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令和初の国賓トランプ大統領の見せかけの融和 - 言いたい放題で参院選挙の交渉の大妥協を迫る礼儀知らず

<接待攻勢の返礼が言いたい放題か>

アメリカ流の交渉はドギツイが、ビジネス界で得意の取引(dealディール)とやらでのし上がり、果ては大統領にまでなったトランプ大統領は、言ってみれば「強引なアメリカ」の権化かもしれない。安倍首相なり日本政府の接待攻勢に大満足しただろうが、日米貿易交渉に関する発言は、恩義も何もなく、言いたい放題だった。それに対して、我がトップの安倍首相はダンマリを決め込み反論なし。見ていて苛々が募るばかりだった。

<1年前の日米共同声明を平然と無視>

18年9月の日米共同声明で、日本は「農産物関税撤廃・引き下げでTPP水準か最大限」とし、アメリカは「日本の立場を尊重する」としていた。しかし、そんな約束は全くおかまいなく、5月29日の共同記者会見では安倍首相の発言に割って入り、「TPPは他国の合意で関係ない。我々はTPPに縛られない」と平然と言ってのけた。日本側は、下の取り巻き(西村官房副長官・茂木担当相・吉川農水相)が慌てて打ち消しても発言の重みが違うし、時すでに遅しである。交渉に期限などないはずだが、「8月に大きな発表があると思う」と早期妥協を迫られるに至っては、開いた口が塞がらない。対する日本側はうろたえるばかりである。もう日米貿易交渉は勝負があった感は否めない。

<トランプ大統領には外交ルールが通用せず>

ゴルフ、相撲、炉端焼きと3連荘の国賓観光旅行の返礼とは思えないぶしつけな態度である。安倍首相が北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射を国連安保理決議違反と言うのに対し、トランプ大統領は、「気にしない」と事実上容認した。その弱腰と日本への配慮の欠如を共和党議員からも批判されている。日本に不義理をしながら安倍首相のイラン訪問をちゃっかり支持している。何から何まで勝手なのだ。

国賓は通常2日間の懸案事項を取り上げ、あてこすりなどしないのが普通である。トランプ外交は、外交上のルールも固定観念も何も通用しない、露骨なワンマンショーである。

<言われっぱなしで反論なしの体たらく>

自国の都合が悪い自動車関税の引き下げには全く触れず、「TPPはアメリカの製造業・自動車産業を潰す」「日欧の自動車輸出は安全保障上の脅威」だと正論(?)を吐く。日本こそ、「アメリカの農産物は、142億ドルも輸入しており、これ以上輸入すると国内農業は潰れ、地方に人が住めなくなる」「食料安全保障上これ以上輸入できない」と言い返さないとならないのに反論なし。

<国会答弁で習得した切り返しは外交ではみられず>

安倍首相の上から目線である国会答弁では、質問への切り返しがすっかりうまくなり、むしろ反撃を楽しんでいる。それなのに11回目になるという日米首脳会談での外交上の言い返しは全くなってない。安倍首相はいつも原稿どおり安全運転ばかりである。本気の交渉でもやられっぱなし、言われっぱなしなのだろう。これではなめられるばかりである。  

<政府自民党の選挙向けの嘘に騙されてはならない>

農産物については、実はアメリカのほうが焦っている。18年12月にTPPが発効し、同じく農産物輸出国の豪・加・墨・NZ等と比べ明らかに不利になっていることに加え、米中貿易戦争の中、中国の報復制裁関税により大豆等の輸入が減り、農業界は困っているからだ。アメリカも1年後の20年秋には大統領選があり、選挙を意識して外交で得点を挙げようとするのは同じである。ここに「日米選挙互助外交」と揶揄される所以がある。

<妥協済みとしたら大背任行為>

もっと危ういのは、選挙が近いから待ってやろうと恩を売り、その代わり終わった8月には、もう心配なくなるので大きな妥協をしてくれるんだろうな、という脅しの部分である。選挙のために(つまり妥協のために)交渉を先送りするというのは、国民・農民を愚弄するものである。

