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金融庁の「老後2000万円」報告 撤回させても不安は消えず

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金融庁が「老後の30年間で2000万円が不足する」と報告書で発表した問題で、自民党は世論の反発や野党の追及を受け、「国民に誤解や不安を広げる不適切な表現だった」と表明。金融庁に撤回を含めた抗議を行うなど、夏の参院選を前に火消しに追われている。

肯定から撤回要求へ 二転三転する自民党

報告書は金融庁が3日の有識者会議で、高齢社会の資産形成を促す目的でまとめたもの。そのなかで、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯だと、年金収入に頼った生活設計の場合、毎月約5万円の赤字が出るとし、95歳まで生きるには約2000万円の資産が必要とした。

報告が発表されると、ネット上では「2000万円を今から貯めるのは絶望的」などと不満の声が噴出。当初、「(老後の資産について)きちんとしたものを考えないといけない」などと肯定的だった麻生太郎金融相は7日、報告書について「老後を豊かにする額を示したもの」であり、不足額を表す赤字という表現は「不適切だった」と述べた。

共同通信社

この報告書に関して、麻生氏は10日の参院決算委員会で立憲民主党の蓮舫副代表からの質問に対して、次のように答えていた。(一部調整)

蓮舫氏:年金だけでは老後の資金を賄えない。金融庁の審議会ワーキンググループから出されたもので、夫65歳、妻60歳以上の無職世帯収入は9割以上社会保障給付に頼っているが、今は毎月5.5万円の赤字。そこを自分の金融資産で補填するには、20年で1300万円、30年で2000万円必要という。麻生さん、これはなんですか。

麻生氏:今、言われました話は、安倍総理からもお答えがあったように、高齢者の生活というのは極めて多様であって、それぞれの方が望ましいと考える生活水準の働き方や、希望収入資産…とさまざま。ご指摘の報告書というのは、さらに豊かな老後を送るためには、個々人のおかれた状況に応じて、より上手な資産形成ができるようにするということも大切ではないか、との見方が述べられたものだと理解している。

しかし、高齢者の家計については、貯蓄や退職金を活用しているということに触れることなく、家計調査の結果に基づく単純計算で老後に月5万円、30年で2000万円の赤字であるかのように表現した、ということについては、国民の皆様に誤解や不安を広げる不適切な表現であったと考えている。公的年金については、老後の生活を支える柱であり、将来にわたり持続可能な制度を確保している。さらに、医療、介護といった社会保障制度が全体として国民の高齢期に対する包括的なセーフティネットとして機能もしている。

また本年10月から、定年期の方へ年間最大6万円の年金生活者支給給付金を支給し、セーフティネットにおいてさらに充実させていく、ということにしている。人生100年時代において誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、老後生活を支える柱である年金をはじめとして、働き方改革や予防健康づくりなど、丁寧に議論して参りたいと考えている。

蓮舫氏:今、麻生大臣は、あたかも赤字だと表現したのは不適切だった、豊かな生活を送るための25万円に5万円足りないと。これ前回の会見でも言ってるんですけど、この認識は変わっていないのか。

麻生氏:一番冒頭に申し上げたと思うが、各年金生活者、老齢を送っておられる方の生活者は非常にいろいろな条件がある。一概に一律にこの方、とワンパターン化するには不可能だと思っている。

安倍晋三首相も「老後に月5万円、30年で2000万円の赤字であるかのように表現した点については国民の皆様に誤解や不安を広げる不適切な表現であった」と答弁。「『年金100年安心』は嘘だったのか」との追及には「嘘ではない」と否定していた。

共同通信社

先ほど麻生大臣は、老後に月5万円、30年で2000万円の赤字であるかのように表現した点については国民の皆様に誤解や不安を広げる不適切な表現であったと考えているという風に述べたはずでございまして、先ほども述べておられたとこう思います。事実、そのように書いて、そのような誤解を与えたと思います。

そこでですね、そこで、100年安心ということについて申し上げますと、これはですね、高齢期の生活は多様であって、それぞれの方が望ましいと考える生活水準や働き方の希望、収入資産の状況なども様々であります。現在でも、国民の老後所得は公的年金を中心としつつですね、しつつ稼働所得そして仕送り、企業年金、個人年金、財産所得などが組み合わさっているのが実態である、とこう我々は理解をしております。

その上で、この上において、年金100年安心が嘘だというご指摘がございますが、そうではないということを今申し上げさせていただきたい、これは重要な点でありますから申し上げたいと思いますが、この国民の老後所得の中心となる公的年金制度についてはですね、将来世代の負担を過重にしないために保険料水準を固定した上で、長期的な給付と負担の均衡をはかるマクロ経済スライドにより、一定の給付水準を確保することを前提に持続可能な制度に改めたものであります。これは平成16年の大改革でして、マクロ経済スライドを導入する、つまり平均余命が長くなれば、当然給付が増えていく。一方、同時に被保険者の数がどうか、と。これが減っていけば当然これは収入も減っていく。で、そのバランスが大切であって、それがマクロ経済スライドであります。

(中略)マクロ経済スライドによって、100年安心という、そういう年金制度ができたということなんです。いいですか、これは給付と負担のバランスですから、それを調整するものができた。そして今年度においては、プラス改正ができた、かつマクロ経済スライドも発動された、マクロ経済スライドも発動されたということが大きなポイントであるということが、これ多くの方々ご理解いただいていないんで、申し上げさせていただきたい、とこう考えております。

翌11日、麻生氏は閣議後「世間に著しい不安と誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なりますので、正式な報告書としては受け取らない」と異例の発表。理由として高齢者は世帯ごとに資産形成が異なるため「平均として出すには無理がある」ことをあげた。また、年金制度が老後の生活設計の柱になるとしたうえで「(報告書の表現では)それが無理だというふうに聞こえる」と政府と金融庁との姿勢にずれがあることを指摘した。

自民党の二階俊博幹事長は同日、党として金融庁に抗議したと表明し、「国民に誤解を与えるだけでなく不安を招いており大変憂慮している。撤回を含め厳重に抗議している」と話した。撤回要求の理由に関しては「参院選を控えており、党として候補者に迷惑をかけないよう注意していかねばならない」と説明した。

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