記事

男性の育休「義務化」は日本の男性をパパにするのか?

2/2

フランスの「父親産休」の成功の秘訣は?

 「家にいても役に立たないパパ」を作るのは、子育てという長い事業のスタートアップを一緒にきれていない初動の関わり方である。

 私が「義務化」という時のイメージは、「フランスの男性と子供の受け入れのための休暇」だ。今日の発足会では、友人のフランス在住ジャーナリスト高崎順子さんに翻訳してもらった資料「フランス・父親休暇の評価報告」を引用して、発言した。資料はこちら

 高崎さんによると「「海外では父親にも「産休(出産直後の休業)」と「育休(保育園に託さず自宅保育するための休業)」を分けて考えている」ということだ。

 この報告書は前者の「産休(出産直後の休業)」についてであり、この制度は2002年から導入され、取得対象の父親の7割がとっている。企業が3日、政府が11日間を負担する14日間の休暇だ。別名「父親ブートキャンプ」。半ば強制的に「父親にする」ための休暇である。「病院にいる間に、父親の来院に合わせて、沐浴やオムツ替えなどの両親ともに指導をする」というほど「教育」も徹底している。

 一方、フランスでも後者の「育休」の方は全く普及せず、取得比率は日本と同じぐらい低い。報告書には「子の誕生直後の父親休暇は父子の長期的良好な関係の形成を決定づけるものであり、その効果は思春期まで影響する。フランスにおいては、父親休暇は家庭内での長期的な家事育児分担にもポジティブな影響を与えているとのデータが出ている」とある。

 フランスの父親育休は「出産直後の心身脆弱な状態に置かれた母親たちにとって、父親の存在は「脆弱な状態で孤立しないこと」を意味し、母子の保健環境の改善につながる」という位置付けでもある。産後の母親が心身ともに辛い状況にあるのは「日本での産後の妻の死因の一位は自殺」というショッキングなデータでもわかる。

 「父親ゴロゴロ」問題は、産前産後の「両親教育」と「男女で過ごす子育てスタートアップ」休暇で解決するというエビデンスがすでにフランスにはあるのだ。

必要なのは「子育て事業スタートアップ休暇」

 産後すぐの2週間以上の「子育てスタートアップをカップルで過ごせる男性育休(産休)」で、男性の長期の育児への関わりを増やしたい。ワンオペ育児を解消したい。

 必要なのは、まずは教育だ。日本には充実した産前の「母親学級」があり、自治体によっては「父親学級」「両親学級」もある。しかし四国の方から「少子化が進んだ自治体では、母親学級が精一杯で、父親や両親学級は開催できない」と聞いた。それなら「母親学級」を最初から「両親学級」として開催することが、なぜできないのだろうか?

 次のハードルはお金の問題だ。企業ではすでに「父親育休100%」を競う流れがある。三菱UFJ銀行や積水ハウスは30日間の有給休暇を「男性育休」に当てる制度を作っている。企業が、育児休業給付金ではなく、有給休暇で父親育休を取得させるのはなぜか。手続きなどの「使いにくさ」とお金の問題だ。男性育休100%取得企業に聞くとお金の問題は大きい。「休んでも役に立たないんだから、その分稼いできてよ」という妻ブロックも男性育休取得を阻むハードルとなる。

「金銭的な損失」については、今の雇用保険の給付金の水準を67%から80%に引き上げることで、社会労働保険の免除でほぼ100%の給与が保証されることになる。

 有給休暇による男性育休制度で、100%収入が保証されるのはありがたいが、育児休業給付金(雇用保険による)を使えば、企業はその分の人件費を浮かせて、代替要員などに当てることができる。有給を使うと「他の社員へのしわ寄せ」が解決しないのではという意見もある。

 次は財源の問題だ。日本では「産休」なのか「育休」なのかで財源が違うという問題もある。フランスの「父親休暇」は「育休」とは違うものと区別されている。報告書には「女性の産休に対応する『子の誕生直後家庭に入るための』男性の権利とされ」とある。日本でも同様の権利があってもいいのではないだろうか?

 何よりも「評価」や「迷惑」を恐れて、制度があるのに「使えない制度」化していることを、どう解決して行くのか? これはやはりトップダウンが効果的で、企業のトップが声をかければ横並び意識の強い日本では、あっというまに100%近くまで数字が上がる。実は企業の「男性育休100%」の達成はトップの本気度次第なのである。そしてトップの本気を後押しするのが法律なのだ。

 中小企業には負担が重いという話もあるが、議連の発足会で事例を発表した新潟のサカタ製作所、坂田匠代表取締役社長は「男性育休を取らせるのはそれほど難しくない」という。「売り上げが下がっても育休をとれ」と社員に明言して男性育休習得100%を実現した。その結果、売り上げは上がり、人手不足の新潟でも、採用には全く困っていない。

 他にも自営業者や非正規の男性への対処など、様々な問題はある。

 課題は父親をいかに子育てのスタートに巻き込み、継続的に子育てを「自分ごと」化してもらうかだ。

今回の議連発足には期待している。発起人代表の松野博一議員、和田義明議員、森雅子議員、松川るい議員と50名ほどの議員が参加する。加藤元厚生労働大臣はじめ、大臣経験者が十一人という大変パワフルな議連である。6月には中間報告をまとめるとのことで、今後のドラスティックな改革を期待したい。ぜひ「強めの周知義務」などの「弱いプッシュ」に終わらないで欲しい。

 「社会を変えるメッセージを持った政策」として「男性育休の義務化」は必要と筆者は確信している。家事も育児も仕事も背負い、どうして2030(2020年までに責任ある地位の女性を30%に)が達成できるのだろうか? 万策尽きた日本の未来には。「子育てする父親」こそ必要なのだ。

※Yahoo!ニュースからの転載

あわせて読みたい

「育児休暇」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。