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脱・新聞の若者離れ(4)番組で街づくり 中海テレビ

武蔵大学社会学部メディア社会学科松本ゼミでは、春休みにフィールドワークを行い、学生たちが地方新聞社などを取材した。近年、「若者の新聞離れ」が叫ばれているが、「新聞(ニュース)の若者離れ」も起きている。地方紙や地方テレビ局は存続をかけてどのような戦略を取るのか。第四弾は、鳥取県にある中海テレビ放送を紹介する。

中海テレビ放送

中海テレビ放送は、鳥取県の西部エリアの米子市、境港市、日吉津村、大山町、南部超、伯耆町、日南町、日野町の2市5町を対象にサービスを提供するケーブルテレビ局である。中海テレビ放送では、他のケーブルテレビ局と同様にインターネットサービスやBS・CSなどの専門チャンネルを放送するだけでなく、コミュニティチャンネルなど地域に密着した番組も放送している。今回は、地域に寄り添い様々な活動をしている中海テレビ放送を取材した。(武蔵大学松本ゼミ支局=村田悠夏・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

中海テレビ放送取締役副会長の高橋孝之さん

鳥取県には島根県と合わせて3つの地上波放送局が存在する。そうした中でケーブルテレビ局の中海テレビ放送が開局したのは平成元年である。

当時、3つの地上波放送局の中で最も歴史のある山陰放送でも、全体の約7.8パーセントしかローカルな内容の放送をしていなかった。そのため多くの人々は地元の新聞から地域情報を収集していた。

地域の放送局であるならば地域に根差した放送をするべきだという考えから、地域情報を放送できるケーブルテレビ局を目指して中海テレビ放送は地域に根付いた番組作りを始めた。そんな中海テレビ放送には6つのコミュニティチャンネルがあり、それぞれ特徴のある番組を放送している。

地域専門チャンネルでは各地域の行政や学校、公民館、ボランティア団体などから寄せられた地域情報を発信している。各地域で番組を制作するため放送されている内容は異なり、それぞれの地域でしか見ることのできない情報が放送されている。チャンネル番号は同じでも自治体ごとに放送される内容は異なるという点が大きな特徴である。

パブリックアクセスチャンネルでは、市民から投稿された作品を放送している。パブリックアクセスチャンネルを始めた当初は、年間150本ほどの動画が寄せられ、その内容は運動会や家族旅行などホームビデオのような作品が多かった。

ここ5年で年間の本数は減ってはいるものの、地元の高校生が制作したものや地域の講演会の様子を撮ったものなど以前よりもクオリティの高い作品がより多く投稿されるようになった。

そんなコミュニティチャンネルの中でも中海テレビ放送が一番力を入れているのがニュース専門チャンネルである。ニュースは人々に同じ価値観を認識させることができる。現状をそのまま映し出すことは誰でもできるが、本当に重要なことは、ある問題に対して原因を探り解決策を提示することだ。

例えば死亡事故が増えたというニュースの場合、なぜこんなに人が死ぬのかを番組で検証し、交通安全の勉強会を開き、それを取材しニュースにする。

高橋さんは「特集内で問題提起を行い、将来を予測して人々を良い方向に導くことがメディアの使命である」と語る。ニュース専門チャンネルでは、平日6時30分から8時までの1時間30分、13時30分から昼のニュース、18時から30分の夕方のニュースの1日3回生放送を行い、24時間リピート放送をしている。このようにケーブルテレビでニュース専門チャンネル持っていることは、ほかにはない中海テレビ放送ならではのものである。

その他にも行政からのお知らせやイベントの情報などを文字で提供したり地震情報や注意警報などの災害情報を提供する生活情報チャンネルの開設、鳥取県議会の様子を生中継したり、鳥取県内のケーブルテレビ局が制作した番組を放送する県民チャンネルの開設など、チャンネルの種類が豊富であり充実している。

地域に密着した番組作りのために

中海テレビ放送では番組作りの際にどのような番組を作りたいかではなく、どういう街を作りたいかに焦点を当てている。そのために何が必要か、住民が何に困っているのかなど住民のニーズに合わせた番組を作っている。そのためには住民のニーズを知る必要があるので、情報収集のためのネットワークをつくった。そこから集められた全ての情報を加工していく。

つまり、住民が最大のスポンサーとなり得るのである。住民から得た情報の中に課題をみつけ、メディアが新たな提案をする。メディアが行政と住民とのつなぎ役となり、これらが一体となって良い町を作っていく。これがメディアの役割であると高橋さんは語る。

これからのケーブルテレビ局のあり方

最後に、高橋さんに今後のケーブルテレビや地上波、モバイル放送などがどのように変わっていくのかについて話を伺った。

これからはコンテンツの奪い合いとなると高橋さんは語る。「みんなはコンテンツがみたい。そのため、コンテンツを持つこと、コンテンツを集めて加工してデリバリーする技術が大切。それにケーブルテレビは変化できるかどうか。これからメディアやケーブルテレビがどうなるか考えていかないといけない」。

しかし、コンテンツを作ろうと言葉で言ったとしても経営者の理念や情熱がないと難しいと高橋さんは語る。コンテンツは何を訴えるかという目的、理念があるからできるものなのである。

そのため中海テレビ放送では、企画書の段階で目的や演出、インパクト、学びなどを徹底的に追及する。番組制作においては、人々が関心を持ち行動することが大事なのだ。

例えば、中海を10年で以前のように泳げる中海の姿に戻し、活性化を行う「中海再生プロジェクト」というものがある。この番組がどれだけの人に見られたかという事ではなく、この番組を通じてどれだけ中海がきれいになったかどうかが問われるのである。

多くの人に見てもらう以上、人々の貴重な時間に見合うもの、説得力のあるものを提供しなければいけない。そのため、中海テレビ放送では打ち合わせや編集にも時間をかけ、ワンシーンを大切にして取り組んでいる。

充実したコミュニティチャンネルを用いて地域に貢献し続ける中海テレビ放送。住民からの声に耳を傾け番組を放送し続けるその姿勢は、地域のことを思う強い熱意が感じられた。また、その他にも高橋さんは地方創生を目指し新たな構想を抱えているそうだ。これからの動きにも目が離せない。

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