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中国勢の台頭で、もはや立場が”入れ替わってる!?” 日本アニメの未来は暗いのか?


 今、"クールジャパン"を代表する日本のアニメ産業が激動の時代に突入している。

 制作会社が是正勧告を受けるなど、現場を支える人々の労働環境が問題になる一方、これまで作画などを発注してきた中国が急激に台頭。2015年に中国で制作された3Dアニメ映画『西遊記』が60か国以上で公開され、興行収入は200億円を超える大ヒットを記録するなど、日本の"下請け"に留まらない実力をつけている。


 中国のアニメ制作会社「絵梦(えもん)」が東京に作った制作スタジオでは、日本人クリエイターたちが中国国内で放映する作品に携わっている。クリエイターの一人は「日本の作品と笑いどころは違うなぁとか、お国柄を感じる時はあるけれど、"こんなのどうですか?"という提案をほぼ採用してくれる。自分の好きなものを作り出せる」と話す。


 同社の唐雲康取締役副社長は「一番の目的は日本の優秀なクリエイターと技術を集めて作品を作ることだ。やはり日本はアニメーションの聖地なので、優秀なアニメ企業の運営方法を学びたかった」と話す。

 また、李豪凌社長が監督を務めた作品は、新海誠監督の大ヒット映画『君の名は。』を手がけた日本の制作会社「コミックス・ウェーブ・フィルム」によるもの。つまり、"原作が中国で、制作が日本"と、これまでが構図が"入れ替わっている"のだ。


 背景には、中国政府の国産アニメ推進の取り組みがあるようだ。具体的には、テレビで放送されるアニメについては国産と海外産の比率を7:3になるよう規制、さらに17時~21時は海外産の放送を禁じる一方、1日30分は国産を放送するよう義務づけている。こうした取り組みにより、中国のアニメ産業は2017年に約2兆5000億円規模に到達、この6、7年で5倍近い市場規模に成長している。他方、「アニメ産業レポート2018」によれば、日本のアニメ産業の市場規模は2009年以降、右肩上がりで推移。特に2012年以降の伸びは顕著で、2017年に2兆1527億円に達している。


 しかし、アニメ業界に詳しいジャーナリストの数土直志氏は「この数字は世界における日本のアニメの市場。国内と国外に分解して見ると、前者の数字は2009年以降ほぼ横ばい。むしろ2014年の1兆3034億円をピークに、少しずつ縮小してきている。これから伸ばすためにはどうすればいいのか、という状態だ。その一方、2012年頃から急激に伸びている要因は、アメリカと中国で始まった日本のアニメの正規配信のための買い付け価格の高騰。グッズや原作漫画など、さらに先の市場も広がっていると思う」と話す。


 「ただ、中国のテレビ放送は"清く・正しく・美しく"ファミリー・キッズのものが主流で、日本の深夜アニメのような"美少女もの""アイドルもの"は入りづらい。また、2006~2007年くらいから、実は日本のアニメのテレビ放送許諾が一切降りておらず、事実上ゼロだ。テレビ放送の規制に対し、インターネットはとても緩かったために、日本のアニメが大量に流れ込んできた。中国というと海賊版が日本のアニメを食い物にしているというようなイメージもあったが、今は正規版を日本からかなり高い額で買って配信している。2、3年前までは番組企画を立ててアメリカと中国に配信のためのライセンスを売ると、制作費がほぼ回収できるというようなことも起きていた。今は一緒に作っていこうという流れも出てきているが、インターネットの方の規制もテレビ並みにしようという流れが強まっていて、日本のアニメが締め出され始めている」と話す。

 さらに中国では放送した「アニメの量」や「規模」での助成金、税制待遇事務所のレンタル費用割引、国による制作施設の設置などの支援を行ってきた。その結果、前出の『西遊記』のようが国産アニメ映画も生まれている。

