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米・イランの仲介役? 選挙前のイメージアップ? 安倍首相がイランへ


安倍晋三首相は12日からイランを訪問する。14日まで3日間の滞在中、最高指導者のアリ・ハメネイ師やハッサン・ロウハニ大統領と会談する。

日本の首相がイランを訪問するのは約40年ぶり。今回の訪問には、核合意をめぐってアメリカとイランの間で高まっている緊張を和らげる目的がある一方、安倍首相にとっては今後の選挙に向けたイメージアップの機会となる可能性もあると、専門家は指摘する。

ただ、アメリカとイランの関係改善のために、日本が実際に何をできるのか、疑問視する声もある。

なぜ今イランに?

日本とイランは今年、外交関係樹立90周年を迎える。

だがそれよりも重要なのは、今回の訪問がドナルド・トランプ米大統領の訪日直後に行われる点だ。

トランプ大統領が昨年5月にイラン核合意からの離脱を発表して以降、米・イラン関係は急速に悪化している。

アメリカはその後、中東地域に航空母艦を送っており、戦闘の懸念も高まっている。

こうした中、安倍首相には、2国の間で往復外交を行い、緊張を和らげて交渉の席に着くよう促すことが期待されている。

イランへ出発する前日の11日、安倍氏はトランプ氏と電話会談を行い、イランについての意見を交わしている。

イランの核合意とは?

包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれるこの合意は2015年に結ばれ、イランが核計画を制限することと引き換えに、国連とアメリカ、欧州連合(EU)が同国に科していた経済制裁の解除を定めた。

アメリカは当時バラク・オバマ政権だったが、トランプ大統領は就任後の2018年に離脱を表明し、イランへの経済制裁を再開した。

EUやロシア、中国などの締結国は合意の存続を望んでいるものの、イランはアメリカへの報復措置として合意に定められたいくつかの措置の履行を停止した。

国際原子力機関(IAEA)は11日、イランが濃縮ウランの生産を拡大しているとの報告を発表したが、核合意で定められた上限を超えたかは不明だとしている。

日本と核合意の関わり

日本政府はイランとの核合意に関わっていないが、全く影響を受けていないわけではない。

日本はかつてイランから石油を輸入していたが、アメリカの新たな経済制裁に従う形で輸入を停止している。

テンプル大学アジア研究学科ディレクターのジェフ・キングストン教授は、「日本は2015年の核合意を支持しており、アメリカの離脱を良く思っていない。大きな間違いだと考えている」と説明した。

「しかし実際には何も主張していない。アメリカが制裁を再開した時、日本が追随したことには驚かなかった」

今のところ日本はイランからの石油がなくても問題がないが、中東で何らかの摩擦が起きれば石油価格は上昇し、日本にも大きな影響が出るだろう。

第2次世界大戦後、日本はいわゆる無指向性の外交政策を貫いてきた。つまり、中東に対しては全ての国と交渉し友好関係を結ぶことで、石油を確保してきたのだ。

イランは安倍首相に懐疑的?

専門家は、安倍首相にアメリカとイランの関係を変える力があるかは疑問だとしている。

テンプル大学現代アジア研究所のロバート・デュジャリック所長はBBCの取材に対し、「米・イラン間の『合意』を仲介できる可能性はゼロに近いと思っている」と話した。

キングストン教授も、日本は西側諸国とは違いイランに対する歴史的・宗教的な問題がないにも関わらず、「イラン政府は安倍首相を誠実な仲介役とは見ていない」と指摘している。

良い仲介役の条件は、双方への偏りがないことがだが、安倍首相はつい最近トランプ氏と会ったばかりで、その友情を誇っている。

「アメリカ政府との緊密さを見れば、イランが安倍氏を客観的と認めるわけがない」とキングストン教授は説明した。

「イランは、日本には明らかにトランプ大統領やアメリカの同盟国とつながりがあると見るだろう」

そのため、多くの専門家は今回の訪問での成果はあまり期待していない。外務省関係者も、イラン訪問で重要な役割を果たすことへの期待をトーンダウンさせている。

日本メディアは外務省筋の話として、安倍首相は仲介役としてイランに行くのではなく、米・イラン関係の危機を早急に終わらせる計画もないと報じている。

イラン訪問で安倍首相の支持率は上がるのか

多くのアナリストは、イラン訪問の本当の目的は国内政治にあるとみている。

米・イラン関係では大きく実を結ばないかもしれないが、それでも「安倍氏には好材料だ」とデュジャリック所長は説明する。

「有権者に、世界的な政治家だと印象付けられる」

それが安倍首相にとって重要なのだ。7月には参議院選挙が行われる予定で、勝利を確信すれば衆議院でも解散総選挙を求めるのではとの憶測が出ている。

「安倍氏にとって国際外交は政治劇場の一環で、彼はそれがうまい」とキングストン教授は話す。

安倍首相は、日本経済が低迷し最高の時代が終わってしまったという雰囲気の中、日本を復興させるという約束を掲げて政権に就いた。

それからは自身を、経済を復興させ、国際社会での地位を向上させる首相と形容している。

しかし専門家は、国際外交での成果はほとんど上がっていないと指摘する。

日本は北朝鮮との交渉には関わっておらず、北方領土をめぐるロシアとの協議もこう着している。

一方、中東の緊張を含むこれらの外交問題はどれも非常に複雑だが、安倍首相にとってはリスクが少なく、否定的な側面も少ないという。

「安倍氏は(今回のイラン訪問後)外交問題の解決に失敗したとは見られず、代わりに何か頑張ろうとしたと見られるだろう」とキングストン教授は説明する。

「外交政策では選挙に勝てないが、安倍氏を実際より影響力のある人物に見せることはできる」

(取材:アンドレアス・イルマー、BBC)

(英語記事:Japan PM heads to Tehran amid US-Iran tensions

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