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FacebookのIPOをどう戦うべきか?

アメリカの投資コミュニティはFacebookの新規株式公開(IPO)の話題で持ち切りになっています。

そこで今日は個人投資家の立場から:

Facebookに投資すべきかどうか?
若し投資するなら、どのタイミングで投資すべきか?
FacebookのIPOの他の銘柄に与える影響



などについて自分の考えている事を書きます。

結論から言えば:

Facebookに投資すべきか? → わからない
若し投資するなら、どのタイミングで投資すべきか? → わからない(でも
僕なら寄りつきで飛び乗ることはしない)
FacebookのIPOの他の銘柄に与える影響 → FBの初値レンジが切り上がれば、他のドットコム株を短期トレードするチャンスはある



です。

【取引開始後から買いに行く場面】
まずIPOそのもので、我々個人投資家がFacebook株にありつける確率はほぼゼロです。なるほど、改訂された最新の売出し目論見書ではTDアメリトレードなどのネット証券もセリング・グループ(=取り扱い証券会社)に加えられていますが、彼らに回って来る玉は僅かの筈です。

従って今日はアフター・マーケット、つまりディールが実際にナスダックで取引開始された後でFacebookを買いに行くシナリオだけに限定して議論します。

【相場は水もの、FBの場合は特にそう】
最初に断っておくと、相場は水ものです。だから何が起きてもおかしくないし、「これをやれば、必ず勝てる」という戦法はとりわけIPOの場合、ありません

しかもFacebookの場合、売出し金額ベースで通常のIPOの50倍から100倍近い規模です。

すると普段成功している「お定まりのパターン」を発行企業や引受主幹事が踏襲したところで、それがいつも通りの効果を生み出すとは必ずしも言えないという事です。

【FBのIPOには品薄感があるか?】
たとえば今回のFBの売出しはディール後の発行済み株式数の15%に相当する株数です。通常であれば、この程度の比率であれば浮動玉(free float=市場に自由に流通する株)が少ないと言う理由から、投資家の間に品薄感が出ます。品薄感が出れば、主幹事はある程度相場を自由に煽ってゆく事が出来るのです。

よくIPOの値決め価格(=その値段で新規上場会社の株を投資家に配る、オリジナルの値段)に比べて、上場後初値が+50%とか+100%で開く場合がありますが、そのようなシナリオになる一因はこの品薄感にあります。

ところがFBの場合、超大型IPOなので、調達金額は初値レンジの上限だと仮に想定した場合、118.09億ドルにもなります。

それだけの金額のディールをいきなり+50%とか+100%というカタチで持ち上げるためには、いかにFacebookが名前の通った企業であっても至難の業なのです。通常の、せいぜい1.5億ドル程度のディールをヨイショするのとはわけが違うのです。

【初値設定は、、、八百長なのか?】
この困難さは主幹事証券やFBの側でも重々承知しています。だからこそ、今回のIPOは$28~$35という、「低い値段」でマーケティングされることになったのです。

いま$28~$35が「低い値段」だと言いましたが、なにをもって「低い」と判断しているのか?と読者は疑問に思うでしょう。

この場合、直近の未公開株取引市場での終値に比べて「低い」と言っているのです。米国ではシェアーズポストやセカンドマーケットという名前の、未公開株の私設市場があります。これは公開市場(public market)の埒外で活動している、規制外の市場です。そのため敷居が極めて高くなっており、一般の投資家は入れません。(若し皆さんに「未公開株があります」式の勧誘が来た場合は、ほぼ詐欺だと疑って間違いないでしょう。その手のウマい話に乗らないように気をつけて下さい)

さて、直近の未公開株取引市場ではFBは$44まで付けています。(取引は「まばら」ですので現在の水準については正確なことはわかりません)

すると直近の流通市場での値段が$44なのに、なぜ$28~$35という20%~36%ものディスカウントで値段でマーケティングをはじめるのだ?という素朴な疑問が生じるわけです。

その一つの理由は上述の未公開株取引市場の流動性の低さ(=取引高の少なさ)によります。つまり未公開株取引市場はそもそもたまにしか「出物」が無いため、自ずと買い手はその希少なチャンスに対してプレミアムを支払うということです。

ひとたびFBがナスダックで自由に取引されるようになれば、この飢餓感は解消されるわけですから、プレミアムが組み込まれてしまっている$44と同値でIPOのマーケティングをするわけには行かないのです。

それを断った上で、飢餓感からくるプレミアムがFB株の価値の20%~36%にも相当するか?と言われれば、それは判断に苦しみます。一部のアナリストが主張するように「ディスカウントが大きすぎじゃないの?」という気も、確かにします。

