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オフショア・バランシング論の弱点:その2

今日の横浜北部は、全体的に雲が多かったですが雨はまだ降っておりません。

さて、オフショア・バランシングの二つ目の弱点について。

今日説明する弱点は、OBによる一時的な撤退によって、

「同盟国たちの軍事面での自助をうながすこと」

ということですが、これは一見すると同盟国側にとっては喜ばしいことと言えそうです。

たとえばこれを日本に当てはめてみますと、

「アメリカの撤退が決まりそうになると、自分の身の危険を感じた日本が軍備増強を始める

となります。

これは日本のタカ派と呼ばれる人々にとっては、第二次世界大戦以降の憲法9条の縛りを越えて本格的な再軍備を行える絶好のチャンスの到来となり、あわせて日本の誇りも取り戻せるかもしれない、となります。

ところが軍を撤退させる本人であるアメリカの立場から見てみると、これは極めて危険な状況とも言えます。

なぜなら、安全保障体制の制約をアメリカが撤退で外すことによって、恐怖に駆られた日本が過激になって「核武装しよう!」、などと言い出しかねない危険があるからです。

実際のところ、最近のサウジアラビアが、イランの核武装の危険をダシにして、

「テヘランが核武装をするなら、われわれも核武装する」

言いまくっているのは、これと似たような例です。

もちろんこれはイランとサウジの中東における覇権争いの結果であると言えますが、アメリカが中東への関与を減らすことや、宿敵イランとアメリカが融和することに対してサウジが感じている不安のあらわれ、という見方もできるわけです。

これと似たような動きは、たとえばロシアとの最前線に位置しているポーランドにもありまして、近年における欧州各国の中であトップレベルのスピードで軍の近代化を進めております。

いずれもこれは、

「遠くない将来に、たった一人で生きて行かなければならないかも!」

という、戦前の日本がABCD包囲網にはまり込んで感じたの同じ恐怖感である、と考えれば日本人には理解しやすいのかもしれません。

そして「軍事面での自助」が行き過ぎると、たとえ核武装に行かなくても、過剰に攻撃的なドクトリンや武装化に行き着く場合があります。

やや事情は違いますが、その典型が、縦深性のない国土で周囲を敵に囲まれているイスラエルですね。

要するにアメリカがオフショア・バランシングを採用したり、または採用しそうだという状況になってくると、その庇護を受けている同盟国たちは、

このままではアメリカに見捨てられるかも

という恐怖感を強く感じるようになり、

自分たちの身を本気で守るなら、先に相手に攻め込むしかない

という先制攻撃ドクトリンのような、ムダなやる気を煽ってしまうことにもなりかねないわけです。

そうなると、いわゆる「安全保障のジレンマ」が発動して、地域の国々が互いに軍拡競争に明け暮れることになり、地域のバランス・オブ・パワーが不安定になるわけですな。

明日もこの続きの話をします。


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