- 2019年06月03日 12:49
トランプが来日中も終始「心ここにあらず」の状態だった理由 米主要メディアは「トランプ訪日」をどう見たか - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
2/2ロサンゼルス・タイムズ
「トランプ大統領は27日、安倍首相との共同記者会見で、オバマ前大統領が合意したイラン核合意について、これを支持しているバイデン次期大統領候補を批判した。大統領は前日にも、北朝鮮がバイデンを『IQの低いバカ者』とこきおろしたことに同調し、『金正恩労働党委員長はおそらく自らの記録に基づいてそう言っているのだろう。この点で私も同意する』とツイッターに書き込んだが、これは政治的ライバルについて敵対的外国政府の主張にくみしないという外交慣例を破るものだ。しかも、日本の迎賓館での安倍首相との共同記者会見の場でもこうした見解を示したことは、政治的論議の対象になるものであり、本来、緊密な日米関係をたたえるべき親善訪問に影を落とすことになった」
「北朝鮮が先に短距離ミサイル発射実験を行ったことについても、ボルトン大統領国家安全保障担当補佐官と袂を分かち、『米国民はこれが国連制裁決議違反だと考えているようだが、自分の考えは違う。北朝鮮は核実験も長距離弾道ミサイル発射もしていない』と異なる発言をした。さらに『問題になるとすれば、北のICBM発射実験だ』とも述べたが、これは米国と同盟国である日韓両国とのデカップリング(引き離し)を志向するものだ」
「これに対し、会見に同席した安倍首相は、金正恩委員長は国連決議に違反したとの立場を繰り返し、ミサイル実験については、日本にとって深刻な脅威であり、きわめて遺憾だと述べる一方、日本人拉致被害者問題解決のため、金委員長と直接会談したいとの希望を表明した」
「もう一点、日本側との間で緊張材料となったのが、大統領が日米貿易協議問題で『少なくとも日本の議会選挙が予定される8月までは、新たな合意は見合わせる』と述べたことだ。また、『日本や同盟諸国に課している関税をいつまでに撤去するのか』との質問に対しては、なんら具体的なコミットメントはしなかった」
「それでも安倍首相は、『日米両国は緊密な協力関係を維持しており、トランプ大統領の外交努力に敬意を表したい。大統領には相互不信の殻をこじ開けてもらい、この新しいアプローチを歓迎したい』とも語った」(5月27日、ノア・ビアマン記者)
ワシントン・ポスト
「トランプ大統領が東京入りした翌日26日の日曜日は、安倍首相は午前中はゴルフ場でアメリカ産ビーフのチーズバーガーでもてなし、プレー後は国技館の大相撲観戦に案内、夜は伝統的な炉端焼きレストランで和牛焼肉ディナーを賞味してもらうなど念入りな歓待につとめた。しかし、大統領は同じ日にツイッターで部下のボルトン大統領補佐官を批判し、残忍な北朝鮮独裁者の立場を支持し、異国の地でライバルの民主党政治家を攻撃するなど、歓迎ムードを減殺させる結果となった。
さらに翌27日には、安倍首相との共同記者会見の場で、同補佐官や同盟国の日本そしてバイデン前副大統領の見解を無視して金正恩委員長を擁護するなど、前日に続いて外交上の混乱状態を引き起こした。一方の安倍首相は、北朝鮮のミサイル実験を『極めて遺憾』としたものの、大統領との親密さを保ちたいがゆえに、『トランプ大統領は北朝鮮との不信の殻をこじ開けた』と評価するにとどめた」
「ある意味で今回の訪日では、気乗りしないツーリストと栄誉に浸りたい表彰者としてのトランプをさらけ出したともいえる。たとえば、両国国技館では自分は主役ではなく、たんなる見物者にすぎないことがわかり、相撲観戦中、とくにしゅんとして無表情のままだった。スリッパをはいて土俵に上がり、高さ4フィート、重さ60ポンドの銀製大統領杯を贈呈したときも、表彰状を棒読みするだけだった」
「つまるところ、トランプはいつも専制君主のようにもてなしてもらい、称賛のスポットライトを浴びることに大喜びする大統領であり、招いた日本側も彼の気まぐれとお好みどおりに旅程をアレンジすることによって、貿易から安全保障までなんとか支持を得ようと努めた。
大統領は日本に向かう前、安倍首相から『スーパーボールより何百倍もでかいイベントに招待するから』と口説かれた結果、1カ月の間に2度も日本に行くことになったと報道陣に語っていたが、国賓として待遇されたことには単純に胸躍らせていた。ただ、そもそも何がそんなにおめでたいのか、本人もよくわかっていないようだったが……二人の間で政策めぐりいくつか食い違いがあったものの、日本側の観点からすれば、訪日は概して成功だった」(5月28日、アシュリー・パーカー記者)
ニューヨーク・タイムズ
「トランプ大統領は外国のリーダーとして最初に新天皇に会うために7000マイルを旅して日本にやってきた。世界舞台で最も近い関係にある安倍首相は、『揺るぎなききずなを強固なものとするため』ゴルフに相撲観戦、チーズバーガー・ランチそして炉端焼きディナーで精いっぱいもてなした。だが、大統領にとっては、公式行事から解放され一人になるたびにツイッターでつぶやき続けたことに示されるように、東京滞在は初めから終わりまで、国外での外交より国内政治にフォーカスしたものだった」
「とくにバイデン氏から野党民主党政治家まで含めて気になる人物を批判し続けたが、大統領にとっての“揺るぎなききずな”とはツイッター・メガホンとの関係を意味していた。というのは、ホスト国側がアジアの安全保障と貿易問題に協議の焦点を振り向けようとしたにもかかわらず、本人はワシントンの政敵たちと戦い続けたからだ。『大統領たるものは外国に出た時は自分の支持者たちだけでなく全国民を代表して発言するものだ』と論客のウィリアム・クリストル氏も語ったが、彼だけはそうではなかった」
「大統領が外遊してホスト国のリーダーを困惑させたのは、今回が初めてではない。昨年訪英の際も、新聞インタビューで、メイ首相のEU離脱問題処理を『英国の有権者を裏切るやり方だ』と批判する一方、メイ首相の政敵であるボリス・ジョンソンのことを『偉大な首相になれる人物』と持ち上げた。後で『あれはフェイクニュースだ』と自分の発言を撤回しようとしたが、この間、メイ首相は意に介せず堂々たる振る舞いだった」
「今回、ホスト役だった安倍首相に対する最悪の侮辱は、ツイートによるものだった。トランプ氏は、北朝鮮が先に行った短距離ミサイル発射実験について、首相そして大統領の安全保障担当補佐官までが国連決議違反だと主張、懸念を表明したにもかかわらず、実験の重大性を軽視した」(5月28日、アニー・カーニ記者)
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