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土下座に謝罪の意味はない

大麻取締法違反の罪で起訴された田口淳之介被告が保釈された。

スーツを着た田口淳之介被告が、報道陣の前に姿をあらわすと、東京湾岸署の玄関先で謝罪の弁を述べた後に「本当に申し訳ありませんでした!」と、いきなり土下座をした。(*1)

それを見た瞬間に、僕はちょっと笑ってしまった。どう見ても完全にネタ動画。ギャグでやってんのか?

そして笑った後に、不快感だけが残った。

最近の保釈は何かとエクストリームだ。

カルロス・ゴーン氏は、弁護士側があまり騒がれないようにと、作業着などを用意し、それを着用した結果、むしろ悪目立ちをしてしまった。決してゴーン氏が悪いわけではない。

ピエール瀧氏の保釈時は、本人はいたって真面目であったが、報道陣の中にケンタウロスの格好をしたファンが混じった結果、ちょっと瀧氏が笑ってしまっている様子が見られる。まぁファンの気持ちは分かるし、瀧氏も悪くない。

だが、今回の田口氏のパフォーマンスは、あまり笑って済ませることができるものではない。

昔のまだ日本が貧しかった頃、土や砂利の汚れた地面で、顔が汚れるのも構わずに額をこすりつけて行う土下座なら謝罪の意味もあっただろう。

しかし、現代のきれいに敷かれたアスファルトやタイルの上で土下座をされても、田口氏のきれいに整った顔は汚れることもない。

あの土下座をテレビの画面を通して視聴した人たちに謝罪の意図が伝わったとは、とてもではないが思えないのである。

今のテレビの視聴者、特に40代の我々の世代がテレビの画面を通して土下座を見たときに思い浮かぶのは、とんねるずの番組で負けたチームが「もう一回お願いします!」と土下座をするシーンである。

とんねるずの番組には、一流のスポーツ選手が何人も出演しているが、そのほとんどが土下座を経験している。そして出演者たちはもちろん、視聴者すら、土下座をただの「お約束」であると感じ、そこになんの屈辱も謝罪も感じていないのである。

かつては土下座にも謝罪の意味があったが、とんねるずがその意味を「バラエティのお約束」に上書きしてしまった。もはや普通の土下座に謝罪としての価値は存在しないのである。

それを乗り越えようとすれば、ドラマ「半沢直樹」で香川照之が演じたように、大げさに怒りと屈辱でまみれた表情で、膝をガクガクさせながら土下座をするしかない。

そのくらい「土下座で謝罪を表現すること」は、今の時代には難しいのである。

残念ながら、田口氏にそのような演技力はなかったようだ。

謝罪をするべき場で、土下座というバラエティのお約束を持ち出す。

その光景は単に滑稽であり、またその意味を理解すれば不愉快にしかなりようがない。

そんな当たり前のことを、タレントである田口氏は理解できなかったのだろうか?

非常に残念な謝罪であった。

*1:田口被告土下座「怖い」「笑ってしまう」ネット反響(日刊スポーツ)https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201906070000787.html

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