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焦点:悲観の債券市場と楽観の株式市場、正しいのはどちらか


[東京 7日 ロイター] - 株式と債券で大きなギャップが生じている。リセッション(景気後退)さえ織り込むほどの勢いで金利が低下しているのに対し、株価は反発基調。株価と債券の同時高は珍しいことではないが、景気に対するセンチメントは悲観と楽観で大きく異なる。果たしてどちらが「正しい」のか──。両陣営とも大きな関心を持って互いをみつめている。

<「ブレグジットリスク」以来のギャップ>

野村証券が市場データから算出するグローバルセンチメント(プラスがリスク選好的、マイナスがリスク回避的)によると、6日時点で債券のマイナス2.5ポイントに対し、株式はプラス1.7ポイント。乖離(かいり)幅の4ポイント台が継続するのは、市場が「ブレグジットリスク」に揺れていた2016年8月以来のことだ。

こうした見方を反映して、足元の市場では債券高(金利低下)と株高の同時高が進んでいる。日本の10年国債利回り<JP10YTN=JBTC>は約2年ぶりの水準に低下。一方、株式市場は反発基調にあり、7日の日経平均<.N225>は約1週間ぶりの高値を付けた。

「早期の米利下げ期待を織り込む動きとはいえ、金利低下がリセッションを前提としたような動きであるにもかかかわらず、株価は堅調。両者のセンチメントにはかなりの開きがみられる」と野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏は指摘する。

元々、債券市場は悲観的で、株式市場は楽観的と言われる。貸金の返済という信用が取引のベースにある債券市場に対し、「夢を買う」という将来の成長に賭ける株式市場との違いがあるとされる。不況に対応した金融緩和で株高が起きる「不況下の株高」というケースもある。

実際、株高・債券高の同時高はそう珍しいことではない。直近では2016年後半から2018年上旬まで、株高・債券高の順相関の時代が続いた。

<金利低下促す潜在成長率の低下懸念>

しかし、BNPパリバ香港・アジア地域機関投資家営業統括責任者の岡澤恭弥氏は、今回は長期的に見れば、債券市場の今の動きが正しいかもしれないとの見方を示す。

「トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争によって、世界的な生産体制の最適化が難しくなった。企業のコストアップは潜在成長率の低下につながる。それを金利低下が織り込みに行っているとすれば、いずれ株価は崩れる」という。

金利低下は景気にはポジティブ材料だが、「これだけ世界的に金利が低いのに景気が一向に強くならないのは、潜在成長率が低下しているからではないか」──。海外ヘッジファンドの中では、こうした見方が浮上しているという。

貿易戦争による影響を織り込むというスタート地点は、債券も株式も同じ。だが、景気減速懸念を強く警戒する債券市場に対し、株式市場は、景気減速の結果出て来るであろう金融緩和と財政出動をプラス材料とみる。その違いが足元の債券と株式のセンチメントギャップにつながっているようだ。

株式市場が期待するように、金融緩和策と財政拡大策で潜在成長率の低下が食い止められるのか。「両政策とも発動余地が乏しくなっているほか、潜在成長率を高めるような、よい投資先がない。大して効かない政策を組み合わせても、効果があるようには思えない」(外資系証券エコノミスト)と冷めた見方もある。

<警戒すべき金利低下の「自己実現」>

金利低下には、警戒しなければならない悪影響もある。急速な金利低下や、逆イールドカーブの出現は、リセッションを想起させ、市場参加者に株売りなどの行動を促す要因になるためだ。株安で逆資産効果が働けば景気を下押し、金利低下は自己実現的に正当化される。

また、金利低下は金融機関には利ザヤを減少させ、収益面でのマイナス要因になる。ただでさえ収益力低下に悩む銀行が多くなっている中で、金利の一段の低下は収益をさらに圧迫しかねない。

JPモルガン・チェース<JPM.N>1.4倍、ウェルズ・ファーゴ<WFC.N>1.05倍、バンク・オブ・アメリカ<BAC.N>1.00倍。株価純資産倍率(PBR)で1倍以上の大手銀行が世界で唯一残るのが米国だ。資本力の強さが株価に表れている。

足元のマーケットでは、一部を除いて、世界の銀行のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などが強い警戒感を示すには至っていない。MSCI米国金融株指数<.MIUS0FN00PUS>も、今週に入ってからS&P500指数<.SPX>を上回る上昇率をみせている。

それゆえ、米銀行にさえ金利低下による収益低下の懸念が襲うときは、警戒しなければならないとBNPパリバの岡澤氏は話す。「米銀の株価が下がるときは、よりリセッションの確率が高くなる。それをベンチマークとして、いつも見ている」という。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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