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選挙に勝つため国益を弄ぶ安倍首相の見識

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「日朝首脳会談」の思惑はもろくも崩れ去った

夏の参院選に向け、永田町が騒がしい。

いまの国会が6月28日の会期末で閉会した場合、参院選は7月4日公示、21日投開票の日程で行われる見通しだ。安倍首相があわせて衆院を解散する「衆参同日選挙」との見方が出ており、与野党の動きに拍車がかかっている。

与野党の最大の関心は、安倍首相がいつどうやって衆院を解散するかである。

安倍首相は衆参同日選挙に勝ち、憲法改正まで成し遂げるため、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との「日朝首脳会談」を実現させようとしていた。だが、その思惑はもろくも崩れ去った。

6月3日から北朝鮮のメーデースタジアムで行われているマスゲーム。北朝鮮にとって外国観光客誘致のための重要手段だが、6月10日で一時中止になるという。(写真=AFP/時事通信フォト)

「条件を付けずに」と大きな方向転換をはかったが……

今年2月、ベトナム・ハノイで行われた2回目の日米首脳会談の後、安倍首相は「今度は私の番」と明言した。5月に北朝鮮が弾道ミサイルを連続して発射した際には、「私自身が条件を付けずに向き合わなければならない」と無条件で日朝首脳会談に臨む決意を示した。これまで安倍首相は「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」という姿勢を示しており、大きな方向転換は関係者を驚かせた。

安倍首相は、史上初の日朝首脳会談を実現して拉致被害者を帰国させた小泉純一郎・元首相のように、自ら北朝鮮外交の大きな檜舞台を作り上げ、その勢いに乗って衆参同日選に打って出ようと考えていた。

ところが、肝心要の金正恩氏が態度を硬化させてしまう。北朝鮮が6月2日夜、国営メディアを通じて日朝関係について次のような声明を発表したのである。

「安倍一味はツラの皮がクマの足の裏のように厚い」

「まるで日本政府がわが国に対する協議の方針を変えたかのように宣伝し、しつこく平壌(ピョンヤン)への門をたたいているが、われわれへの敵視政策は何も変わっていない」

「前提条件のない首脳会談の開催などとぬかす安倍一味はツラの皮がクマの足の裏のように厚い」

「あれこれ言っている安倍一味はずうずうしい。過去の罪悪をきれいに清算して新しい歴史をえがく決断を下すべきだ」

北朝鮮の声明では謝罪や賠償を求める姿勢も改めて示された。

安倍首相が前提条件を付けずに日朝首脳会談の実現を目指す考えを示していることに対し、北朝鮮の国営メディアが直接反応を示したのは、これが初めてだった。

野党に不信任決議案を出させて、衆院解散を断行したい

なぜ北朝鮮はこのような非難の言葉を日本に向けたのか。それは金正恩氏が安倍首相の足元をみているからである。金正恩氏は、自分の選挙のために日朝首脳会談を開こうとする安倍首相の思惑を見抜いたのだ。

いまのところ、安倍首相のもくろみは失敗した格好だが、この先、したたかで気まぐれな金正恩氏が安倍首相の意を受け入れる可能性がないとは言い切れない。

安倍首相は6月12日から14日にかけてはイランを訪問する予定だ。28日と29日には、大阪で主要20カ国・地域首脳会議「G20」が開催され、日本が議長国を務める。当然、安倍首相の言動が世界のニュースに流れる。

永田町では、6月19日辺りに開催される党首討論で、憲法改正の是非を取り上げ、そこから野党に不信任決議案を出させて、衆院解散を断行するとの見方も出ている。

菅官房長官も「内閣不信任案→衆参同日選」に誘い水

すでに菅義偉官房長官は、不信任決議案は衆議院を解散する大義になり得るとの認識を示している。

これは5月17日午後の定例記者会見で、「野党側が国会に内閣不信任決議案を提出した場合、国民に信を問うために衆議院を解散する大義になりますか」との質問に答えたもので、菅氏は「それは当然なるのではないか」とはっきりと話している。

菅氏の答えは野党に「不信任決議案を出せ」と言っているのと同じだ。いわゆる“政治的誘い水”である。

安倍首相もこんな発言をしている。5月30日の経団連の総会だった。

「『風』という言葉に、永田町は大変敏感だが、ひとつだけ言えることは、『風』というものは気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」

この安倍首相の発言に対し、野党幹部の1人である立憲民主党の福山哲郎幹事長は「解散権は首相にある。それを『気まぐれだ』と自分で認めている。よく分からないが、『解散について、はっきりと言明をしない』ということだと思うので、こちらが右往左往するような発言だとは思わない」と語っていた。

安倍首相の発言は明らかに誘い水である。菅氏の言葉と同じだ。安倍首相は自ら野党に王手をかけたのである。そうでなければ、わざわざ「永田町が風に敏感だ」などと切り出すわけがない。

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