記事

親も子ども一緒に育つ幼稚園

 子どもと一緒に登園して親も一緒に一日を過ごすことができる「札幌トモエ幼稚園」を視察した。子どもだけの幼稚園ではなく、多様な育ちを知り、コミュニティにもつながる親子のための幼稚園だ。



■子どもが好きなように遊ぶ

「札幌トモエ幼稚園」は、札幌市の郊外、山のふもとにある自然体験型特認幼稚園(※)だ。決められたカリキュラムにそって保育を行うのではなく、自然のなかで子どもの自主性に任せ、遊びを中心に教師が伴走者となって子どもを育てるのが園の方針だ。

 週に数回、一時間ほどの年齢別の課題学習はあるが、この時意外は、クラスの枠を超えて異年齢で子どもが好きなことを好きなようにして過ごしている。好きなことに熱中することで失敗も含めて経験が積み重なり、人間関係の幅も広がっていく。

 同年齢だけだと競争意識が強くなりがちだが、異年齢の集団になると人を思いやる気持ちが芽生え、共生の意識が生れやすくなることも狙いだ。


■大人も幼稚園で過ごす

 このことよりも、日中の幼稚園のなかに多くの大人がいることに驚かされた。通っている子どもは70人ほど。職員は10名なのにたいして、大人も含めて150人前後が常に園にいて子どもたちと一緒に過ごしている。いわば子どものための幼稚園ではなく、家族の幼稚園といえばいいのだろうか。

 聞けば、通っている世帯の8割ほどの家庭の親が昼間にもいるそうで、卒園した子どもや親もいることが多く、入園する前の乳児もいるというから、さらに驚かされる。



 実際に自分の子どもではなく他人の子どもの面倒を見ている親も多く、子どもは何人もいる大人の間を行き来しており、誰が誰の子どもかまったく分からない状況だった。

 また、園舎のなかでパソコンを使い仕事をしている人もいた。園にいても、保育を一緒する必要はなく、それぞれ思い思いに過ごすこともできるのだそうだ。登園し、仕事をして、子どもと一緒に家に帰る家庭もあるという。気に入った子ども同士が誰かの家に集まりお泊りをすることもあり、兄弟のような関係にもなっているそうだ。



■ワンオペ育児対策、コミュニティづくりへ

 園長の木村仁さん聞くと、多様な子ども、多様な大人が一緒に保育をすることで、子どもは親以外にも信頼できる大人がいることを知り、安心感につながる。時にはケンかをするが友達がたくさんいることの楽しさが分かり自立心にもつながっていく。
 親は、他人の子どもと接することでわが子への思い込み、"子育てはこうでなければならない"といったプレッシャーから開放され、子どもを理解し、ストレスがなくなっていくと話されていた。
 
 そして、親も一緒に保育に参加することで、お金を払い対価を得ようとする側、サービスを提供する側に別れ不満が蓄積し対立する関係ではなく、一緒に子育てをする仲間となり、親の居場所ともなって、子育てが自分ごとになり、さらに若い保護者へと経験を伝えていくことでコミュニティにつながっているとされていた。



■保護者へのサポート、工夫

 このような保育をすることで教職員はどのように対応しているのかだろうか。また、昼間に幼稚園にいられない親への対応はどのようにしているのだろうか。

 教職員は一日の終わりに毎日ミーティングを行い子どもだけでなく保護者の様子を共有し、タイミングを見ながら声をかけること、保護者のサポートも求められるようになった。

 保護者の関係が濃密になると新たな参加者が入るハードルが高くなるので、保護者が来たくなるようなイベントや保護者も楽しめる遊びもつくり工夫をしている。就労形態が多様化していることから保護者への関わり方はひとつではなく、多様性な関わり方で接しているしかないとされていた。

「トモエ幼稚園」の保育は、「ワンオペ育児」、「孤育て」という言葉に象徴されるように「孤立化」している現在の子育て環境の問題への対応策。自然のなかで思いっきり遊ぶことまでは取り入れられないかもしれないが、地域のなかで居場所がないという都市部の問題への打開策ともなると思えてならない。子育て施設で地域社会のような互いに支えあう子育てコミュニティをつくり、さらに地域へと広げ、世代で分断されない共同社会に広げたいとの理念は、どの地域でも参考になるに違いない

※園舎を持たず自然のなかで保育する「森のようちえん」に近い事業で、一般的な幼稚園とは異なる。いわば、施設がある森のようちえん。北海道が認可をしている

【参考】
「札幌トモエ幼稚園」


(写真・上から)
・園舎の外観。あちらこちらで子どもと大人が遊んでいた
・園舎の内部。誰が誰の子どもが分からないままで、子どもと大人が過ごしていた
・見学者用の荷物置き場と乳児のスペース
・園舎の内部は壁がなく、全体を見渡せるが、ところどころに目線が隠れるような仕組み室内遊びもできるように考えられてた。前提的に質素
・木村園長と。常に人を楽しませることを考えている
・隣接する森にある手作りブランコ。大人でもスリルと爽快感を得られた

あわせて読みたい

「幼稚園」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    韓国は歴史観とズレる事実を排除

    舛添要一

  2. 2

    「ネトウヨ」批判に逃げる知識人

    篠田 英朗

  3. 3

    橋下氏 百田氏の方が反日本人的

    橋下徹

  4. 4

    謝罪なく逃走の津田大介氏に呆れ

    やまもといちろう

  5. 5

    お台場水質汚染 背景に汚水放流

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  6. 6

    日本は韓国に知的な手助けをせよ

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  7. 7

    韓国で人気「反日は迷信」謳う本

    NEWSポストセブン

  8. 8

    権力迎合で安泰 NHKの存在に疑問

    ビデオニュース・ドットコム

  9. 9

    日韓は報復でなく大人の対応せよ

    小宮山洋子

  10. 10

    常磐道あおり運転 容疑者を逮捕

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。