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日本を滅ぼす超高齢社会(4)―分けて考えるべきこと

 前回のコラム(3)でも書いたように、事実婚や婚外子の慣習と文化が非常に薄い日本では、結婚率の低下は少子化の進行に直結している。つまり、結婚しなければ、子どもが産まれないということである。

 もちろん、これは日本に限らず、東アジアの共通現象でもあるように思える。韓国や台湾、中国でも、事実婚や婚外子に対する世間の目が厳しく、経済発展および近代化の急進展による結婚率の低下が子どもの数の減少につながっている。

 そういう意味で、日本を含め、事実婚や婚外子があまり許容されない国々では、結婚は子供産まれの前提条件だといえる。一見常識的なことなのだが、実は少子化対策において極めて重要なポイントとなる。

 こうして結婚と出産は切っても切れない関係にあるのだが、決して同じことではない。

 かつて人々は結婚と出産を分けて考えていた。一定の年齢になると、結婚する。結婚してから、子どもを産む、というごく自然で、人間の本能に近い形で営みを続けていた。

 1950年代までの日本もそういえるし、1980年代までの中国、特に農村部もそうだった。毛沢東時代は筆者の言葉で言えばまさに「産みっぱなし」の状況だった。当時農村部において子ども5、6人の家庭はごく一般的で、子ども10人以上をもつ夫婦も少なくなかった。

 筆者の母親は生涯10回も妊娠し、子どもを8人産み、長男と長女を生後間もなく失くした。最後2回の妊娠は、もう養うことが出来ないという理由で、人工中絶を余儀なくされた。

 しかし、その後、特に今は状況が大きく変わった。なかで注目すべき変化のひとつは、子どもの養育や教育を結婚の重要な前提として考えられるようになったことなのである。つまり、子どもの養育や教育は結婚する前という比較的早い段階においてすでに考え始められ、かつ場合によって結婚するかしないかを決定するほど重要なこととなった。

 現代社会では子育てや子どもの教育に相当多額のお金がかかるようになったからだ。

 それにしても、結婚することと子どもを産むことは異なるもので両者を分けて考えるべきだと筆者は思う。また、前回のコラムで述べたように、所得や経済力が結婚するかどうかを決定づける要素ではない。なぜなら、低所得の未婚者もいれば、普通の収入を得ているような未婚者や、独身の金持ちも大勢いるからだ。もし「所得が低いから結婚ができない」というのが普遍的な法則だというなら、どうして多くの中所得以上の人や金持ちが未婚なのか、まったく解釈できない。

 結婚という営みを決定づける要因は学歴でもなければ、経済力でもなく、当事者の意思である。つまり、するかしないか、という主観的なものだ。

 筆者は学生同士(大学院生)の結婚だった。子ども3人に恵まれているが、1番目と2番目は大学教員の定職に就く前に生まれた。

 留学生時代の結婚と子育てだから、苦労は想像に難くない。幸いなことに、日本の社会制度は非常に優しい部分をもっている。一つは、公営住宅の入居である。結婚すれば、低所得者は優先的に公営住宅に入居できる。家賃は所得に応じて計算されるから、2DKで月8000円だった(記憶が間違いなければ)。

 もう一つは保育所に子どもを預けることである。親は学生である場合、就労している人と同様、子どもを保育所に預けることができる。保育料も所得比例で、当時払っていた金額は最低ランクの月数千円程度だった。

 近年、子どもを保育所に預けたくても空きがないという待機児童問題はよく報道されている。気を付けなければいけないのは、保育所不足はあくまでも東京や名古屋など大都会で生じていることであって、全国的な問題ではない。大都会以外の地域ではこんな問題はほとんど存在せず、多くの地方ではむしろ入所する子どもが不足している。

 公営住宅や保育所といった社会制度があるからこそ、筆者のような低所得者も普通に子どもを産み育てることができたといえる。

 ちなみに、筆者の子どもは3人とも日本で妊娠、出産、育っている。その間、双方の両親から力を一切借りたことがなく、すべて二人三脚でさまざまな苦境を乗り越えてきた。

 現在、長女は大学2年生。東京のある大学に入っているため、授業料はもちろんだが、住居の家賃や毎月の生活費など、経済的負担はかなり重い。2番目と3番目も教育費がかかる年齢になった。

 どうして子どもを3人も産んだのか、なぜこんな苦労をしなければならないのか。正直に言えば、後悔する時もある。しかし大抵、人生は後戻りができないから、と半分諦めるのだ。

 結婚した後、将来の子どもの教育等に対しても不安は確かにあったが、結婚前にはそんなことを一度も考えたことがなかった。一文無し状態での結婚は今の若い世代にとってやはり理解できないことだろう。

 あえて言えば、いま多くの人は人間の本能に従うよりも、すべてを合理的に計算した上で慎重に行動することを好む。計算対象の中には、生活費や教育費なども当然のことながら最重要費目として含まれる。そしてもし先の見通しが立たないという計算結果が出たら、どうしても結婚を躊躇してしまう。

 もちろん、金銭的な計算といっても、個々人の性格やライフスタイルなどによって千差万別である。同じお金でも、毎日の生活を中心に使う人もいれば、生活費を切り詰めて海外旅行や高級車に費やしたい人もいる。また、低所得者のなかでも、家庭を築き上げ、仕事と子育てに励んでいる人も少なくはない。

 所得が低ければ家庭生活は厳しくなったり、子どもの養育や教育においてより多くの難題が生じたりすることはいうまでもない。それにしても、現有の社会制度を最大限に利用し、家族の力を合わせれば、なんとかなるのではないかと筆者はいつも思っている。

 理性は素晴らしいものである。しかし、理性は時には行動を妨げる大敵となる。これをもって今回の締めくくりとしたい。

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