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顔見知りだったのに軽トラで…突然キレる高齢者が増える社会背景とアンガーコントロールの方法


 「83歳という年齢を聞いてびっくりした。動きが83歳にはまったく思えなかった。やっぱり高齢になると怒りやすくなって、怒りの沸点が下がったり、怒りの衝動が抑えられなかったり、みたいなのがあるのではないか」。

 先月末、大阪府堺市の路上で街頭演説をしている最中、高齢の男にマイクを奪い取られ、殴りかかられた「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏。男は立花氏に取り抑えられ、選挙候補者への妨害や暴行など公職選挙法違反の容疑で逮捕された。「"なに好きなことを言っとるんじゃ!"みたいなことを言っていた。こういう大声や妨害というのはよくあるし、演説内容の中に気に入らない部分があった可能性は否定できないただ、候補者に直接暴行を加えるというのは、これはもうレベルが違う」(立花氏)。


 近年、このように突然キレる高齢者、いわゆる"シルバーモンスター"が急増、高齢者による暴行・傷害件数はここ20年間で17倍以上になっているという。

■顔見知りだったのに…軽トラックで女性を押し倒す


 今年1月、中国地方に住むある女性が、停車していた軽トラックの隣をすり抜けて追い越すと、すぐに猛追。煽り運転をしてきたという。近くの駐車場に停車して抗議すると、運転していた高齢男性は女性に怒鳴りつけてきたという。「なんで怒っているのかがまったくわからない。車を避けて通り過ぎただけで、私はなんでそんなに怒られなければいけないのか。"われ、おどりゃー殺すぞ。お前ん家に行って火をつけてやる"と」。

 男の脅迫に怖くなった女性は110番通報を試みる。すると次の瞬間、男が信じられない行動に出た。女性の車のドライブレコーダーに残された映像には、軽トラックの後ろで電話をしている女性に向けてそのまま車をバック。女性を押し倒したのだ。「私がいるのを分かっていてバックしてきた。もう凶器だ」と話した。その場で崩れ落ちた女性は全治2週間のケガを負い、男は脅迫と傷害の容疑で逮捕された。

 しかし、実は2人は元々顔見知りで、それまでは温厚な人物だったという。「愛想の良いおじさんだった。あんなに急に怒ったりするような、あんな怖い人ではなかったと思う。本当に夜中とか来られたらやっぱり怖い。だから防犯カメラもずっと録画できるやつを4台付けた」。

■電車内でもトラブルが


 街で聞いてみると、電車内でのトラブルも少なくないようだ。「駅に立っていたら、後ろからおじいさんが来て、わざわざ私たちの間を通ってきて"なんでこんなところに立ってんだよ"みたいな感じで怒鳴られた。多分嫌がらせ。若者に対して怒鳴りたかったのかな」、「優先席が空いていたので座ったら、目の前にいた老夫婦が"なんでお前が座るんだ。立てよ"と言った。私が"でも優先座席に座ったらいけない決まりなどなくないか"と言うと、"若い者は全然だめだわ”と逆ギレされた。その老夫婦は優先座席に荷物をいっぱい置いて、4人分使っていた。どう考えてもあなたたちの方が態度悪いだろうと」」。

 実際、鉄道係員に対する暴力行為の件数は60代以上が最大になっているという。

■SNSを通じて可視化か


 こうしたキレる高齢者の問題について、日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏は「高齢者に限らず、私たちが怒るのは、簡単に言ってしまえば自分の理想が目の前で裏切られた時。怒りは"防衛感情"と言われている。実は先制攻撃ではなく、何か侵害されたとか、何か脅威に遭ったときに怒りの感情を使って防衛をしようとしている。社会から疎外をされている、大切にされていないと感じた時、自分の立場を守ろうとして怒っていると考えられる」と話す。

 「高齢者側からすると自分たちの常識が今の社会の常識と違っていて、そのギャップを見る機会が多くなったから。攻撃されていると勘違いしている高齢者もいるが、本人にとしては自分が正しいと思っているから。逆に若い世代は高齢者とのギャップを見る機会も多いので、それでお互いにイラッとすることが多いのだと思う。理性を司るのは前頭葉だが、加齢とともに脳全体が萎縮していくのは仕方がないこと。だからといってみんながみんな歳をとったらキレやすくなるとか怒りやすくなるかというと、別にそうとは言い切れない」。


 カンニング竹山は「電車で不条理にキレてる人を見てゲラゲラ笑っていて、これは面白いなというところから、こっちが悪いのに不条理に怒るというキレ芸漫才を始めた。二十数年前のことなので、高齢者がキレるということは昔からあったと思う。あるいは高齢者と思っているのはこっちだけで、向こうは自分のことを若いと思っているということもあると思うし、僕たちもいつかそうなると思う」と話す。

 安藤氏は「昔はお年寄りが穏やかだったかというと、そうではなかったとは思う。今はSNSを通して目に見える機会が確かに増えている」とした上で、昨今の高齢者の怒りの背景を次のように分析した。

■背景に社会の変化、アンガーマネジメントでコントロールを


 まず一つ目が、過疎化や核家族化だ。「私たちの世代だと、田舎では3世代で住むか、近所におじいちゃんがいるというのが当たり前だった。また、近所にカミナリオヤジもいたし、先生たちも怒っていた。世代の違う人たちと触れ合う機会が減っているし、怒られることと向き合う機会が減っている」。

 次にIT化だ。「自分たちが中心にいるはずだと信じていたのが、どうも世間から置いていかれているという、社会からの疎外感があると思う」さらに団塊の世代の高齢化だ。「今の社会を築いてきた高齢者の方々は、若いうちに頑張れば、リタイアすれば豊かな暮らしが実現すると信じてきたしかし実際はそうでもなかったし、国も"ごめんやっぱり優遇は無理だった"となっている最中だ。そうしたギャップに怒りを覚えているというのもあるだろう」。

 さらに安藤氏は「怒りはすごく安いエンターテインメント」だとも指摘する。「テレビも雑誌も本もそうだが、人は怒っているものとか、怒りたいものに集まる。みんな怒りたくないと言いながらも、実は怒りがあるところに寄っていってしまうのが人だと思う」。


 では、そうした怒りをいかにコントロールすればいいのだろうか。

 「1970年代にアメリカで生まれたとされるアンガーマネジメントでは、"決して怒るな"ではなく、"怒る必要のあることは上手に怒れ"ということを教えている。その線引きができるようになれば、怒る必要のないことには怒らなくて済むようになる。それをトレーニングとしてやっていこうという発想だ。衝動をうまく抑え、自分の中で何を許し、何を許さないかという思考、怒るにしてもどのように行動を選択していくかという3つ練習していく。また、私たち6秒ルールというものを推奨している。

多くの人は6秒あれば、理性が介入して理性的になれる。怒りが決してなくなるわけではないが、人間らしく意思決定や行動ができるようになる。ライターを思い浮かべると良いが、火打石の下に日頃の不満や不安がガスとして溜まっている。高齢者の場合そのガスが多いので、ちょっとしたことで瞬間的に燃え上がってしまう。ガス抜きのためには質の良い睡眠、リラックスできるメニューをいくつか用意して取り組むことが大事だ」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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