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「当事者は“ひきこもり”という言葉を目にするだけで、追い込まれる状態にある」 ひきこもりUX会議・恩田氏が語る当事者の思い

AP

5月28日、川崎市で20人を殺傷した事件が起きた。自ら命を絶った犯人は、長期間ひきこもりの状態だったという。その4日後の6月1日には、東京都練馬区で農林水産省の元事務次官が長男を殺害。長男はひきこもり状態にあったといい、容疑者は警察の調べに対し「川崎の事件を知り、長男が人に危害を加えるかもしれないとも思った」と話しているという。

ひきこもり当事者らでつくる支援団体「一般社団法人ひきこもりUX会議」代表理事の恩田夏絵さんは「当事者は“ひきこもり”という言葉を目にするだけで、追い込まれる状態にある」と訴える。恩田さんに事件を受け、当事者や家族の今の心境や、事件が起きた背景について話を伺った。【石川奈津美】

UX会議は川崎殺傷事件の3日後の5月31日、事件の報道についての声明文を発表。大きな反響を呼んだ。

これまでもひきこもりがちな状態にあった人物が刑事事件を起こすたび、メディアで「ひきこもり」と犯罪が結び付けられ「犯罪者予備軍」のような負のイメージが繰り返し生産されてきました。社会の「ひきこもり」へのイメージが歪められ続ければ、当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねません。

また「8050問題」とは、ひきこもり当事者とその家族の高年齢化傾向にともなう課題を指しており、今回のような犯罪行為に結びつく可能性を含む問題という意味ではありません。今回の事件と関連づけて「まさに8050問題」と表現することも適切ではないと考えます。

以上のことから、報道倫理に則り、偏った不公正な内容や、事件とひきこもりを短絡的に結びつけるような報道はしないことを報道機関各社に求め、「ひきこもり」や「8050問題」に対して誤った認識や差別が助長されないよう、慎重な対応を求めます。

http://blog.livedoor.jp/uxkaigi/archives/1074749357.html

恩田さんは「今回の事件と、今ひきこもり状態にある人は全く関係ありません。ただ当初、それがうまく線引きされずに、ひきこもりを責めたてるような報道が見受けられました」と振り返る。

「ただ、今回、声明を早めに出せたこともあり、TV番組でも事件とひきこもりをイコールするものではないと付け加えられていたり、ひきこもりを断罪するようなものにはならないような意図を感じるようになってきており、配慮も感じています」と報道の変化について語る。

しかし、報道の内容にかかわらず、当事者は「ひきこもり」という言葉を目にするだけで、追い込まれる状態にあるという。

「当事者は、ただでさえ『ひきこもりである自分は世の中に必要ない存在だ』『甘えていて情けない』、と自分を責め、生きづらさを感じ悩んでいます。

その象徴である“ひきこもり”という言葉がかつてないまでに連日様々なところで取り上げられ、心穏やかでいられるはずはありません。

SNSで一度でも目にしたり、テレビで耳にするだけでも、かなりの不安を感じているという状況にあることを知っていただきたいと思います」(恩田さん)。

「親が自分の責任だと思い子どもを殺す」を正当化する家族観

一方で練馬区で起きた殺害事件後には、容疑者の父親に対し、ネット上で「よくやった」と肯定する声も上がっている。

こうした声について恩田さんは、「専門性もない中での私見になりますが、こうした賛同の声が多く見える点に関して、日本の家族観を象徴しているとも感じました」と話す。

「人の命はその人以外の誰のものでもないはずです。誰であっても誰かを殺してはならないというのは明白な事実のはずです。

容疑者に対し『よくやった』という発言にあるように、『親が自分の責任だと思い、子どもを殺す』ということがある種認められるということは、親子であることによって個人と個人という事実が曖昧になり、子どもを自分の所有物のように考えているようにも捉えられるなと感じました。

子どもが犯罪を起こしてはいけないから自分で始末をつけるという発想もそうですし、子どもが事件を起こした時に親に対してのバッシングがあって当然とする考えは、家族を個人の集合体と考えるのではなく、家族ありき、さらに父親ありきの家父長制という家族観が根底にあるのではないかという気がしました。

そして、そういった『子どもがこうなったのは、自分の責任だ』という強い思いが、父親を悲しい事件へと追い込んでしまったのではないでしょうか」。

川崎殺傷と元次官の事件に共通するのは「孤立」

恩田さんは「今はまだ事件発生直後で情報が限られているため、何が起きたのかということをしっかりと検証する必要がある」と前置きした上で、川崎と練馬の事件に共通していたことを「孤立」だと指摘する。

「川崎の事件も犯人の人柄などの情報が出てこないということが孤立を表していますし、練馬区の事件に関しても、親御さんは行政などの窓口にも相談されていなかったと聞いています。

ひきこもり当事者やその家族は『恥ずかしくて誰にも打ち明けられない』『家族のことだから家族で解決しないといけない』と考えてしまいがちです。その結果孤立状態に陥りやすく、当事者を、そして家族追い込まれていきます。

能動的に「ひとり」でいることと、さまざまな背景によって「助けて」が言えない状況に追い込まれることには大きな差があります。憶測になりますが、今回の事件も、もし、誰かに助けを求めていたら、どこかと繋がっていたらこうはならなかったのかもしれないと、思わずにいられません。」(恩田さん)

「事件を受け、自身や家族がひきこもりであることを責め苦しんでいる人たちはたくさんいます。でも、決してひとりではないということを伝えたい」と恩田さんは話す。

「ひきこもり当事者やその家族に限らず、立ち止まることが許される社会であることが大切だと思います。いままさに困っている方は、まず、誰かを頼るということをしていただきたいです。当事者団体や家族会はもちろん、ひきこもり地域支援センター、社会福祉協議会や民生委員、信頼できる誰かでも、まずは少しでもいいので相談してみてください。解決に直結しなくとも、いま困っている状況を誰かに共有する、共感してもらえるということがまず大切です。

繰り返しになりますが、ひきこもりは決して否定される存在ではありません。私達も、『ひきこもりにならないために』『ひきこもりを回復するために』といった視点ではなく、世の中の孤立をどうしたら少なくできるのか、ということに焦点を当てていきたいと思います」。

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