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女性ウケを狙った広告が性差別になる事情

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女性をターゲットにした広告で、反対に「性差別だ」と女性からの批判を集めるケースが相次いでいる。ジャーナリストの白河桃子氏は「制作陣に女性がいるだけでは不十分だ。『女性がいるチーム』ではなく『多様性があるチーム』である必要がある」と指摘する――。

※本稿は、白河桃子『ハラスメントの境界線』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/FotografiaBasica)

■西武・そごうの「パイ投げ」広告の問題点

広告炎上事件と言えば、2019年の元日の新聞広告、西武・そごうの「パイ投げ」広告が記憶に新しいです。女性にパイを投げつけるビジュアルとともに女性の生きづらさを描き、賛否両論を巻き起こしました。最後に「わたしは、私。」というコピーが出てきます。一見「男とか女とか関係なく、『わたし』らしくでいいじゃないですか?」というメッセージはかっこいい。しかし、現状に対して変えようとはしていない。

東京医科大学が入試で「3浪以下の男性に10点以上加点していた」という事件が2018年に発覚したばかりです。男性が10点下駄を履いている現状で「わたしは、私。」でいいと言い切ってしまうのは、10年早いのではないかと思います。西武の広告といえば、かつては時代の最先端でした。ただジェンダーへの感覚が古いまま、つくってしまったメッセージではないかと思います。

女性をターゲットとし、長年商品を販売している企業でさえ、女性からの批判を浴びてしまうジェンダー炎上が多数起きています。

■「ムーニー」のCMは母子家庭に見えた

わかりやすい例として、2つのおむつの広告を挙げましょう。まず1つ目は、2017年に公開されたユニ・チャームのおむつ「ムーニー」のウェブ動画CMです。「ムーニーから、はじめて子育てするママへ贈る歌」と題した動画で、初めての子育てに孤軍奮闘する一人の母親の姿が描かれています。父親が登場するのは、わずか2シーンで、時間にすれば約4秒。海外の友人は「母子家庭」だと思っていました。

食事は立ったまますませ、お風呂からは髪を乾かす間もなく出てこなければいけない。まさに新語・流行語大賞にもノミネートされた”ワンオペ育児”そのものが描かれ、今まで描かれてきた幸せいっぱいの子育てから一歩進んだ「ママのリアル」を描いたチャレンジングな広告だったのです。

しかし最後に出てくる「その時間が、いつか宝物になる。」というフレーズが、この動画を炎上させます。ワンオペ育児という現実を受け入れ、「肯定」するキャッチコピーをつけてしまったせいで、ネット上には「自分がワンオペで大変だったときのことを思い出して吐き気がした」「過去の記憶がフラッシュバックしてつらい」といった否定的な言葉が次々と投稿されることになってしまったのです。私がこのCMをつくる立場なら「このママたちのために何ができるのだろう」といった、現状を変えていく言葉を投げかけたと思います。

■多様性に満ちた「パンパース」のCM

ムーニーの例と比較したいのが、2016年に公開されたP&Gジャパンのおむつ「パンパース」のウェブ動画CMです。タイトルは、「キミにいちばん」。最初のシーンには、先の「ムーニー」と同じく赤ちゃんを抱っこしてあやすママ(白人女性)が登場します。違うのは、この先。黒人のパパ、アジア系のおじさん、アフリカ系のおばあちゃん、途上国の医師……と、性別、人種、国・地域を問わず、多くの人々が身近な赤ちゃんを思う姿が描かれていくのです。

赤の他人もいます。ベビーカーを運んでくれる出勤途中の男性、赤ちゃんの眠りを邪魔しないよう工事の手を止める工事現場のおじさん、さまざまな人が出てきます。私が一番好きなのは「警備員のおじさん」が赤ちゃんにだけわかるようにおどけた顔をして見せて、お母さんが振り向くと素知らぬ厳しい顔に戻っているシーンです。

最後には初めと同じママと眠りについた赤ちゃんとともに映し出されるのは、「there is nothing we wouldn’t do. (いつだって、いちばんのことをしてあげる)」という言葉。「赤ちゃんのために、みんなが一番のことをしてあげたいと思っている」という、非常に多様性に満ちた優しいメッセージが込められているのです。これは大きな共感を呼び、北米では公開後8カ月で1700万回以上再生されたそう。日本でも賞賛の声がネットにあふれていました。

■「女性がいる」ではなく「多様性のあるチーム」がいい

この2社の明暗を分けたのは他でもない、スポンサーである企業内の中の意思決定層、そしてクリエイティブサイドの人たちの多様性の有無だと私は考えます。

前者のユニ・チャームは、素晴らしい製品を生み出してきた実績のある日本のメーカー。しかし、2017年の人事データを見ると、国内の管理職の女性比率は11.7%にとどまっています。一方のP&Gジャパンは、グローバルなメーカーであり、女性活躍に積極的なことでも知られる企業。2013年の時点で、役員の女性比率は57.1%、管理職の女性比率は34%。また、社長のスタニスラブ・ベセラ氏は多様性の重要性について熟知しており、取材時には「おむつであろうが、生理用品であろうが、カミソリであろうが、必ず多様性のあるチームでつくるのが重要だ」と話しています。

私も広告が出る前に「外部の専門家としてチェックしてほしい」と頼まれることが時々あります。

では、なぜ「女性がいるチーム」ではなく、「多様性のあるチーム」である必要性があるのか? そのヒントとなるのが、サントリーのビール「頂」のウェブ動画CMが炎上した事例です。2017年、出張先で出会った若い女性と「頂」を飲み交わすシーンを描いた「絶頂うまい出張」と題した動画が、ネット上で公開されました。女性だけをワンカメラで追ったいわゆるデート動画で、「肉汁いっぱい出ました」「コックゥ~ん! しちゃった」といったセリフも相まって、「女性を過度に性的なモノとして扱っている」と炎上。批判を受け、すぐに動画は削除されました。

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