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「日中友好」に不可欠な「民間交流」の継続

(リベラルタイム 2019年7月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

笹川平和財団の笹川日中友好基金が主催する「日中佐官級交流事業」で自衛隊訪問団が四月十六日から十日間、中国を訪問した。

佐官級交流事業は民間組織である笹川日中友好基金が防衛省、中国中央軍事委員会国際軍事合作弁公室と中国国際戦略学会の協力で二〇〇一年にスタート。日中両国の防衛部門の中堅幹部による安定した交流チャンネルの構築と、これを基に交流のすそ野の拡大を目指す異色の民間事業として注目された。

しかし一二年、日本による尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化に伴い中国側が延期を申し入れたのを受け中止され、昨年二月、六年振りに再開された。昨年四月に中国側佐官団二十五人が来日、今回の日本側佐官団の訪中は昨年九月に続き再開後二度目となる。秋には中国の佐官団が来日する予定だ。

一行は栗田高明・一等空佐を団長とする十三人。北京、天津両市のほか、河南省、湖北省、広東省を回り、人民解放軍との意見交換や交流を進める一方、洛陽や武漢、広州市では街を散策、中国の人たちの日常生活にも触れた。筆者も日中友好基金の運営委員会委員長の立場で前半の日程に同行、北京市では国防大学国際防務学院などを訪問、中国の軍事外交戦略の一端にも触れた。

全行程に同行した日中基金関係者によると、河南省では省都・鄭州市にある中牟武装警察訓練基地でテロや市街戦を想定した射撃訓練などを視察。この後、中国の参謀長も出席した昼食会では、若い炊事兵が用意した料理や豊富な果物が自衛隊関係者にも好評。全体に友好的な雰囲気が続き、帰国後、日中基金が参加者に行った研修アンケートでも、交流事業を高く評価する声が多く寄せられた。

国境を接する二国間にはセンシティブな問題が常在する。事業開始当初、政府間では難しい軍事交流を民間が行ったことを評価する声の一方で、人民解放軍の諜報活動に手を貸すことになると懸念する意見も寄せられた。

ただし、戦争を最も嫌うのは、ひとたび戦争が勃発すれば真っ先に厳しい現場に立たされる軍人である。両国関係が抜き差しならぬ状況に陥ったとき、双方に互いを知る軍人がいれば回避できるケースもあろう。それ以上に、行き違いや誤解から不要な紛争が勃発する事態を防ぐ効果も期待できる。

日本政府観光局(JNTO)によると、昨年一年間に日本を訪れた中国人は八百三十八万人と前年に比べ一三・九%も増えた。中国を訪問する日本人も一七年は二百六十八万と四百万人を超えたピーク時に及ばないものの増加傾向にある。日本に対する中国人観光客の印象も「清潔で親切」、「マナーを守る」など上々のようで、自分の目で相手国を知る意味は大きい。国と国の友好は互いが互いを知ることで確実に深まる。

ただし、時の流れの中で人は死に新たな命と入れ替わる。民間交流は長く継続して初めて意味を持つ。親日派、親中派ではなく、相手を知る知日派、知中派を増やす努力こそ必要である。

筆者は一九八四年一一月、笹川良一・日本財団初代会長に随行して初めて中国を訪問、初代会長と中国の指導者・鄧小平氏との会談を間近に見る幸運に恵まれた。皆が会談を見守る中、初代会長は「世界の安定にはアジアの安定、アジアの安定には日中の安定が重要だ」と発言、鄧氏も「大賛成だ。互いに努力しましょう」と即座に同意された。

会談から三十年以上、歴史に名を残す両巨頭の言葉を信じて日中関係の発展に尽力してきた。日中関係の改善が進む中、再開された佐官級交流事業が初代会長の言う「日中の安定」に大きく貢献する日が来るよう、一層、取り組みを強化したいと考えている。

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