 お笑い界随一のアニメオタクで、アニソンとお笑いを融合させたイベント「アニ×ワラ」を主宰する天津の向清太朗は「中国のCGは世界トップクラスだと思う。『西遊記』以降、『シンデレラ・シェフ』という作品が話題になるなど、中国アニメの実力が世界で注目されてきている」と話す。

 数土氏も「日本では大ヒットしても100億円がギリギリという状況だが、『西遊記』の興行収入は192億円、それくらい稼げるとなると、投下できる予算も変わってくる。特にCGアニメの場合、同じ技術でも、どれくらいお金と人手がかけられるかが勝負になってくる。CGアニメに関しては、すでに日本の方が弱い立場にあるのではないかという気がする」と分析。「中国でアニメを作っている若い世代には日本のアニメをリスペクトしているし、豊かさの中で育ったので礼儀も正しい。話しているととても気持ちがよく、応援してあげようという気持ちになる。ひょっとするとアメリカやヨーロッパの人とビジネスをするよりも、中国の人とビジネスをした方が、気持ちよくビジネスができるかもしれない」とした。

■日本のアニメが勝負できる部分とは?


 さらに向は「特にNetflixはオリジナル作品の魅力が半端ない。オタク1000人くらいで会議しているんじゃないかと思うくらいチョイスする作品も良い。例えば『DEVILMAN crybaby』は、とてもじゃないが再現できないのではないかと言われていたものの映像化に成功しているし、4月に始まった『ULTRAMAN』の戦闘シーンの滑らかさは新時代を感じさせる」と話す。数土氏も「特にNetflixは日本のアニメ業界にも相当な影響を与えているし、自分たちだけのアニメを作りたいということで、かなりの予算をかけている。制作会社としても、今までできなかったハイクオリティなものができるようになっている」と明かした。

 そうした状況で気になるのは、日本のアニメの制作現場のこれからだ。2017年ごろまでは、国民的アニメ『サザエさん』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』がいずれも日本企業・資本だけで作った純国産アニメではなかった。また、前出のような労働環境の問題も根深い。

 美大出身のマルチタレントのはましゃかは「日本のアニメ業界にブラックなイメージが付いてしまっている一方、"原作者である漫画家はお金持ち"みたいなイメージがあり、苦しいアニメーターになろうという人は少なく、漫画を描いてネットにアップして、書籍を出す方向に進む、というような人が多かった。中国や韓国からの留学生たちも、ガンガン漫画を描いて発信していた。むしろ中国のアニメをいい賃金で制作できるのなら、という人は多いと思うし、私もやってみたいと思う」と話す。

 数土氏は「働き方改革の中、アニメの現場は目をつけられているので、状況は次第に良くなってきていると思う。一方、労働環境などの問題は法規制でやって欲しいが、僕はクールジャパン戦略にはあまり賛成ではない。"お金を出す"とか"国が売ってあげる"というのは違うと思う。中国がこれだけの支援を行っている中、未だに日本に追い付けていない。そもそもクリエイティブ産業というのは政府とは離れたところで育っていくものだという気がするし、政府が支援することが正しいのかと思う。そうはいっても、やはり日本の強みは残っている。CGなど、お金の部分ではない、別の部分で勝負することで生き残れるのではないかと思っている。一つは戦後から積み上げてきた原作漫画のライブラリーの多さ。これは圧倒的に日本が強い。もう一つは表現の自由だ。やはりクリエイティブというのは自由なところで伸びていくので、中国ではマニア向けみたいなものは育ちにくいし、輸出もしにくい。やはり全世界を相手にしようとした時に、中国よりも日本のアニメの方が面白いものが作れるのではないか」と話していた。

 視聴者からは、「日本の作品のように感情の機微を描けている作品は他の国からは出てきていない」「産業としては逆転される可能性があるけれど、表現や言葉の豊富さで負けることはないと思う。それはアニメの話とは違う部分が関係していると思う」といったコメントも寄せられていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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