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「死ね」という言葉が不幸を生む

■2つの事件は偶然に起こったのか?

 「川崎市殺傷事件」を起こした犯人が事件後に自殺したことに対して「死ぬなら(一人で死ね)ばいい」と言う人が大勢いたとして、その冷酷な言葉が問題となった。

 ただ、この場合の「死ぬなら(一人で死ね)ばいい」というのは、「自殺を考えている人は(一人で死ね)ばいい」という意味ではなくて、「他人を巻き添えにするぐらいなら(一人で死ね)ばいい」というニュアンスだったことは言うまでもない。あくまでも「他人を巻き添えにする」という行為が伴った場合の話だった。

 「川崎市殺傷事件」の4日後、間髪入れずに、元農林水産省の事務次官が、ひきこもり(引き蘢り)の息子を殺害したというショッキングな事件が報道された。
 この事件では、ひきこもりの息子が殺された事件ということで、なぜか「ひきこもりは犯罪予備軍」というレッテル貼りのような言葉が喧伝されるようになった。

 しかし、これも「ひきこもりは(全員)犯罪予備軍」という意味ではなくて、たまたま、親の脛を齧って生活していたひきこもりのドラ息子が犯罪を起こす危険性があったというだけの話だった。

■シンクロニシティのような2つの事件

 「ひきこもり」とは、学校にも会社にも行かず、半年間以上、家族以外の人間と交流がない人のことを指すらしいが、一口に「ひきこもり」と言っても、様々なタイプがいる。
 何か悩み事があってひきこもりになっているタイプと、親が金持ちなので、働かなくても親が面倒をみてくれるタイプのひきこもりもいる。親の年金をあてにしたひきこもりもいれば、早期リタイヤした億万長者のひきこもりもいる。“受動的なひきこもり”と“能動的なひきこもり”は全く違う。

 息子をメッタ刺しにして殺害した元官僚の父親は「川崎の事件が頭をよぎり、周囲に迷惑がかかると思った」と供述しているという。
 その供述が本当のことなのかどうかは判らないので、現時点では鵜呑みにすることはできない。しかし、同時期に発生した今回の2つの殺人事件は、まるで、何か因果でもあるのではないか?と思わせるシンクロニシティのような事件だった。

 「死ぬなら(一人で死ね)ばいい」という言葉の曲解が、「ひきこもりは犯罪予備軍」という誤った認識を生んだとも言える。「他人を巻き添えにするぐらいなら(一人で死ね)ばいい」とするために、「ひきこもり(のドラ息子)は犯罪予備軍」として殺害されたのだとすれば、実に皮肉な話だ。

 この2つの事件を巡って、マスコミでもネットでも行き過ぎた理想論が飛び交っているが、「死ね」というような言葉の使用が、そもそもの不幸の始まりだったのかもしれない。こういう誤解を生んでしまうようなマイナス言葉は、なるべく使わない方がよいのかもしれない。

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