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- 2012年03月25日 23:57
企業がNPOと協働すべき3つの理由
こんなに驚いたことはないというくらい驚いたのだけど、先週金曜(3/23)の日経MJ朝刊1面に
パナソニック×クロスフィールズの「留職」プログラムを大きく取り上げて頂いた。
[画像をブログで見る]
自分たちのような設立間もない団体をこのような形で取り上げて頂いて、
担当して下さった記者さんやご紹介頂いた方には感謝の気持ちで一杯だ。
さて、こんな小さな団体が取り上げられたのは運が良かっただけだったとしても、
「企業とNPOの協働」という流れに今後益々注目が集まるのは間違いないだろう。
今回の記事で焦点があたっているのは、いま、企業がNPOとタッグを組んで
社員育成や新製品の開発を行なうようになってきているという新たな潮流だ。
ここで言う協働とは、「寄付します」とか「ボランティアします」といった
社会貢献の分野に閉じた伝統的な協働ではなく、企業にとってのビジネスそのものだ。
そう、いま企業は、ビジネスをするためにNPOと協働するようになっているのだ。
・・・と、いきなりこんな過激なことを言っても、マニアでもない限りは
なかなか理解できないと思うので、いまなぜ企業がNPOと協働しようとしているのか、
その理由を自分なりに3つほど書いてみたいと思う。
まず第1の理由は、活動現場を持つNPOに入っていくことで、
企業が普段は聞くことのできない顧客の生の声を聞けることにある。
記事にも書かれているように、ベネッセは教育系のNPOであるカタリバに社員を
派遣している。これは、教育の現場での活動に入り込むことで、高校生たちから
「通常のグループインタビューでは聞けない本音が次々と飛び出す」
ことにベネッセがビジネス上での大きな魅力を感じていからである。
クロスフィールズがベトナムNGOでの現地業務をアレンジした
パナソニックの社員さんも、「データや調査レポートを通じて見ていた
ベトナムとは全く違う、そこに住む人たちの"顔"が見えるようになった」
と繰り返し言っていた。これも、駐在員たちが都市部にある駐在所と高級住宅地とを
往復することでは見えてこない、現地マーケットの深い理解へと繋がっている。
このように、NPOを生活の現場を熟知するパートナーだと捉えて協働する
新たなアプローチで、先進的な企業は社会の現場に入り込もうとしているのだ。
これはこのブログでも再三書いてきたことだが、若手世代がモチベーションを
感じる源泉は「目に見えるもの」から「目に見えないもの」へとシフトしている。
とにかくお金を稼いで利益のみを追求するという仕事ではなく、
社会を変えているという実感を持てる仕事に対してこそ、
特に感度の高いビジネスパーソンほど魅力を感じるようになっている。
こうした社員のモチベーションの源泉の変化に目をつけた企業が、
NPOとの協働を社内で戦略的に取り組み始めているのだ。
たとえば、NECやパナソニックは、サービスグラントという団体と組んで
本業のスキルを活かしたNPOへのスキル提供(プロボノ)を企業内で実施することで、
社員のモチベーション向上や会社への帰属意識の強化を狙っている。
クロスフィールズが支援したパナソニックの社員さんも、ベトナムでの業務を経て
「松下幸之助さんが創業期に見ていた景色というのは、きっと"ものづくり"を
通して目の前の人や社会全体を豊かにできるという大きなビジョンだったのだろう」
ということを感じて、会社での仕事に対する考え方が大きく変わったという。
日々の業務を苦痛な義務としてこなす社員しかいない組織よりも、
目の前の仕事にも想い・情熱を持って取り組む社員に溢れた組織とでは、
組織としての力に、これからますます大きな差が出てくるに違いない。
そして最後に、NPOとの協働こそが、いま日本企業が
イノベーションを起こすために最も効率の良い方法だからである。
なぜか。それは、NPOとの協働とは「既成概念の枠を超えること」だからだ。
すべての企業がそうだとは言わないが、多くの日本の大企業のは、様々なルールに
しばられているように見える。若手が何か新しいアイデアを出したとしても、
それは前例がないだとか時期尚早だという理由で、アイデアや情熱の種は消えてしまう。
彼らには、そのアイデアを試す場や機会さえ、与えられることがないのである。
