寄りに冷や水」を強いられるようなリポート。国民が怒るのも当然だ。

政府はもともと「年金だけで老後は安心」と説明してきたわけではない。ただ「年金だけでは足りない」と真正面から説明するのを避けてきた経緯がある。「100年安心」とは「100年間制度が維持される」という意味だが、「100歳まで生活するのに十分な年金をもらえる」という意味だと理解する人も多いだろう。政府はそれを積極的に正そうとはしなかった。

それにしても、あえて明らかにしてこなかった「不都合な真実」を、この報告書ではなぜ明記してしまったのか。

報告書の狙いは「高齢者の貯蓄を投資に振り向けたい」

この報告書は、年金制度そのものについて書いたものではない。金融庁が、高齢者の貯蓄を投資に振り向けようという意図を持って書かれたものだ。

そのためには「今のままではお金が足りないので投資に振り向けて増やしたほうがいい」という方向に誘導したい。だから「足りない」という前提を、てらいもなく書いたのだろう。

2012年に首相に返り咲いて以来、安倍氏は6年半を超える長期政権を謳歌しているが、2006年に最初の首相に就任した時は1年の短命で終わってしまっている。「消えた年金」が主要因として07年の参院選で大敗したのが辞任の引き金となった。

「消えた年金」とは、社会保険庁のずさんな事務管理にともない、記録のない年金が次々に見つかった問題。この問題を追及した民主党(当時)の長妻昭氏は後に「ミスター年金」と呼ばれるようになった。

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