- 2019年06月10日 09:15
"スマホ不振"で行き詰まる韓国経済の末路
1/2経常赤字は「輸出主導型経済」の行き詰まりと同義
4月、韓国の経常収支が7年ぶりの赤字に転落した。経常収支が赤字に転落した主な原因は、韓国の輸出が急速に減少したためだ。その背景には、輸出依存度の高い中国経済に減速感が出ていることに加えて、主力の輸出製品であるスマホなどIT関連機器の需要が落ち込んでいることがある。
特に、サムスン電子の半導体事業の減速は顕著だ。韓国銀行(中央銀行)は、今回の経常赤字転落は海外投資家への配当金支払いによる一時的なものと説明しているが、あまり説得力はない。むしろ、今後、韓国経済は一段と厳しい状況に直面する可能性が高いとみられる。

米国は中国の通信機器最大手ファーウェイへの制裁を発動し、中国はそれに対して報復すると明言している。米中の摩擦は激化し、今のところ、両国の折り合うポイントが見つからない状況だ。世界各国のスマートフォンや5G関連の通信機器への需要、IT関連の設備投資は落ち込むことが懸念される。
これまで半導体を輸出の主力製品として経済成長を実現してきた韓国にとって、経常収支の赤字転落は輸出主導型経済の行き詰まりを意味する。当面、輸出の大幅な回復と見込むことは難しい。それに加えて、足元のウォン安が輸入物価を上昇させ、経済を圧迫する懸念もある。それは、社会心理を一段と悪化させ、韓国の政治と経済の停滞懸念を高めることになりそうだ。
一握りの財閥企業が韓国全体を左右するいびつな構造
韓国経済には、2つの大きな特徴がある。
1点目は、韓国経済がサムスン電子を筆頭とする「財閥(チェボル)企業」の業績拡大に依存していることだ。サムスン電子1社の売上高は、韓国のGDP(国内総生産)の15%程度を占め、上位10社の売り上げを合計するとGDPの45%程度に達する。なお、サムスンの営業利益の70%程度が半導体事業からもたらされている。
これはかなりいびつな経済構造だ。事実上、サムスン電子など一握りの財閥企業の業績が、韓国経済の成長を左右している。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、経済格差の拡大と固定化を食い止めると主張し、財閥改革を標榜した。しかし、実際に改革を進めることは口で言うほど容易ではない。なぜなら、財閥企業の経営が揺らげば、韓国経済そのものが大きく傷つくからだ。
韓国政府は企業業績のかさ上げで「ウォン安」を重視
2点目は、貿易への依存度が高いことだ。韓国の貿易取引はGDPの80%程度に達する。これは、わが国の2倍以上の水準だ。韓国経済は、わが国などから資材を調達し、それを用いて半導体などの製品を生産し、それを中国などに輸出することで成長してきた。また、韓国政府は企業業績をかさ上げするためにウォン安を重視してきた。
過去数年間の韓国の輸出を見ると、サムスン電子の株価とかなり相関が高い。
2016年初旬ごろから中国では景気対策が進み景気が徐々に上向いた。中国は「中国製造2025」の推進のために半導体を買い求めた。加えて、世界的にスマートフォンが急速に普及し、データセンター向けのDRAM需要も高まった。
サムスン電子は、その需要を取り込んで半導体輸出で収益を獲得した。2017年秋口まで韓国の輸出は増加基調で推移し、ほぼ同じタイミングで同社の株価も最高値をつけた。この時期、韓国の消費者信頼感も大きく上昇した。2017年11月には、韓国銀行が利上げを実施した。近年の韓国経済は、サムスン電子の半導体輸出に支えられたのである。
韓国の輸出に急ブレーキがかかる要因とは
2018年に入ると、韓国の輸出は伸び悩み始めた。公共事業の削減に加え米中の貿易戦争から、中国経済が急速に減速した。また、世界的なスマートフォン販売台数の鈍化やデータセンター向け設備投資の一巡から半導体市況が悪化した。
2019年に入ると、米中摩擦の激化や欧州の政治混乱から多くの企業が設備投資を手控え、半導体需要がさらに落ち込んでいる。その結果、年初から5月末まで、韓国の輸出は前年同月比ベースで減少している。
これが、韓国の経常赤字の原因だ。経常収支とは、海外との財(モノ)やサービスの貿易や、投資(例、海外子会社からの配当受け取りなど)の状況を示す。経常収支が黒字であるということは、その国が海外からお金を受け取っているということを意味する。反対に、経常赤字である国は、海外に対してお金を支払わなければならない。
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