そんな中、NPOという異なる目的関数で動く組織とかかわることは、
企業が、組織や前例の壁や既成概念の枠を取り払う最高の機会になりうる。
NPOの多くは、既存の社会システムの延長線上では解決できないような難しい社会課題に、
非常に限られたリソースで立ち向かっている。そして、この何もない環境でのチャレンジは、
既成概念の枠を超えた素晴らしいアイデアを生み出すための最適な環境になっている。
例えばダノン社は、バングラデシュにおいてグラミン銀行と組んで
現地女性たちのネットワークを活用することで、低価格で栄養価の高いヨーグルトを
貧困地域の人々に提供して利益を上げることに成功しているが、
これは本社の会議室で社員がいくら頭を捻っても出てくるアイデアではない。
また、パナソニックの社員さんを派遣したベトナムNGOの代表は、その社員さんの言葉を借りれば、
「彼ほどに感性が研ぎ澄まされた人は日本にはいない。リソースがない中で、目の前の課題を
解決しようと必死に創意工夫を繰り返すことが、次々とアイデアを生み出せる人を育てている」
のだそうだ。この発言には、クロスフィールズのスタッフもとても驚いてしまった。
元P&G社CEOのA・G・ラフリーによれば、NPOとの協働に積極的に取り組む同社では、
イノベーションの40%以上が先進国以外の地域で生まれるようになったらしいが、これも頷ける話だ。
リソースがない中で困難な社会課題に取り組むからこそ、
既成概念の枠を超えた新たなアイデアが生まれるのだ。
だからこそ、NPOとの協働はイノベーションへの近道なのだ。
+ + +
以上、企業がNPOと協働すべき3つの理由を僕なりに書いてみた。
もしかしたら、NPOの活動をビジネスに活用するなんてけしからんという人が
いるかもしれない。でも、思い切って言ってしまうと、僕はその考え方は古いと思う。
もはや、ビジネスと社会貢献を別々に考えることは意味がない。
ビジネスとは社会に対して貢献するために存在しているし、
社会を変えていく活動こそが、企業活動そのものなのである。
これからますます社会課題が多様化・複雑化していく日本において、
多くの日本企業が創業期にもともと当たり前のように持っていた価値観に、
いまこそ僕たちは立ち返るべきだと、僕は強く思っている。
パナソニック×クロスフィールズの「留職」プログラムを大きく取り上げて頂いた。
[画像をブログで見る]
自分たちのような設立間もない団体をこのような形で取り上げて頂いて、
担当して下さった記者さんやご紹介頂いた方には感謝の気持ちで一杯だ。
さて、こんな小さな団体が取り上げられたのは運が良かっただけだったとしても、
「企業とNPOの協働」という流れに今後益々注目が集まるのは間違いないだろう。
今回の記事で焦点があたっているのは、いま、企業がNPOとタッグを組んで
社員育成や新製品の開発を行なうようになってきているという新たな潮流だ。
ここで言う協働とは、「寄付します」とか「ボランティアします」といった
社会貢献の分野に閉じた伝統的な協働ではなく、企業にとってのビジネスそのものだ。
そう、いま企業は、ビジネスをするためにNPOと協働するようになっているのだ。
・・・と、いきなりこんな過激なことを言っても、マニアでもない限りは
なかなか理解できないと思うので、いまなぜ企業がNPOと協働しようとしているのか、
その理由を自分なりに3つほど書いてみたいと思う。
① 企業が入り込めない現場で顧客の声を聞ける
まず第1の理由は、活動現場を持つNPOに入っていくことで、
企業が普段は聞くことのできない顧客の生の声を聞けることにある。
記事にも書かれているように、ベネッセは教育系のNPOであるカタリバに社員を
派遣している。これは、教育の現場での活動に入り込むことで、高校生たちから
「通常のグループインタビューでは聞けない本音が次々と飛び出す」
ことにベネッセがビジネス上での大きな魅力を感じていからである。
クロスフィールズがベトナムNGOでの現地業務をアレンジした
パナソニックの社員さんも、「データや調査レポートを通じて見ていた
ベトナムとは全く違う、そこに住む人たちの"顔"が見えるようになった」
と繰り返し言っていた。これも、駐在員たちが都市部にある駐在所と高級住宅地とを
往復することでは見えてこない、現地マーケットの深い理解へと繋がっている。
このように、NPOを生活の現場を熟知するパートナーだと捉えて協働する
