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2018年大阪府北部地震で顕在化した「出勤困難」という現象

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出勤困難者の対策

 さてそれでは,出勤困難者の対策として,今後どのような対応が必要になりそうでしょうか.このためには,大量の出勤困難者がどのような問題をもたらすかについて考える必要がありますが,筆者は現段階では大きく2つの問題に分けられるのではと考えております.

 まず考えられる点は企業の災害対応や事業継続に与える影響です.これは役所やマスメディア,インフラ関連会社などでは重要な課題と考えられますし,近年は役所の業務を民間企業に外部委託するケースも増えています.したがって災害対応に必要な人員は,ますます増加および多様になっている可能性もあります.最近ではこのような災害対応・事業継続の目的で,一部社員を会社の近くに住んでもらうよう推進している企業もあるようで,このような対応が参考となるかもしれません.

 もう一方の問題は,帰宅困難者がもたらす問題と同様の課題です.つまり大量の出勤者困難者が徒歩や自動車で移動することによって,歩道や車道が渋滞する問題です.これは企業の事業継続に関する問題と表裏一体とも言えますが,まさに大都市問題として社会全体で解決をはかるべきものでしょう.確かに,大阪府北部地震は最大震度6弱の揺れであり,南海トラフ巨大地震や首都直下地震とは大きく被害の様相が異なる災害です.ですので,南海トラフ巨大地震など震度6強あるいは震度7の揺れが発生したときに,大阪府北部地震時と同じように多くの人が「がんばって」会社に行こうとするとは限りません.

しかしながら先述の筆者らの調査によれば,大阪府北部地震が発生したときに「この地震はたいしたことはないと思った」と回答している人はわずか15%程度で,「南海トラフ巨大地震が発生したのかと思った」が17%,「阪神淡路大震災規模の大変な災害が起きているのではと思った」が29%,「大きな地震の前触れ、前震ではないかと思った」が35%と回答が得られており,直後に「たいしたことがない災害」と判断していた人はそこまで多くない状況でした.とすると,震度6強や震度7のような状況下,休んでも特に業務に支障が出ない業種の人であっても,それなりの人数が無理な出勤を選択してしまうかもしれません.確かに私も,大規模地震が発生したらついつい心配で勤務先の研究室に向かってしまうような気がします.

 特に一番気になる点は車道における渋滞です.原則として徒歩で帰宅するか,あるいは家族と連絡を取って迎えに来てもらうしかない帰宅困難者とは異なり,出勤困難者は自動車で出勤することが可能な人も多いと思われます.今回のケースでは,2割程度が交通手段を自動車に切り替えたこと(+高速道路からの車両流入)で車道における渋滞が発生したことから,出勤困難者の数が帰宅困難者よりわずかであっても,その一部が自動車で「がんばって出勤」してしまうと,都心部の車道で深刻な渋滞が発生する可能性も考えられます.

すると救急車や消防車などの災害対応に従事する車両が影響を受けてしまい,助けられる命が助けられず,消せるべき火災が消せない可能性も否定できません.産経新聞によれば,大阪市は2018年9月13日に民間企業などに対して出勤や帰宅の抑制を要請する目的で,災害モード宣言の整備を進める方針を示したそうですが(参考文献4),このような対応が他都市でも参考になるかもしれません.

出勤困難者問題を考える

 結論として大阪府北部地震で顕在化した出勤困難者問題は,行政が「災害時はできるだけ出勤させない」ことを広く啓発することによって,企業にその業種にあった形で地震時の出勤マニュアルを事前に定めてもらい,特に車の利用はできる限り避けてもらいつつも,一方で車道の混雑を緩和させる目的で適切な交通規制を行うという対応が原則になるのではないかと考えられます.

さらにこれをうけ,われわれ個人や企業の心構えとしては,災害時にがんばって会社に行っても,むしろ都市全体の災害対応や復旧を遅くする可能性があるということを認識しておくべきかもしれません.もちろんこのあたりは業種にもよるところが難しいのですが,出勤困難も帰宅困難も,災害時は無理して動かず,その場で災害対応の手助けをすることが重要で,さらには無理して出勤させない企業内のルール作りや,無理して帰ることのないように自宅を安全にすることなども効果的と考えます.

 このような大規模災害時の歩道過密・車道渋滞現象は,過剰な集積およびいびつな職住分布構造を有する大都市の宿命といえるかもしれません.平日の朝から夕方までに電車が止まる程度以上の外力が発生すれば,このような現象が発生する可能性は高いわけですから,二次災害のきっかけになるかどうかはともかく,「近い将来再発しやすい」現象とも言えそうです.今回の教訓を踏まえると,出勤困難者問題は「大都市問題」という意味においては帰宅困難者問題ほど深刻ではないにしろ,大都市に住み暮らす人にとってはそれなりに意識しておいてもよい問題なのではないかと考えています.

参考文献

1) 総務省消防庁:大阪府北部を震源とする地震による被害及び消防機関等の対応状況(第31報).

2) 読売新聞:「大阪知事も足止め、地震で渋滞7倍…一般道流入」,2018.09.17.

3) 時事通信:「通勤直撃、交通まひ 渋滞で復旧遅れ、負の連鎖」,2018.06.24.

4) 産経新聞:「大阪市が「非常事態宣言」制度化検討 災害時に出社・帰宅抑制を企業に要請」,2018.09.14.

注)2019.06.13 一部誤字などを修正しました.

※Yahoo!ニュースからの転載

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