今日の横浜北部は朝から晴れております。やや蒸し暑いですね。
さて、最近の一連のオフショア・バランシングの議論を、現在の例に応用してみます。
このような話をしてきてみなさんも気になるのは、
「トランプ政権はオフショア・バランシングをするのか?しつつあるのか?」
という点だと思います。
「すでにやっているじゃないか!」
として、韓国との大規模な軍事演習の中止や、中東におけるシリアからの撤退示唆などを引き合いに出して論じることもできそうですが、実際にその現状を見てみると、やはり
「オフショア・バランシングはしていない」
と断定できます。
もちろんこれを受けて
「ですよね?!トランプ政権にもここまで過激な大戦略のオプションは取れませんよね?!」
と安心することはできるとは思うのですが、実は私は、トランプ政権が本ブログでここまで論じてきたようなOB論のロジックと似たような戦略をとりつつある、と見ております。
それにあえて名前をつければ
「仮想オフショア・バランシング」(virtual offshore balancing)
となるのかもしれません。
「仮想?なんじゃそりゃ?」
といぶかしがる方もいらっしゃるでしょうが、私が言いたいのはこういうことです。
まず、トランプは選挙戦を開始した当初から「アメリカ合衆国を再び偉大にしよう」(Make America Great Again: MAGA)や、「アメリカ・ファースト」という標語を掲げて運動していたことは皆さんもご存知の通りです。
ところがこの「アメリカ優先で行く」という姿勢には、
「同盟国にもこれまでの世界秩序の維持のコストを負担してもらうぞ」
というニュアンスが多分に含まれておりました。
これは当然のように、トランプの主な支持基盤である共和党寄りの右派で、以前からアメリカの海外派兵に懐疑的だった有権者たちに目を向けた政策であります。
このような議論を提唱する代表的な識者は、ちょっと古いですが、パット・ブキャナンや、彼が創刊したアメリカン・コンサバティブ誌に集結している人々。
世代が新しくなると、ここに前述のバノンや、彼が引き継いで大きくしたブライトバートなどが入ってくるわけです。
ただし有権者たちは、もちろんこのような人々の意見や雑誌は読まず、もっぱらフォックスを見るような人々が大半だといえるかもしれません。
さて、このような「われわれの兵士を海外の知らない国で戦わせるな!」「海外派兵はコストだ!」と考えている人々は、アメリカの同盟国の存在も気に食わないことになります。
なぜなら彼らにすれば、同盟国というのはアメリカの国民の支払う税金によって運営されている世界最高の軍事力に
「タダ乗り」(フリーライド)
している存在だということになるからです。
このような自分を支持してくれる一部の有権者の感情を知っているトランプ大統領は、これを受けて同盟国に対しても強く当たります。
ブルームバーグのコラムニストで、ジョンズホプキンス大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院の教授であるハル・ブランズは、このようなトランプの姿勢を、あるコラムの中で
「反同盟的衝動」(anti-alliance instincts)
という言葉を使って表現をしております。
ここまで書いて時間切れです。続きはまた明日。
