記事

米国の新聞部数は「デジタル版込み」が新常識に

米国ABC(Audit Bureau of Circulations=新聞雑誌部数公査機構)の5月1日付け最新レポートによると、つるべ落としのように部数減に見舞われていた米国新聞の部数が、3月末までの6ヶ月平均で下げ止まったということです。平日版で0.68%増、日曜版で5%増という数字です。

しかし、リリースをよく読むと、これはABCが1年半前に導入した新しい算定方式に基づくものでした。その新算定方式では、紙の新聞部数に加え、デジタル版(紙の新聞と同じ体裁のレプリカ版と、そうでないデジタル版の二通り)と、これまた新しい概念のBranded edition(新聞社が本紙と別に出すコミュニティ紙など)も含めています。で、ニューヨーク・タイムズに代表される有料デジタル版購読者の増大が、僅かとはいえ「部数増」の結果につながっているのです。

ABCによると全新聞部数の14.2%、およそ7分の1がデジタル版でした。前年同期は8.66%でしたので、デジタル版に限ると63%アップということになります。1月ほど前のBulldog Reporterの記事によると、米国では1350の新聞のうちすでに300紙がサイトの有料化に踏み切ったということですから、デジタル版契約者が増えているのは不思議ではありません。

で、デジタル移行に最も熱心なニューヨーク・タイムズ(NYT)は、紙部数が77万9731なのに対しデジタル部数は80万7026と紙を上回っていて、合計158万6757と前年比73.05%の大幅な伸びです。

サイト有料化で先鞭をつけたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、デジタル版が55万2288でNYTに抜かれてしまいましたが、紙ではUSAトゥデイの170万1777に次ぐ156万6027も確保し、トータルでは米国紙で唯一200万部を超える211万8315でトップを維持しました。そのUSAトゥデイのデジタル版は11万5669で、2位の181万7446でした。WSJは0.02%増、USAトゥデイは0.64%減でした。

その他、日本で知られている新聞ではロサンゼルス・タイムスが紙48万9514、デジタル10万221、トータル61万6575(1.87%増)で4位、ワシントン・ポストが紙46万7450、デジタル4万165、トータル50万7615(7.84%減)で8位となっています。

NYTの数字は、実数から言っても伸び率から言っても圧倒的なのでpaidContent.org の1日付けの記事の中で<New York Times is one of the clear winners>と絶賛しています。これが前回記事で取り上げたNYT前CEOの退職金20億円の素地になったのかも知れませんが、見かけの部数は増えても、実際の収入増には今のところ殆ど繋がっていないのが現実です。

NAA(米国新聞協会)のリトルCEOはデジタルも加えた部数公表方式についてBussinessDayの記事によれば、「新聞記事が読まれていることを示す透明性の高い有益な情報を広告主に提供できる」などとし「好ましい転換」と述べています。しかし紙に比べてデジタルの広告単価の極めて低いとされるだけに、「水増し」ならぬ「デジタル増し」部数の増加がこの程度ではまだまだ前途は多難でしょう。

あわせて読みたい

「ウェブメディア」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    セブンの斬新な飛沫防御策を称賛

    佐々木康彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  2. 2

    東京の緊急事態対応は「まとも」

    木曽崇

  3. 3

    よしのり氏 恐怖煽る報道に苦言

    小林よしのり

  4. 4

    コロナで日本の通勤者 僅か9%減

    幻冬舎plus

  5. 5

    二郎を残す客にALS患者が怒り

    恩田聖敬

  6. 6

    緊急事態会見はライターが上手い

    Chikirin

  7. 7

    「韓国に学べ」となぜ報じないか

    水島宏明

  8. 8

    緊急事態宣言を同時中継する忖度

    水島宏明

  9. 9

    藤浪感染で残念な私生活が露呈

    NEWSポストセブン

  10. 10

    マンションの看護師差別に呆れ

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。