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維新という名の守旧派

親も教育…虐待・モンスター防止へ維新が条例案(読売新聞)

 大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)大阪市議団は1日、保護者に家庭教育の学習機会を提供する「家庭教育支援条例案」を、15日開会の5月定例議会に議員提案する方針を固めた。

 児童虐待や、無理難題を強いる「モンスターペアレント」の出現を防ぐ狙いで、成立すれば全国でも異例の条例となる。

 市議会で審議中の教育基本2条例案に盛り込まれた保護者向け家庭教育支援を具体化する内容。「親になる心の準備のないまま子どもに接し、途方に暮れる父母が増えている」とし、具体的には市内の全保育園・幼稚園に保護者を対象とした一日保育士・幼稚園教諭体験の機会を設けるよう義務化。結婚や子育ての意義を記した家庭用道徳副読本を高校生以下の子どものいる全世帯に配布するほか、市長直轄の推進本部を設置し、「家庭教育推進計画」を策定することも盛り込んだ。

 大阪維新の会が提出しようとしている「家庭教育支援条例案」はこちらで全文を読めますが、まぁ当然のことながら方々からツッコミが入っています。特に明白な誤りとして各所で指摘されているのは、以下の行ですね。

(伝統的子育ての推進)
第18条
わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する

 例えば富裕家庭なら「乳母に任せる」とか、貧困家庭なら「間引きする」とか「丁稚奉公に出す」などの伝統的子育てによって発達障害は予防できると橋下一派は主張したいのでしょうか。まぁ発達障害の早期発見と「間引き」を組み合わせればもしかしたらと思えないでもありませんが、それは完全に優生思想の世界でもあります。そして言うまでもなく乳母に子供を預けたり、子供を奉公に出したりといった伝統的な子育てで「予防」できるような代物では、発達障害はないわけです。加えてサザエさんみたいな近代的な家族モデルで育てられようが発達障害が「防止」されることもありません。維新の会と、それに何のツッコミも入れられない読売記者の頭の中の発達障害って、いったいどういう類の障害なのでしょう? 昨今は社民党辺りも大概ですけれど、とかくエセ科学的な知見が政治に取り入れられやすいところがあります。本来ならば政治に入り込ませてはいけないものなのに、その分別が付けられない政治家がのさばってしまうことには危機感を覚えるところですが、社会の木鐸とやらは読者のウケばかり考えているのか役割を果たそうとしていません……

 この「維新」とか、そうでなくとも「改革」の類を看板に掲げる人々は往々にして「保守」であり、守旧派、復古派、退行志向であったりします。文字通りに「維新」というのなら、これまでの日本にはなかった何か新しい家族モデルを提唱してくれても良さそうなものですが、「伝統的子育て」なる本人もよく分かっていないであろうモデルを称揚している辺りに、その特徴が表れていると言えるでしょう。むしろ伝統的なものを乗り越えてこそ「維新」ではないかと思うのですが、とかくこの国の「維新」や「改革」は保守的な人々と相性がいいわけです。改革を唱える政治家がのさばればのさばった分だけ社会が退行してきた、日本が世界から取り残されるようになってきたのも宜なるかな、ですね。

参考、カッコーの巣の上へ

 そもそも発達障害に関しては大人になってから発覚するケースが増えているとも聞いたものですが、その辺も子育ての結果だと考えたがる人がいるのでしょうか。何はともあれ、維新の会では他にも引用元で伝えられているように、「児童虐待や、無理難題を強いる『モンスターペアレント』の出現を防ぐ狙い」云々を主張しているそうです。その前に橋下がモンスター首長、維新の会がモンスター会派なんじゃないのかと言いたくもなりますが、モンスター首長とかモンスター会派というと、どちらかと言えば強そうな、肯定的なニュアンスになりそうで何だか嫌です。まぁ、学校の教職員を含めた市の職員とか昨今では電力会社とかに無理難題を強いているのはモンスターペアレントなる架空の生物よりも先に、まず橋下でしょう。橋下をどう躾ければいいのか、私だったらそっちを考えるべきと提言します。

1人で子育て…順調な成長「遅い」と悩み殺害か(読売新聞)

 東京都練馬区のアパートで27日、住人の滝島優希ちゃん(2)が殺害された事件。

 殺人容疑で逮捕された母親の滝島希巳江容疑者(41)は「子育てに悩んでいた」と供述、優希ちゃんの発育を心配し、区に繰り返し相談していた。

 しかし、区によると、優希ちゃんの成長は順調で、希巳江容疑者の「思い込み」だった可能性が高い。夫と離婚し、一人で子育てをしていた希巳江容疑者に手を差し伸べる相談相手はいなかったのか。

 「息子が言うことを聞かずに動き回り、タンスから物を出して投げつける」。昨年12月、優希ちゃんの健診のため、区の保健相談所を訪れた希巳江容疑者は保健師に打ち明けた。

 健診では発育に異常は見あたらず、保健師は思い過ごしだと判断、「様子を見ましょう」となだめた。

 維新の会の狙いの中には児童虐待を防ぐなんてのもありますが、果たして「一日保育士・幼稚園教諭体験の機会を設ける」ことや「結婚や子育ての意義を記した家庭用道徳副読本を~配布する」ことが防止に繋がるのかどうか、この辺も大いに首を傾げるところです。子育ての意義はまだしも結婚の意義とか、まぁ維新という名の守旧派にとっては大切なことなのかも知れませんけれど、そういう拘りが子育てのハードルを高くしてもいるわけです。低下する出生率を回復させた成功例としてはフランスなんかがよく挙げられますけれど、フランスでは婚外子の割合が50%を超えています。「結婚の意義(キリッ」と曲がりなりにも議席を持つ政治家が説法する、道徳が支配する日本では考えられない世界ですね。日本の伝統である「間引き」の精神が今なお息づいているのでしょうか。結婚して「親になる心の準備」が整ったものだけが子供を産むようにと、そうやって子供を制限していくことで児童虐待を防ごうという発想なのかも知れません。少子化が進むのも当然だなぁと今更ながらに思うのでした。

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