新たなアプローチで、先進的な企業は社会の現場に入り込もうとしているのだ。
② 社員の"情熱"に火をつけることができる
これはこのブログでも再三書いてきたことだが、若手世代がモチベーションを
感じる源泉は「目に見えるもの」から「目に見えないもの」へとシフトしている。
とにかくお金を稼いで利益のみを追求するという仕事ではなく、
社会を変えているという実感を持てる仕事に対してこそ、
特に感度の高いビジネスパーソンほど魅力を感じるようになっている。
こうした社員のモチベーションの源泉の変化に目をつけた企業が、
NPOとの協働を社内で戦略的に取り組み始めているのだ。
たとえば、NECやパナソニックは、サービスグラントという団体と組んで
本業のスキルを活かしたNPOへのスキル提供(プロボノ)を企業内で実施することで、
社員のモチベーション向上や会社への帰属意識の強化を狙っている。
クロスフィールズが支援したパナソニックの社員さんも、ベトナムでの業務を経て
「松下幸之助さんが創業期に見ていた景色というのは、きっと"ものづくり"を
通して目の前の人や社会全体を豊かにできるという大きなビジョンだったのだろう」
ということを感じて、会社での仕事に対する考え方が大きく変わったという。
日々の業務を苦痛な義務としてこなす社員しかいない組織よりも、
目の前の仕事にも想い・情熱を持って取り組む社員に溢れた組織とでは、
組織としての力に、これからますます大きな差が出てくるに違いない。
③ イノベーションの源泉がそこにある
そして最後に、NPOとの協働こそが、いま日本企業が
イノベーションを起こすために最も効率の良い方法だからである。
なぜか。それは、NPOとの協働とは「既成概念の枠を超えること」だからだ。
すべての企業がそうだとは言わないが、多くの日本の大企業のは、様々なルールに
しばられているように見える。若手が何か新しいアイデアを出したとしても、
それは前例がないだとか時期尚早だという理由で、アイデアや情熱の種は消えてしまう。
彼らには、そのアイデアを試す場や機会さえ、与えられることがないのである。
そんな中、NPOという異なる目的関数で動く組織とかかわることは、
企業が、組織や前例の壁や既成概念の枠を取り払う最高の機会になりうる。
NPOの多くは、既存の社会システムの延長線上では解決できないような難しい社会課題に、
非常に限られたリソースで立ち向かっている。そして、この何もない環境でのチャレンジは、
既成概念の枠を超えた素晴らしいアイデアを生み出すための最適な環境になっている。
例えばダノン社は、バングラデシュにおいてグラミン銀行と組んで
現地女性たちのネットワークを活用することで、低価格で栄養価の高いヨーグルトを
貧困地域の人々に提供して利益を上げることに成功しているが、
これは本社の会議室で社員がいくら頭を捻っても出てくるアイデアではない。
また、パナソニックの社員さんを派遣したベトナムNGOの代表は、その社員さんの言葉を借りれば、
「彼ほどに感性が研ぎ澄まされた人は日本にはいない。リソースがない中で、目の前の課題を
解決しようと必死に創意工夫を繰り返すことが、次々とアイデアを生み出せる人を育てている」
のだそうだ。この発言には、クロスフィールズのスタッフもとても驚いてしまった。
元P&G社CEOのA・G・ラフリーによれば、NPOとの協働に積極的に取り組む同社では、
イノベーションの40%以上が先進国以外の地域で生まれるようになったらしいが、これも頷ける話だ。
リソースがない中で困難な社会課題に取り組むからこそ、
既成概念の枠を超えた新たなアイデアが生まれるのだ。
だからこそ、NPOとの協働はイノベーションへの近道なのだ。
+ + +
以上、企業がNPOと協働すべき3つの理由を僕なりに書いてみた。
もしかしたら、NPOの活動をビジネスに活用するなんてけしからんという人が
いるかもしれない。でも、思い切って言ってしまうと、僕はその考え方は古いと思う。
もはや、ビジネスと社会貢献を別々に考えることは意味がない。
ビジネスとは社会に対して貢献するために存在しているし、
社会を変えていく活動こそが、企業活動そのものなのである。
これからますます社会課題が多様化・複雑化していく日本において、
多くの日本企業が創業期にもともと当たり前のように持っていた価値観に、
いまこそ僕たちは立ち返るべきだと、僕は強く思っている。



