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「”お金があるから引きこもろう”と思う人はまずいない」元農水次官による長男殺害事件、元当事者の見方は



 「身の危険を感じ、周囲に迷惑がかかると思い殺した」。農林水産省の元事務次官・熊沢英昭容疑者が44歳の長男・英一郎さんを殺害した事件。自宅からは"長男を殺す"などと記された書き置きが見つかっているという。

 警察の調べに対し熊沢容疑者は、英一郎さんが家庭内で暴力を振るっていたと供述、さらに「川崎市登戸の事件が頭に浮かび、同じようにならないように考えた」という趣旨の供述もしているという。犯行当日、近くの小学校では運動会が行われており、"音がうるさい"と長男と口論になっていたとみられている。



 ひきこもりがちだったという英一郎さんは、オンラインゲーム上では多くの人に認知される存在で、本人のものとみられるTwitterには「2ちゃんのニートちゃん達へ 2018年5月の支払い予定分のご利用明細合計323,729円 これが今月の私のクレカの支払額だ 君達の両親が必死で働いて稼ぐ給料より多いんだよ(去年6月)」と投稿。

 また、父親である熊沢容疑者を自慢するような「立場を弁えなさい!!!庶民が私の父親と会話なんか出来る訳無いでしょうが!!!」「私は、お前ら庶民とは、生まれた時から人生が違うのさw」となどと投稿。その一方、母親に関しては「だから中2の時、初めて愚母を殴り倒した時の快感は今でも覚えている」「もし殺人許可書とかもらったら真っ先に愚母を殺すな(2014年10月)」と投稿していた。



 30年以上から"ひきこもり"という言葉を提唱、不登校問題などに取り組んできた精神科医の斎藤環氏は「ネットが普及して以降、ひきこもりの人のライフスタイルが変わったということはそれほどないと思う。そもそも、あまり人とつながろうとしている人が少ないので、私が見ている中ではゲームか動画か掲示板という感じだ。ゲームのヘビーユーザーもそんなにいないという印象を持っていて、そこそこ使っている人で5割~6割ぐらい。残りの人は何をしているかというと、部屋でぼーっとしていたり、横になったりとという人が多い。そんな中、今回は例外的なヘビーユーザーだという印象がある。ゲームに月32万円も課金していたということだが、私の経験では珍しい」と話す。

 さらに「Tweetの内容について、すごく自己中心的で傲慢な印象を受けるかもしれないが、そもそもSNS上はマウンティング合戦をするところなので、これは基本的な、デフォルトの書き方。本人がこの通りに考えていた可能性は低いと考えられるし、むしろ自虐というか、"親の金をこんなに使って暮らしている情けない状態だ"という自暴自棄な印象がある。もう一つ、長く引きこもっている方の何割かにみられる考えだが、彼も間違いなく自分の状況について不本意だと感じていたと思うが、その原因は親のせいだという考え方をしていた可能性も感じられる。

官僚のお父さんとは接点が少なかったと思うし、"立派な父親にとても及ばない自分"というような、ある意味で抑圧をすごく感じていたのではないか。そんな劣等感を感じつつも、人には半ばギャグとして"庶民ども"みたいな感じで父親を崇めたり、自慢したいといった屈折した意識を感じるところがある。一方、お母さんとは接点が多い分だけ恨まれやすいポジションにあったと思う。現状から遡って恨みを買うことはよくあるので、そういう可能性はあったと思う」と分析した。



 また、今回の事件は、離れて暮らしていた英一郎さんが戻ってきてから1か月という短期間に起きている。

 自身も24歳から約2年半のひきこもりを経験、現在は当事者たちの声を発信するメディア『ひきポス』編集長を務める石崎森人氏は、「"親にお金があるから引きこもったのでは"、という意見もあるかもしれないが、私の知る限り、人生がうまくいかなくなって、気づいたらひきこもり、抜け出せなくなっていた、というケースがほとんど。"うちにはお金があるから引きこもろう"と思うような人はまずいない。そのことをまず皆さんに知って欲しいなと思う」と指摘。「別々に暮らすことで親と一緒に暮らしていることのストレスから解放されていたはずなので、わざわざ実家に殴りに帰るようなことはなかったはずで、家庭内暴力は起きていなかったはず。その意味では別々に暮らしていたのは良かったことだったのではないか」と推測した。

 斎藤氏も「単身生活中は暴力のない、平和な状態が続いていたと思う。しかし帰って来るなり暴力が始まったと考えるならば、1か月は相当長い期間だと思う。というのも、慢性的に暴力を振るう人の場合、"ご飯がまずい""石けん替えていない"とか、"タオルが濡れている"とか、そういう半ば言いがかりみたいな理由で毎日暴れるので、どんどんピリピリした感じになっていく。そこに川崎の事件が起こったので、"そのうち外で何かやらかすのではないか"と思い込むのも流れとしては分かる」と話した。

 この「川崎の事件と同じならないようにと思った」という趣旨の供述に対しては、「将来的な犠牲者が出る前に、親が責任を持ってけりをつけたのか」「ある意味、立派なお父さんだ。情状酌量を」「殺人は悪。しかし加害者の気持ちも分かる」など、熊沢容疑者の心情を慮る声もある。

 斎藤氏は「私は同情的ではないところもある。なぜかと言いえば、お父さんが外に助けを求めた形跡がないからだ。保健所やカウンセラーもあるし、暴力なら警察、さらに警察経由で病院というルートもある。恥の意識やエリート意識があったのかもしれないが、自分で抱え込んで何とかしようという決意をされていたのではと思う。ただ、それにはどうしても限界があるし、暴力を振るわれ続けると、ある種の洗脳状態になり"殺す以外に手段がない"と思い込んでしまう。そうなると"助けを求める"という発想も出てきにくい。だから、あたかも殺すしかなかったというような世論には、ちょっと私は同調できない」との考えを示した。



 その一方、「外に出そうとすると反作用が起こるということはよくあること。どれだけ本人のことを思ってのアドバイスであったとしても、"社会に出るべきだ"という前提で関わること自体、非常に煩わしいと感じてしまう。私が知っている人の経験談で印象的だったのは、親から毎日"働け"とか"出ろ"と責められて苦しんでいたが、たまたま幼馴染が毎日散歩に付き合ってくれて、接し方としても、"たまたま色々難しい状況にあるだけで、とにかくまともな人間だ"という前提で付き合ってくれたので、結果的に抜け出すことができた、というものだ。やはり普通に接してくれる人の方が非常にありがたいのではないかと思う」と話した。

 議論を受け、カンニング竹山は「この1週間、自分なりに色々考えた結果、少し変わってきた。まだまだ勉強しないといけないし、暴論かもしれないけれど、"引きこもって何が悪い、別にいいじゃないか"って、そう思うようになった」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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