記事

金融庁の「老後に2000万円必要」というホントとウソ

下流老人という問題提起

ちょうど4年前の今ごろになる。

僕は「下流老人」という著作を出版し、現在の高齢者の生活困窮ぶり、将来の年金生活者の暮らしの悲惨さを予測した。

この著作はベストセラーとなり、「下流老人」という言葉は当時のユーキャン流行語大賞にもノミネートされたほどだった。

団塊世代が高齢者になったこともあり、多くの読者に老後の生活の大変さがリアルに伝わり、非常に関心も高いテーマだった。

「下流老人」では、普通の生活をしている人々が老後に、ふとしたことで簡単に生活困窮に陥ってしまう様子を描いた。

別に怠けていたり、無計画なのではない。普通に暮らしていて年金保険料も支払っている人々のところに貧困が現れる

それほど現行の年金制度では老後の暮らしを保障する機能が弱っているという指摘だった。

2015年以降、この問題提起などを受けて、政府は低年金高齢者などに臨時特例給付金を配付する政策を実施した。

約1100万人に3万円を配付するという事業だった。

それ以降、低年金高齢者に対する施策は何も進んでいないと言える。

そして、金融庁の無神経な報告を受けて、また老後の生活、老後の年金に焦点が当たっているようだ。

実は、金融庁に限らず、同じような報告を総務省もおこなってきた。

総務省統計局の家計調査「夫婦高齢者世帯のひと月あたりの収支の推移」によれば、2015年の段階でも高齢者夫婦は約24万円/月の消費支出があるが、約18万円/月しか可処分所得がなく、約6万円/月の赤字が指摘されていた。

この数字は平均値であるので、もちろん実態を表すものではないが、年々消費支出と可処分所得が乖離し、高齢者世帯の家計の赤字幅が大きくなっていることを以前から指摘していた。

金融庁以外に総務省も同じような統計を持っていて同じような指摘をしている

「老後に2000万円必要」の背景にあるもの

今回の金融庁の報告書によれば、高齢夫婦世帯では、平均収入が209198円あり、平均支出が263718円あるとされている。

だから、月平均54520円不足することになるという。

この赤字額を老後30年で計算すると、高齢夫婦で約2000万円足りない。これが今回の「2000万円貯めなければならない」のカラクリである。

統計的に見れば、二人で2000万円足りないというのは、金融庁の報告書に限らず、総務省の報告などでも明らかである。

ただし、実際にはお金がない場合、263718円という支出を毎月する家計もないので、節約するなどして貯蓄を費消しないようにするだろう。

あくまでこの金額自体が平均値なので、「2000万円必要なのか」という議論に生産的な意味はないが、大事なことは健康で文化的な生活が制限される高齢者世帯が今以上に増えることがすでに予想されているということだ。

年金制度はマクロ経済スライドを進め、現役世代の保険料負担が重くならないように設計されているが、今後も年金支給額は低下を抑えられない。

そもそも、負担者が減り、受給者が増加すれば、現行の支給内容を維持することは困難だろう。

間違いなく年金支給金額は目減りを続けていく。そういう意味において年金は100年安心ではない。

要するに、金融庁が「公的年金の水準が当面低下することが見込まれている」「公的年金だけでは望む生活水準に届かないリスク」「公的年金だけでは満足な生活水準には届かない可能性がある」などと述べた当初の報告案は間違っていない事実なのである。

安倍晋三総理大臣がいかに「不正確で誤解を与えた」と釈明しても、2000万円必要か否かは別として、上記の内容は事実である。

これらの議論の背景にあるのは、年金収入の低下と各種保険料の高騰であり、収入が減り支出が増えるという事実だ。

この問題は今に始まったことではないし、高齢者の家計は年々苦しくなっていることが以前から統計でも理解できた。

毎日新聞の報道では金融庁、わずか10日で削除「年金の水準が当面低下」などの表現と報告書も訂正されたようであるが、4年前、あるいはそれ以前から、今回の報告書の内容くらいのものは政府が把握していたということだ。

そして、年金支給金額の低下も事実だし、今後の低下傾向も否定のしようがない。

さらに、介護保険料、国民健康保険料などの各種保険料負担も増え続けているし、今後も増え続けることは間違いないのである。

高齢者世帯の可処分所得は減少傾向が止まらない。

結論としては、2000万円必要かどうかは各世帯によるので、いくら必要かは一概にいえないが、年金収入は減り続け、満足な生活ができない高齢者は確実に増える。

その理由として大きいのは、年金収入の減少だけでなく、各種保険料負担の増加である。

年金収入の減少が仕方ないのであれば、保険料負担の減免や他の支援施策を導入しなければ、高齢者の生活はますます厳しいものとなるだろう。

今回の議論を契機に、下流老人をこれ以上生み出さない施策が検討されることを期待している。

※Yahoo!ニュースからの転載

あわせて読みたい

「年金」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    田中康夫氏 脱ダム批判受け反論

    田中康夫

  2. 2

    ZOZO売却でライザップ再建を想起

    大関暁夫

  3. 3

    ユニクロ会長の日本人批判に反論

    自由人

  4. 4

    チョ・グク氏辞任で窮地の文政権

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  5. 5

    ダムめぐる鳩山氏の発言を批判

    深谷隆司

  6. 6

    よしのり氏 安倍首相に期待残す

    小林よしのり

  7. 7

    アマゾン火災 責任の一端は日本

    ビデオニュース・ドットコム

  8. 8

    質問通告遅らす森議員は官僚の敵

    天木直人

  9. 9

    音喜多氏 朝生出演で未熟さ痛感

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    「スカーレット」演出の雑さ指摘

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。