主幹事証券の立場からすれば、初値レンジを安くしておけば、マーケティングをキックオフした後で「やっぱり需要が多かったので、初値レンジを切り上げます」ということは簡単にできるわけです。また投資家としても不人気なディールに付き合わされるのはイヤですから、自分が応募するディールがホットになることを望んでいます。初値レンジの切り上げは従って皆が望む事なのです。

だからこそ八百長野球のようにわざと低い初値レンジを採用したのだと思います。

【FBの初値レンジの設定と第1四半期決算の関係】
さて、FBの初値レンジが$28~$35という安い設定になったもうひとつの理由は第1四半期決算が悪かったためです。

FBが最初に通年の純利益を発表したときは既に「10億ドルの利益を出している!」ということに投資コミュニティは驚き、喜びました。その当時、囁かれていたFBの時価総額は1,000億ドルですから、1,000÷10で、ザックリ言ってPERは100倍ということになるわけです。若し、毎年利益を倍々ゲームで増やせる企業であれば、ドットコム株でPERが100倍というのは鼻血がブーっと出るほどの、過熱した評価ではあるけれど、過去にそういう例がなかったわけではないという意味で、フツーです。

ただし、それはあくまでも「毎年、利益を倍々ゲームで着実に増やすことが出来る」という場合の話。

ところがFBは先日発表した第1四半期決算で前期比マイナスの決算を出したのです。投資家のコンフィデンス(信頼)は、はやくも凹んだわけです。

そうである以上、時価総額で1,000億ドルという初値設定は強引すぎます。$28~$35という現在の初値設定では時価総額は598.6億ドルから748.3億ドルになる計算です。つまり仮に通年での純利益をオリジナルの10億ドルとした場合(=このように去年の実績をあてはめることをトレーリングtrailingと言います)FBのPERは60倍から75倍になるわけです。

【「砂袋sand-bagging」しているか?】
昔、レースカーが本レースの前の試走の際、ライバルに愚鈍だと思わせるため、トランクの中に沢山砂袋(sand bags)を積んで試走するということをやりました。

このような偽装が「サンド・バッグ」です。

企業会計の世界で、サンド・バッギングに相当するのはわざと費用を前倒し計上することで、その企業の潜在的収益力より少なめに利益を報告するという行為です。(これは極端なケースを除けば、違法ではありません)

FBの第1四半期決算では売上成長の面では予想通りでしたが、「もろもろの費用が思ったよりも嵩んでしまったので」減益になってしまったと説明されています。

その費用の中で今回とりわけ変動が著しかったのは家賃と従業員への報酬でした。

通常のビジネスでは家賃は変動しにくい項目ですが、FBの場合は今、ボコボコ新しいデータセンターを設置しています。また社員を収容するオフィスビルもどんどん必要になっているでしょう。その意味では、いつのタイミングで新しいデータセンターの「器」を契約するか?などの経営判断には大きな裁量の余地が生じていると疑うことも出来るのです。

つまり、前倒しで費用を計上しようと思えば、空箱のデータセンターをどんどん費用として計上してしまえば良いわけです。こうすれば足下でのデータセンターの稼働率は極端に低下しますが、将来、トラフィックや売上高の成長に比べて、費用の成長を抑えることが出来ます。

ここに書いていることは全て僕の創作であり、勝手な想像に過ぎないのですが、なぜ突然、事業費用が増えたか?という点については、サンド・バッギングをした形跡が無きにしもあらずだということだけは考慮に入れるべきだと思います。

【日程】
全てが順調に行ったと想定して、FBの値決めは5月17日頃で、取引開始は18日だと言われています。
今後のポイントとしては上に書いた初値レンジ、$28~$35が切り上げになるかどうか?です。若し切り上げがあるのだとすれば5月10日~16日頃になると思います。

FBの初値レンジが当初$28~$35と発表されたとき、米国の株式市場に上場されている他のドットコム株の値動きは少し悪かったです。それはレンジが意外に低く、業界全体の評価の底上げを望んでいた投資家にとって期待外れだったからです。

しかし今後、FBの初値レンジが切り上がると、「FBはひょっとしてホットになるかも知れない」というムードが市場に広がり、楽観ムードになるシナリオも無いとは言えません。

その場合、期待外れに終わった「業界全体の評価の底上げ」というシナリオで、もう一度他のドットコム株をトレードするという投資家が出てこないとも限りません。

そういう切り口でオモチャにされる株は、たぶんグーグルやヤフーなどの、歴史と実績を積んだネット企業ではなく、むしろ最近上場された、未だ評価の定まっていないネット株になるだろうと思われます。具体的な銘柄で言えば、リンクトイン(LNKD)、ジンガ(ZNGA)、パンドラ・メディア(P)、ジロー(Z)、レンレン(RENN)などのイメージになります。

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