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羽生善治九段 誰も知らない、1434勝の先にあるもの

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共同通信社

将棋の羽生善治九段が、歴代単独最多となる「公式戦通算1434勝」の新記録を達成しました。1985年12月18日にプロデビューしてから33年と6か月弱で稼いだ1434つの勝ち星。平均すると「年間40勝ペース」で勝ち続けたことになります。

「年間40勝」というのはどれほどすごいのか

将棋界において、“一流棋士の条件”として挙げられる数字があります。それは「30」。年間30勝というのが、“一流棋士、今勢いのある棋士”のひとつの基準となっています。実際、「年間30勝できる棋士」の数は限られます。ここ5年の「年間30勝以上」の人数は以下の通り。

2014年…9人
2015年…12人
2016年…12人
2017年…18人
2018年…16人

140人ほどいるプロ棋士の中で、年間30勝できる棋士は1割ほどということが見てとれます。そこに「10勝上乗せ」したペースで、30年以上に渡り勝ち続けた羽生九段の凄まじさを見て取ることができると思います。

「勝率7割」というのはどれほどすごいのか

勝率にも“一流棋士の条件”と呼ばれるための数字があります。それは「6割」。10年、20年と指し続ける中で、通算勝率が「6割」を越えている棋士は、“若手の時期を経て、中堅棋士となってからも、時代の変化に対応しながら衰えることなく勝ち続けている“と評価されます。そこへきて、羽生九段の現在の通算勝率はいくつなのか?なんと、驚異の「7割8厘」!1割増しなのです。

ここ数年の羽生九段の成績は?

1985年12月にプロデビューした羽生九段が、すべての棋戦に参加しはじめたのは1986年度から。その86年から2018年に至るまでの間に、羽生九段が「年間30勝」を逃したのは3度だけ。1度目は「七冠王」になった1996年。この年は「テレビ対局や一般棋戦をのぞく対局がすべてタイトル戦」というハードモード。タイトル戦の予選がない分、対局数は減り、相手は“予選を勝ち抜いてきた挑戦者ばかり”という状態が続く1年でした。この年の成績は26勝17敗 勝率.604。“ノッている挑戦者”ばかりと戦ってきた1年でも「勝率6割」を達成しているところにその強さを感じます。残り2度の「年間30勝切り」はいずれもここ数年。

2016年…27勝22敗(.5510)
2017年…32勝22敗(.5926)
2018年…29勝23敗(.5577)

20年ぶりに年間30勝を達成できず、かつ、はじめて年間勝率6割を切った2016年。しかし、翌年は竜王戦挑戦者となり、永世竜王・永世七冠を達成。年間勝利数は「30」を超えたものの、勝率6割にはギリギリ届かなかったあたりに、若手の躍進を見ることができます。そして昨年度も30勝を切り、勝率6割ならず、さらに竜王を失冠する…という1年だったのですが、30勝まで「あとひとつ」の29勝、トップリーグのA級では名人挑戦者になり、その勢いで名人を奪取した豊島将之名人に次ぐ7勝2敗、さらにNHK杯トーナメントで優勝するなど、存在感を見せました。

現在のタイトルホルダーには共通点がある

将棋界にある8つのタイトルは、現在5人の棋士が保持しています。名人・王位・棋聖は「豊島将之」、竜王は「広瀬章人」、棋王・王将は「渡辺明」、叡王は「永瀬拓矢」、王座は「斎藤慎太郎」。豊島・永瀬・斎藤が20代、渡辺・広瀬が30代という若手・中堅棋士が占めています。今年2月に久保利明九段が王将位を失冠したことで、タイトルホルダーから40代が退場。何年も言われ続けてきた「世代交代」がいよいよ現実のものとなった様相です。

その中で、タイトルホルダーにはある共通点が見いだせます。広瀬竜王を除いた4名は「人前でコンピュータ将棋ソフトに勝った棋士」であるということです。

2007年、第16回世界コンピュータ将棋選手権優勝のBonanzaと対局し、勝利をおさめた渡辺二冠。2014年、第3回電王戦において、プロ棋士5人の中で唯一将棋ソフトから勝ち星をあげた豊島名人。2015年、電王戦FINAL第1局で勝利した斎藤王座、第2局で勝利した永瀬叡王。将棋ファン以外からも注目を集めたコンピュータとの対戦で結果を出した4人が、いずれもタイトルホルダーとして将棋界の第一線に立っています。

渡辺二冠がBonanzaから勝利をあげた2007年の時点では「コンピュータ将棋ソフトの強さも、いよいよ本物になってきたね」「このまま強くなっていったらどうなるんだろう」「Bonanzaはコンピュータ将棋にとってブレイクスルーだけど、“プロ棋士に勝つ”にはもう1回ブレイクスルーが必要」…そんな雰囲気でとらえていたのを覚えています。2007年といえば、あの藤井聡太七段が将棋をはじめた年。さらに「初代iPhone」が発表されたのも2007年。また、2005年にはYouTube、2006年にツイッター、ニコニコ動画が誕生するなど、現代につながるネット環境が整いはじめた頃でもあります。

今の20代の棋士は、その頃を小学生~中学生として過ごしていたデジタルネイティブ。歴代最多勝利数の記録を更新した後の記者会見で羽生九段は「最近の方が非常に若くて強い人がたくさんいる。」とコメントしましたが、まさにこの世代が新しい時代を作っています。

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