トランプ大統領は、「訪日前に決着」とへらず口を叩いていた時もあった。いかにも自信ありげに、「8月に大きな数字」と言い、日本側からろくに反論しないところをみると、もう秘密裏に決着しているかもしれない。押されっぱなしであろう茂木・ライトハイザー会談や事務レベル協議がもう整っていて、公表を8月に延ばしているだけだとしたら、まさに国民・農民に対する背任行為に他ならない。これを日本の国民も農民も許してはなるまい。

<トランプ流言動にも真理あり>

アメリカファーストはとりもなおさず、反グローバリズムである。世界は自由貿易などと戯言を言っているが、そんなことをしていたらアメリカ人の仕事は奪われ、国家として成り立たなくなる。自国の国民のため関税を上げてどこが悪い、という当たり前の姿勢である。

だから私は、トランプ大統領の言い分にそれなりの共感を持っている。かなり荒っぽいが成長神話に毒され過ぎた日本に、忘れてしまった当たり前のことを言っているからである。

アメリカは中国を叩いているが、日本まで敵に回すことは考えていない。だから日本はもっと高飛車に出れるのだ。

<自動車と農産物は同じ土俵には乗せられず>

日本は今や30年前の高度経済時代の面影は残っていない。世界を席巻した家電産業も衰退し、自動車産業だけがとりえの「一本足打法」と称される事態となった。自動車の交渉は幕内であり、金額でいうと5分の1の農産物交渉は序の口か三段目の取り組みにすぎない。同じ土俵に乗せる必要はない。アメリカが日本の自動車輸出をあげつらうなら、日本もアメリカの農産物輸出の自制を求めればよい。

マスコミなり評論家の論調は、いつものとおり単調である。自由貿易の御旗を降ろしてはならない云々の大合唱だけだ。イージス・アジョア(1基1,224億円)を2基、F-35A戦闘機(1機116億円)を6機で、3,000億円を超える。これを福祉に使えば云々ということが主張される。具体的数字が出てくると、もっともだなぁと思えてくるからである。

<日本の自動車・自動車部品輸出は突出し過ぎ>

ところが、日米貿易不均衡についてはかなりの新聞に目を通しているが、とんと数字にお目にかかったことはない。賢い日本の読者が、あまりの自動車関連の突出にびっくりして、アメリカ(トランプ大統領)の言うのももっともだと、気付いてしまうことを恐れているのである。

50年前も同じだが、日本の対米貿易は農産物の輸入を増やしたところで解消する代物ではない。アメリカの対中貿易赤字4,192億ドルは、8,787億ドル(約98兆円)の約半分に達するのに対し、日本は676億ドル(約7.6兆円)とずっとましだ(2018年)。

しかし、これがずっと続いていることにアメリカは苛立っている。内訳は、約8割が自動車と自動車部品によるもの。いくら一本足打法といってもひど過ぎる。これに対して、日本のアメリカからの農産物総輸入額は142億ドル(約1.6兆円)と貿易赤字額の20%にすぎない。牛肉や豚肉を多少多く増やしたところで、アメリカの対日貿易赤字の解消には雀の涙でしかない。つまり桁が違うのだ(ブログ:2016年4月22日「TPPは明らかに国会決議違反」参照)。

トランプ大統領は、長年生きたビジネスのやり方で取引し、実利を求めてくる。日本にとって痛みのある農産物の引き下げをチラつかせながら、実のある自動車での貿易を引き出さんとしているのは明らかである。こういう状況の中で、早々と譲るなど以ての外である。 

<日本もアメリカも自国ファーストでいくのが平和な道>

日本側からは、何とかの一つ覚えよろしく「ウインウインの関係」という言葉ばかりが出てくる。正解である。どの国にとってもその国(民)が必要とする大半のものはその国で造るのは自然であり、軋轢が生じない。アメリカでもっと自動車を造り、日本では農産物を作ったほうが双方とも幸福になれるのだ。

EUは立派である。交渉の対象から農産物は除外しており、トランプに「EUは中国より悪い」と言わしめている。

つまり、解決は単純である。お互いに貿易量を減らし「自国生産第一」でいくようにしていくのが一番近道である。これが昨今、皆が唱え出したSDGS(持続可能な開発目標)にもかなっていることをよく考えるべきである。

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