記事

太田光が自ら語った「ネットでなくてテレビだからこそ伝えられること」~川崎20人死傷事件について~

1/2
[画像をブログで見る]

俗っぽくて、ゲスな番組『サンジャポ』

 のっけからこう書いたのは、悪口や非難のつもりではない。むしろ逆だ。そのことは最後までお読みいただければおそらくおわかりいただけると思う。

 TBSが日曜日の午前中に放送している『サンデージャポン』。

 ”サンジャポ”の愛称で親しまれているトークバラティー番組である。

 司会は爆笑問題の二人が務め、笑いや俗っぽい好奇心で様々な話題について切り込んでいく。芸能ネタもあればニュースネタもあって、ゲストとして脚線美や巨乳の女性タレントもスタジオに集め、時折、カメラがその脚線や胸元を舐めるように撮影するなど、「ゲスい」ところ満載の番組である。

 だが、この番組には古くからテレビ人が持ってきた「ゲリラ的で型破りなところ」があって侮れない。

 かつて日本テレビ系列で平日深夜に放送されていた『11PM』(イレブン・ピーエム)。硬派もエロもごっちゃまぜという、1965年から1990年まで放送された往年の番組と同じような匂いがある。『11PM』が女性のヌードや性風俗などを売りにする一方で、若い頃の筑紫哲也やみのもんたらが出演して笑いの中にある「ジャーナリズム」を追求していたのと同じような「ゲリラ性」を感じるのだ。

 コンプライアンス重視で何かと息苦しくなっている感じがどの局も強まっている現在のテレビ番組の中で、爆笑問題という健全なバランス感覚をもった司会者を得て毎週のびのびと放送している(少なくとも、筆者にはそのように見える)。

 6月2日は、番組ホームページに以下のように書いてあったので、日頃、変革期を迎えたテレビの行方を注視しながら研究している人間として注目して視聴した。

▽放送法が改正され、民放各局が懸念する中、NHKはネット同時配信の動き…変わりゆくメディアの環境。今後のテレビのあり方について太田光VSメディアアーティスト・落合陽一が生激論!

出典:TBS『サンデージャポン』番組ホームページ

 ところが、この「今後のテレビのあり方」コーナーに行く前の「川崎・20人殺傷事件」のコーナーが充実していたので筆者の目は釘付けになってしまった。ニュースの取材VTRをまとめた映像の後で、テレビプロデューサーのデーブ・スペクターがロシアの開発による防犯監視システムを紹介。「怒り」や「恐怖」等の感情を数値化して表情の映像などで感知する仕組みだという。

[画像をブログで見る]

 メディア・アーティストの落合陽一も、このシステムそのものは今回の事件で有効だったかどうかは微妙だとしつつ、今後はこうしたシステムがいろいろな場面で使われる社会になっていくだろうという見通しを示した。

 さらに背景にある「長期化する引きこもり」に伴う社会的な孤立の問題などを『サンジャポ』では、主に50代の引きこもりの人たちが80代の高齢者の家にパラサイトする「8050問題」について解説しながらきちんと伝えていた。

[画像をブログで見る]

 こうした社会的な問題は、感情論に振り回されることなく、専門的な知見に基づいて視聴者に対して問題の「背景」や「構造」をできるだけ知らせるのがテレビ番組の使命である。

 この事件については現在、今回の事件が社会に絶望して自殺願望のある人間が社会を巻き添えにして死んでいった”拡大自殺”だという解説が行われていて「死ぬなら一人で死ぬべき」という主張をワイドショーのコメンテーターやキャスターらがテレビでしたことで、テレビでのこうした発言が適切なのかどうかをめぐってネットなどで反論も起きるなどホットな議論になっている。

 通常、こうした事件についてテレビの生放送、特に民放の生番組で放送するときは、さまざまなゲストにいろいろ言わせて終わり、というケースがほとんどなのだが、この日の『サンジャポ』ではいつになく真剣なトークが展開された。議論の多彩さや情報量の多さ。テレビという報道機関が「生放送」で伝える熱量などで、筆者が見たどんなテレビの報道番組や情報番組などという名前がついたもの以上に「ジャーナル」(=報道的)だった。

 この問題に関しては、ネットなどでの議論を紹介したのに加えて、レギュラーゲストのテリー伊藤が説得力がある発言を行なった。

テリー伊藤の言葉はいつになく真剣なものだった。

「今回の(『死ぬなら一人で・・・』という)意見って、”排除の論理”ですよ」

「自分に都合悪くなるとカットしていくという。たとえば高齢者のドライバーが事故を起こす。『だったら高齢者に免許を渡すな』というのと同じようで、何か自分の生活環境の中で、絶対これは・・・すごく・・・・」

 そう続けたテリー伊藤は考えた末、以下の言葉でまとめた。

「日本人って否定から入っていく」

(テリー伊藤)

「そうじゃなくて、こういう事件のときに『どうしたら世の中、よくなるのか』という。そっち側の考え方をしていなかないと全部がマイナスマイナスというのは違うと思いますよ」

 これに対して、落合陽一が以下のように応じた。

「一人で死ぬか、みんなを巻き添えか、という意見を対立させるのがおかしいんですね」

(落合陽一)

「これとこれで争っているのは本当におかしくて、まずはこういう人をどうやったら孤独から救うことを対比しなきゃいけないのに、ここで論争しているのは本当にナンセンス」

[画像をブログで見る]

 テリー伊藤や落合陽一が発言している間、司会の太田光は滅多に見せないような真剣な表情で考え込んでいるのがカメラに映し出された。

何かを思い起こそうとしているような表情である。「テレビの生放送」ならではの姿である。視聴者も出演者も同じ議論を聞きながら、脳裏に自分の考えを浮かべる時間を共有していた。

 これこそ、今なお、テレビ(生放送という意味では表情も見えないがラジオでも可能なので、「放送メディア」)でこそできる芸当だし、だからこそ、生放送での思わぬ展開に太田も真剣に考えこんでいたのだろうと思う。

[画像をブログで見る]

 この後、相方の田中裕二が「太田さんはどうですか?」と太田に意見を求めた。

 そこから、およそ2分40秒の間、太田は自分が孤独に苛まれていた時期の経験を赤裸々に告白して、「犯人」あるいは「犯人になりうる人」または自殺を考えている人たちへの言葉を紡いでいく。

あわせて読みたい

「サンデージャポン」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    中国に反論せず 茂木外相の失態

    WEDGE Infinity

  2. 2

    朝日新聞170億円赤字 社長退任へ

    BLOGOS編集部

  3. 3

    いる? 宮崎謙介氏の報道に疑問も

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    大塚久美子氏が辞任 戦略に矛盾

    東京商工リサーチ(TSR)

  5. 5

    よしのり氏が秋篠宮さまを擁護

    小林よしのり

  6. 6

    コロナ自殺を増さぬよう経済回せ

    永江一石

  7. 7

    竹中平蔵氏は教え子が引退勧めよ

    田中俊英

  8. 8

    揺れる電通 社訓・鬼十則刷新か

    文春オンライン

  9. 9

    追えないだけ?電車内の集団感染

    諌山裕

  10. 10

    竹中氏もMMT認めざるを得ないか

    自由人

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。